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京都産業界
京都企業トップに聞く②
三洋化成社長 樋口 章憲 氏/中国勢増産響く コスト改革
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三洋化成社長 樋口 章憲 氏
—事業環境は。
「石油化学業界を取り巻く環境は厳しい。中国メーカーによる基礎原料や汎用化学品の供給過剰に加え、不動産不況で中国内需が戻らず、安価な化学品がアジアへと流出している。当社も汎用品である高吸水性樹脂(SAP)は撤退を決め、すでに生産を止めた。現在、関連のプラント解体などを進めているところだ。同じく中国勢の攻勢で苦しいウレタン原料『ポリプロピレングリコール(PPG)』や、酸化エチレン(EO)系界面活性剤を、もう一度、利益を生める事業へと変えていく」
—具体的には。
「これまで主に国内原料を使用していたが、海外原料も積極的に使っていく。そのために4月、調達部門に材料評価専属の人員を配置した。PPGは川崎市の工場で生産しているが、衣浦工場(愛知県半田市)や名古屋工場(同東海市)への移管を考えている。衣浦工場にはPPG原料である酸化プロピレン(PO)の大きな貯蔵タンクがあり、海外からの大量輸入でコストを下げられる。汎用品は現状ほとんど利益は出ていないが生産数量が多いため、再編効果が大きいと考えている」
—収益性向上には、技術優位性のある高付加価値品の開発・販売拡大も重要です。
「新たな製品を生み出すため、生産や研究開発などで人員構成を変えなければならない。現在は圧倒的に生産の比率が多い。10年以上かかる取り組みだが、自動化を進め研究開発に振り向けていく。自動化は高齢者や女性が働きやすい環境づくりの面でも重要だ」
TOWA社長 三浦 宗男 氏/HBM向け 樹脂充填技術磨く
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TOWA社長 三浦 宗男 氏
—半導体チップを封止するモールディング装置の事業環境は。
「米トランプ政権の関税政策が設備投資に対する不安を生み、2025年度上期は当社が見込んでいた通り低調だった。顧客によっては本来であれば設備投資を検討する水準まで装置の稼働率が高まっているにもかかわらず、人海戦術で稼働時間を延長し、投資を控えるところもあったようだ。下期についても不透明ではあるが、需要が戻りつつあるため、期待している」
—生成AI(人工知能)で需要が高まる先端DRAM「広帯域メモリー(HBM)」向けの装置が好調です。
「AI以外の半導体も回復基調にはあるが、投資の動きがあるのは主にAI向けだ。HBMは(積層するDRAM間の)狭ギャップ化が進み、樹脂充填の難易度が上がっている。(最新世代の)HBM4の狭ギャップには従来装置では対応できなくなったため、樹脂の充填の仕方などをアップグレードした新装置を開発した。HBM向け装置については現状、他社との競争はない。当社が経営理念に掲げる(顧客ニーズの少し先を見据え、他社が手がけていない)“クォーター・リード”の製品開発を続ける限り追随はないだろう」
—半導体分野偏重のポートフォリオの変革に向けた、他事業の育成状況は。
「(医療用樹脂成形の)メディカルデバイスは顧客数が増え、次の戦略を考えている。工具もクォーター・リードを事業方針とし、他社が取り組んでいない製品に挑戦していく。現在は準備段階だ」
宝ホールディングス社長 木村 睦 氏/日本食材取り扱い拡大
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宝ホールディングス社長 木村 睦 氏
—焼酎や清酒などの「和酒」と和食で相乗効果を生み、海外事業の拡大を目指します。
「日本食材や和酒をレストランに販売しているが、米国はインフレの影響により個人消費が低調だ。北米や欧州で事業拡大する方針は変わらないが、消費が停滞する現在は投資を積極化するフェーズでない。ただ長い目で見れば日本食の潜在的成長力は大きく、海外普及もさらに進む。回り道に見えるが、和食の広がりが結果的に和酒の普及にもつながるため、引き続き他社にない日本食材の取り扱いを増やす」
—タカラバイオは米トランプ政権の政策方針の影響を受け、苦戦しています。
「研究用試薬の40%を米国で販売しており、影響は大きい。さらに試薬生産は中国が多く、関税政策の影響も直撃している。ただ米国に限らず、試薬販売は国の研究開発費(の方針)に左右される部分があるため、(引き続き)独自性のある技術や製品を生んでいくことが重要だ」
—2050年に現状比約2・8倍の売上高1兆円以上を目指す長期ビジョンを策定しました。
「当社が目指す方向や将来像、風土などへの理解が中途半端なまま社員が仕事をするのはもったいないという思いがあった。仕事を通じて自身がどう成長したいかという視点も大切と考え、25年後も現役で活躍する若手に議論してもらい、作成したプランをもとに取締役会のメンバーでさらに議論を重ねて長期ビジョンを策定した。25年後のありたい姿を明確化した羅針盤だ」
