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京都産業界
京都企業トップに聞く①
島津製作所社長 山本 靖則 氏/将来に向けた土台作り
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島津製作所社長 山本 靖則 氏
—中期経営計画最終年度です。振り返りや課題、次期中計で注力していく点は。
「2023—25年度の中計は、人事制度改定などを通じた人への投資や、北米でのR&D(研究開発)センター設立による開発投資、分析機器の中国新工場設立、営業面の体制変更など将来に向けた土台作りに力を入れた。費用が先行したため、営業利益面で課題が残るが、今後の業績につながればと考えている。米国でR&Dセンターを作ったこともあり、次期中計では、ヘルスケア事業に力を入れていきたい」
—北米のR&Dセンターの稼働状況は。
「装置の設計・開発を顧客と一緒にできる施設で、検査会社や製薬会社と共同研究が始まっている。すでに顧客向けにカスタマイズして開発した質量分析計もあり、好調だ。今後は、すぐに結果が出なくても世の中の役に立つテーマで共同開発ができるように、海外で当社の認知度を高める活動をする。将来的には欧州やアジアにも同様の機能を持つ拠点を開設したいと考えている」
—半導体製造装置向けターボ分子ポンプ(TMP)のビジネス網を活用し、半導体市場向けにも分析計測製品を展開する活動に力を入れています。
「以前から展開しているが、改めて力を入れていく。半導体製造工程では、使用する超純水やガスのモニタリングなどで分析需要がある。TMPのサービスの体制も活用しながら、半導体製造工程向けにも装置の販売を拡大していきたい」
イシダ社長 石田 隆英 氏/成長に向けた種まき
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イシダ社長 石田 隆英 氏
—食品工場などで無人化や省人化の需要が増えています。
「人手不足に伴う機械への代替、海外は人口増加や移民抑制などの影響で、国内外とも総じて好調だ。電子棚札や箱詰め作業などを行うオートケーサーは25年ほど前から仕込んでいた製品で、ようやく花が開いた。前倒しで達成する可能性もあるが、2030年3月期に連結売上高2030億円(25年同期比約14%増)を目標にしており、達成への貢献も期待できる」
—将来成長に向けた「未来創造プロジェクト」をスタートしました。
「10—20年後の成長に向けた新しい種まきを始めた。食品工場向けに展開する産業用機械は、工場無人化を目指して、段取り替えや清掃、検査工程などの人手がかかる工程に向けた製品開発に力を入れる。スーパーなどの流通向けは、電子棚札を使った需要をもっと取り込みたい。(需要などに応じて柔軟に価格変更させる)ダイナミックプライシング向けなど、電子棚札のさまざまな使い方も模索する」
—海外で重視しているエリアは。
「人口が多いインドやアフリカは中長期的な海外戦略では要のエリアだ。ただ、インド国内は価格重視のため、許容できる価格の範囲内でのプレミアムな機械『アフォーダブル・プレミアム機』を今後作らなければならない。現地にはソフトウエアの技術者はいるが、電気やハードウエアの技術者がいないため、早期に雇用してインドの市場にあった機械を一から開発できる体制を整えていきたい」
SCREENホールディングス社長 後藤 正人 氏/先進後工程の売上伸長
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SCREENホールディングス社長 後藤 正人 氏
—洗浄装置をはじめとする半導体製造装置の事業環境は。
「(年初の)米国における新政権誕生以降、顧客が設備投資の時期を見直し、半年ほど見送られたモノもあった。ここにきて、ようやく混沌(こんとん)とした状況も落ち着きだし、今後は顧客の投資計画が具体化していくだろう。半導体の国産化を目的とした中国メーカーの引き合いも以前より落ち着いた。現地の装置メーカーも出てきているが、当社の洗浄装置が主戦場とする先端ロジック分野での優位性は保ったままだ」
—成長領域であるアドバンスドパッケージ(先進後工程)向け装置の動向は。
「コスト面などを考慮し、パッケージングも含めて性能を上げるのが業界の動向。(パネルの素材や大きさといった)業界のデファクトスタンダード(事実上の標準)はまだ決まっていないが、パネルレベルのパッケージングが今後どんどん広がっていく。当社装置の売り上げも徐々に増えており、来期以降もさらに伸びるのではないか」
—半導体分野に偏重したポートフォリオ変革のため、新規事業育成に取り組んでいます。
「(水電解装置向け部材などの)水素エネルギー関連は米新政権誕生以降、スローダウンした。ただ水素は化石燃料を代替するエネルギーの一つとして必要性は認識されており、計画がなくなったわけではなく、先送りになった状況。また(細胞イメージングシステムなどの)ライフサイエンス関連の育成にも取り組んでいるが、時間がかかる分野だ。腰を据え粛々と進める」
