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地球環境特集
〔2面〕 南極地域観測隊70周年 国立極地研究所 所長 野木 義史 氏に聞く
【プロフィール】 国立極地研究所 所長 野木 義史(のぎ・よしふみ)
1992年神戸大院博士号(理学)取得。気象庁気象研究所研究官、極地研准教授・教授などを経て、23年10月から現職。計4回日本南極地域観測隊として参加。専門は固体地球物理学。
「地球変動の謎」 解析のカギ握る
2026年11月は第1次南極地域観測隊が南極に向けて出発してから70年、27年1月は昭和基地開設から70年の節目を迎える。人工的な影響が少なく、古環境の情報も得られる南極での観測データは、環境変動の解析において重要な役割を果たす。南極における観測・研究について、国立極地研究所の野木義史所長に聞いた。
第10期6カ年計画進行中 将来の地球環境探る
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越冬隊と夏隊の2隊からなる南極地域観測隊により、1957年から調査・研究が続けられてきた。現在、南極では第67次隊が活動中(国立極地研究所提供)
—南極地域観測隊について教えてください。
「約1年間にわたって観測を続ける越冬隊と、越冬しない夏隊がある。隊員は仕事内容によって、観測や調査・研究を行う観測部門と、基地の整備・建築、調理、医療、通信などに従事する設営部門に分かれる。観測部門は研究内容や方法によって越冬するかしないかが変わる。越冬隊は継続して長期的に観測を行い、夏隊は短期集中でできるものや、機器を設置したら翌年に回収するまでは放置する方法のプロジェクトなどに取り組んでいる」
—どのような研究をしていますか。
「南極観測は6カ年計画で行っており、今は第10期(22—27年度、観測隊の行動区分では28年度まで)の4年度目だ。今期のメインテーマは『過去と現在の南極から探る将来の地球環境システム』。その下に三つのサブテーマを設け、観測している。南極は地球の変動を知るのに最適で、観測を継続することによって、温暖化や二酸化炭素(CO2)濃度の変化などを探れる」
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アイスコア採取を軸とした研究は、今期の取り組みの目玉の一つだ(国立極地研究所提供)
—サブテーマの一つは「最古級のアイスコア採取を軸とした古環境研究観測から探る南極氷床と全球環境の変動」です。
「氷の柱状試料『アイスコア』には、大昔の空気や、氷ができた時の温度記録が閉じ込められている。アイスコアを掘削し、南極の氷がどのように拡大・縮小してきたかを調べることは、地球全体がどういった環境変動をしてきたかを理解することにつながる。例えば、南極の氷床がすべて解けると海面が60メートル以上も上昇すると言われているが、氷床変動についてはまだ分かっていない部分が多い。地球規模の環境変動の将来予測の精度を上げるには、南極のデータを充実させて、どういったポイントで研究していくかを決めることが重要だ」
オゾンホールの発見 大きな功績
—日本がこれまでの南極観測で残した大きな功績は何ですか。
「日本の観測隊が、1982年にオゾンホールを発見した。南極上空のオゾン層が極端に減っていることに気付き、これをきっかけにオゾン層を壊すフロンガスの使用が禁止された。また、69年にやまと山脈で隕石9個を偶然発見し、その後の世界的な南極隕石探査へとつながった」
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アデリーペンギンの群れ。生態系については未知な部分も多いが、データロガーにより徐々に明らかになりつつある(国立極地研究所提供)
—生物多様性の保全が叫ばれていますが、南極の生態系に変化はありますか。
「生態系に関しては未知な部分が非常に多い。コウテイペンギンは温暖化によって繁殖場所である海氷が減り、個体数が減少しつつある。逆にアデリーペンギンは、氷が溶けたことで餌が取りやすくなり、増えているようだ。ペンギンの採食行動などについては、データロガー(記録装置)によって徐々に明らかになってきている」
企業連携/厳しい環境生かした開発に期待
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冬にはマイナス30度Cを下回る日もある昭和基地で、電気が止まれば命に関わる。発電機など機械設備の維持・整備は欠かせない(国立極地研究所提供)
—「昭和基地利用プログラム」など、企業との連携事業も行っています。
「乾燥や極寒、強風、ブリザードなど、厳しい環境でも耐えられる機器の開発などに利用してもらっている。例えば、ブリザードに耐えられるくらい強く、短工期で誰でも建てられるプレハブができれば、南極でも効率よく建物を建てられるし、宇宙空間でも応用が利くのではないか。また南極ではなるべく無人化・省人化し、効率のよい観測を目指しているので、雪に埋まったりクレバスに落ちたりしても、そこから抜け出せるロボットなどの開発にも期待する」