日新電機社長 西村 陽 氏/スマート化した職場に
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日新電機社長 西村 陽 氏
—受変電設備関連などの電力・環境システムや半導体製造向け装置、装置部品の受託生産などを手がけています。
「電力・環境システムは再生可能エネルギーへの対応や、データセンターの増加などで好調だ。電力系統用に使う蓄電池システムについては今後も増えていくと予想する。半導体製造に使用するイオン注入装置なども伸びているほか、装置も大型化しており、組み立てる工場のスペースを拡大しながら対応している。ただ、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体向けの需要は想定よりも後ろ倒しになっている。2026年、27年には立ち上がるのではと見ている」
—受変電設備関連の配電盤とGIS(ガス絶縁開閉装置)の工場を本社周辺と群馬県の拠点に新設します。
「既存設備の生産効率向上で対応していたが、長納期化などの課題があった。抜本的な対策をするため、新しい工場を建て、DX(デジタル変革)などでスマート化して働きやすい職場にしたい。受変電設備を構成する製品として、変成器やコンデンサーなどもある。まだ先の話しだが、それらへの投資も順次検討していきたい」
—電力機器製造の技術を活用し、タイやベトナム、ミャンマーで手がける受託部品も好調です。
「高精度加工を強みにしており、半導体関連の部品の受託製造が堅調だ。日本や欧米向けなどのメーカーから受託しており、ここ数年で設備投資も行った。今後は宇宙や小型核融合向けなど、新しい需要も取り込みたい」
京セラ社長 谷本 秀夫 氏/成長への構造改革、着実に実行
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京セラ社長 谷本 秀夫 氏
—事業環境は。
「半導体関連や情報通信といった主要市場の需要環境はAI(人工知能)を除き低調で、本格回復は来期以降を想定している。今期は将来の成長に向けた構造改革を着実に進めていく」
—構造改革の一環で、売上高2000億円規模の事業を売却する方針です。
「同規模の事業見直しは順調に進んでおり、来期以降も継続的に進める。(京セラの特徴の)多角化から一気に転換しないが、セグメントごとに事業ポートフォリオを見直し、高付加価値品へのシフトや成長分野への投資を積極的に進める」
—AI需要拡大への対応遅れで有機基板の営業赤字が続きます。
「生産設備のトラブルを挽回し、期初計画通り2025年10—12月に営業黒字化できる見込み。AI関連の基板大型化でコア材料をセラミックスやガラスにする必要性が高まっていて、一部の顧客とプロジェクトを組み、共同開発を始めた」
—セラミックパッケージは需要が堅調なものの、原材料高騰などの影響を受け、利益面で苦戦しています。
「来期に向けて少し上向く。カメラの高画質化・高感度化でイメージセンサー向けが増え、データセンター間をつなぐ光通信用もAI向けに徐々に増えており、期待できる」
—株式市場では株主の要求が複雑化しています。対話の方針は。
「真摯(しんし)に対話を続けていくことが重要だ。中長期的な企業価値向上を目指し、資本効率の改善に取り組む」
京都銀行頭取 安井 幹也 氏/技術をつなぐ、京都をつなぐ
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京都銀行頭取 安井 幹也 氏
—後継者難や事業承継、人手不足などの課題を抱える事業者支援に力を入れています。
「京都は歴史や伝統、技術を持つ事業者が多いものの、それらの課題による廃業が増えている。技術をつなぐ、京都をつながないと当グループの成長もない。地域金融機関は地域のために存在し、守るのが大きな使命。M&A(合併・買収)仲介業が乱立するが、身近な金融機関が寄り添い、将来を一緒に考え、支援するのが理想だ」
—具体的には。
「1000億円規模のファイナンスで2024年に始めた地域みらい共創事業は地域金融機関の使命として事業者が抱えるさまざまな課題を解決する。地域の雇用、技術などを守るため、コンサルティングや超長期ローンなどで支援している」
—M&A、ベンチャー投資など、多数の事業を切り出し、分社化して強化しています。
「行員がすべてに対応できる時代ではなくなった。お客さまとの窓口は銀行の店舗だが、グループそれぞれのプロ集団と一緒に良い提案を行う。5年、10年先だが、グループ会社の京都総研コンサルティングに銀行からの情報を集約し、案件ごとにグループのより良いサービスを選択、提供する体制にしたい。グループ会社で利益の2割ほど稼げる地銀グループが理想的」
—事業者の海外事業支援にも積極的です。
「インドセミナーが特に人気だ。京都企業の進出に必要な知識、現地事情を学ぶため、現地コンサル会社に行員を手弁当で派遣し、学んでもらっている」