NISSHA社長 鈴木 順也 氏/成長市場に絶えず挑戦
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NISSHA社長 鈴木 順也 氏
—2025年の事業環境は。
「製造業全般で需要が強くないと感じている。その典型が自動車。現在も力強くはない」
—自動車分野の成長戦略は。
「内装向け加飾フィルムや成形品を長年手がけてきたが、25年に外装向け事業を本格化した。(フロントグリルがない)電気自動車(EV)は車体にデザインを施すトレンドがある。EV以外でも当社製品をライト部分に用いることで、豊かな表現ができる。内装向けの事業を継続しながら、外装向けの売り上げを上乗せする」
—IT機器向けに偏重する売り上げ構成からのポートフォリオ変革を進めてきました。
「タブレット向けは需要に合わせて生産量を最適化し、固定費を減らすフェーズにある。24年に見込んでいたよりも需要失速が早いと感じ、25年1月、タッチセンサーの二つの工場を一つに集約した。BツーB(企業間)企業で中間資材を手がける当社は顧客の好不調の影響を受けやすく、需要の変動を自社でコントロールできない。市場が縮小すれば、てこ入れや撤退をし、成長市場に挑戦する宿命にある」
—成長市場への挑戦の具体例として、医療機器が挙げられます。
「米国を中心に医療機器の開発・製造受託(CDMO)を手がけており、足元は好調だ。事業加速に向け、米テネシー州の大学と共同ラボを設けた。精密手術器具の操作性を向上する部品や技術の開発に取り組む」
堀場製作所社長 足立 正之 氏/EV・HV装置開発に尽力
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堀場製作所社長 足立 正之 氏
—自動車産業の動きをどう見ていますか。
「これまでの急激な電気自動車(EV)シフトの流れは変わったが、EVの台数は世界的には増えるだろう。ただ、ハイブリッド車(HV)開発向け排ガス計測システムなども好調で、エンジンが急になくなることは考えられない。排ガス関連の装置は、規制対応だけでなく高効率・低排出な内燃機関の開発に貢献できることから長年手がけている。EV開発に向けた装置も展開しているため、全方位で力を入れる方向性は変わらない」
—水素社会に向けた装置の提案にも力を入れています。
「足元では水素関連の投資は落ち着いているが、水素は確実に将来のエネルギーとして役割を果たす。インドでは、水素燃焼エンジン専用の試験ラボが軌道に乗り始めた。インド国内は自動車産業も多く、いろんな会社から見に来てもらっている。燃料電池評価装置などを手がけるドイツ子会社は製造や投資などによるコストが課題だったが、生産の効率化やモジュール化に力を入れており、2026年度での改善は見えている」
—五つの事業セグメントを再編し、24年度から三つの注力分野での社会課題解決に向け、事業展開しています。
「以前からセグメントを超えて仕事をしたら面白いのではないかと準備してきた。顧客にも当社の製品を(点ではなく)面で見てもらえるようになった。営業部隊が『新しいチャンスを自由に取ってこられる』とやる気になっており、効果が出ている」
ニチコン社長 森 克彦 氏/エネマネ事業に注力
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ニチコン社長 森 克彦 氏
—生成AI(人工知能)市場が急拡大しています。
「AIサーバー向けコンデンサーが昨年に引き続き好調で、売上高は年10%以上のペースで成長している。電源用で当社のビジネスチャンスがあるとみて特殊な製品を開発しており、2025年度の売り上げ寄与も想定している。ハイパワーかつ限られたスペースに実装可能な製品で、既存設備で生産できるため、需要を精査しながら増産も検討する」
—コンデンサーは自動車向けも成長が期待できます。
「欧州向けが低調だ。また電気自動車(EV)市場は成長が鈍化し、当社顧客も生産台数や市場投入時期を見直しているのが現状。だが今後の市場拡大は間違いなく、フィルムコンデンサーなどの需要が増えるだろう。堅調なハイブリッド車(HV)含め、車の電動化でコンデンサー搭載数は増加する」
—急速充電器など、エネルギー・環境関連製品を手がけるNECST事業の現状は。
「直近、蓄電システム新製品を市場投入しており、効率的な出荷で着実に売り上げにつなげていく。さらに医療機器や大学などの学術研究用の特殊電源が好調で、将来は核融合向けも期待している」
—EVや太陽光発電、家庭用蓄電池など、分散型エネルギーリソースの普及が進んでいます。
「当社も蓄電池など機器の販売だけでなく、エネルギーマネジメント事業に注力する必要がある。電力会社やアグリゲーターとのアライアンスに向けた協議も進めている」
