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地球環境特集
〔10面〕 再生エネ先進国・デンマークのいまと日本への期待
【執筆】 デンマーク大使館 経済外交エネルギー担当 公使参事官 ヤコブ・ラスムセン
2018年からデンマーク外務省に勤務。エネルギー分野などでの国際・商業経験を持ち、10年以上アジア在住。24年より在日デンマーク大使館公使参事官に就任。デンマーク・オーフス大学国際ビジネス修士。
北欧諸国は自然保護への意識が高く、国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成における先進国とされている。童話作家アンデルセンの故郷などで知られるデンマークは、北欧の最南端に位置する小さな国で、高い生活水準と豊かな自然環境を誇る。電力生産における風力発電の比率は世界トップクラスだ。デンマーク大使館のヤコブ・ラスムセン公使参事官に、デンマークにおけるエネルギー政策や日本の産業界への期待を寄せてもらった。
EU議長国としての成果
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風力発電をはじめ、世界の環境・エネルギー分野を先導している(出典:stateofgreen.com)
「今日、グリーンの推進にはプラグマティック(実利的)な対応が不可欠である」—。これはデンマークの気候・エネルギー・公益事業の担当大臣であるラース・オーガード氏が2025年12月に1年間を振り返って述べた感想だ。発言の背景には、デンマークが25年6月から12月にかけて、欧州連合(EU)の議長国を務め、環境・エネルギーの分野で挙げた三つの成果がある。
一つ目はEUの温室効果ガス(GHG)排出量を、40年までに90%削減するという目標に対する合意をまとめたこと。二つ目はEUのロシア産天然ガスの輸入を27年中にゼロにする計画が欧州議会で承認されたこと。そして三つ目は、ウォプケ・フークストラ委員とともにEUを代表し、25年11月にブラジルで開催された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第30回締約国会議(COP30)で「グローバル・ムチラオ(協働)決定」の名で、気候変動に対する国際協力を維持できたことである。
現在のデンマークの環境政策を理解するには、EUおよび世界的な展開に触れなければならない。なぜなら、デンマークのGHG排出量は世界全体の排出量のわずか0・1%に過ぎないからである。デンマーク政府が25年12月に、デンマークにおける35年の新たなGHG排出量削減目標を、82%の削減と発表したように、デンマークが気候変動対策に関して先頭に立つ姿勢に変わりはない。
しかし、デンマークの成功事例を参考にするスタイルのみでは、平均気温上昇を1・5度C以下とするという目標の達成は困難だという見方が、近年、デンマーク社会では広まっている。現在のデンマークは、安全保障、国際競争力、国民の理解を反映した環境政策を掲げ、「グリーンプラグマティズム」の段階にあると言える。
風力発電、グリーンガスの導入拡大に期待
では、26年にデンマークで安全保障、国際競争力、国民の理解に応えるグリーンテクノロジーは何かというと、まず挙げられるのは風力発電だ。デンマークの24年の電力消費量の53・5%は風力で賄われたが、政府はさらなる拡大を進めている。目玉の政策は合計2・8ギガワットの洋上風力に対して上限額552億デンマーククローネ(2月20日時点で約1兆3477億円換算)の補助金を差額決済契約(CfD)として適用することであり、これにより近年逆風の中にあった洋上風力業界への不安を払拭する狙いがある。
次に期待されるエネルギー源として上げられているのは「グリーンガス」で、主にバイオガス、再生可能エネルギー由来の水素と、その派生品などを指す。デンマークの「グリーンガス戦略」は21年に公開され、30年までにデンマークのすべてのガスをグリーンガスにする目標が掲げられた。24年の状況としては、ガス供給網に6・49億ノルマル立方メートルのバイオガスが供給されており、これは供給網の38%を占める。政府は26年中にグリーンガスの具体的な支援策や補助金を発表する予定だ。
日本への期待
日本の産業界はすでに洋上風力やバイオガスといった、デンマークのエネルギー戦略と同じ方向に歩みだしている。しかし、これらの技術が安全保障と国際競争力に貢献することが明白であるにもかかわらず、高いポテンシャルを持つと目される日本において、その導入は潜在力に見合う水準には達していない。
日本の産業界はこれまで、急激に変化する世の中にプラグマティックで柔軟に対応してきた。風力発電サプライチェーン(供給網)を日本国内に構築するという目標に対し、デンマークの風力発電機メーカーが協力するといった取り組みに代表されるように、日本の産業界がデンマークと手を携えて、グリーンプラグマティズムを推進していくことが、今年こそ期待される。
