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神奈川県特集
次代を拓く人材を応援/神奈川の大学
関東学院大学/社会連携教育で地域と関わり合う
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4月から材料・表面工学研究所の所長を兼務する小山学長 -
関東学院大学は社会連携に力を注ぐ。特に工学分野の研究では前身の専門学校時代から産学官連携を先導し、1962年に世界初となるプラスチックのめっき加工の実用化に成功した。同大の校訓である「人になれ、奉仕せよ」をモットーに、技術を公開するなど、先進的な技術や研究成果を世界に広く波及させてきた。世界レベルの研究をリードする同大の材料・表面工学研究所の所長に小山嚴也学長が4月から兼任し、社会連携を一層けん引していく。
文部科学省が2月に発表した「2024年度大学等における産学連携等実施状況」によると、同大は「特許権実施等件数」で全国8位(私大1位)、「知的財産権等収入」で全国14位(私大4位)にランクインした。長年にわたって産学官連携による共同研究、受託研究、技術移転に積極的に取り組んできた結果が奏功した。特にめっきなどの表面工学の分野で高い評価を得ており、自動車のバンパーなどに活用され、日本車の軽量化や燃費向上に貢献してきた。今回の文科省の調査でも、表面工学分野における研究成果が多数反映されている。
4月1日から材料・表面工学研究所の所長を兼務する小山学長は「大学としてめっきなどの表面工学の分野は財産。大学を挙げて材料・表面工学研究所を積極的にアピールしていきたい」と抱負を語る。企業や行政との橋渡しに力を注ぐことで社会課題を解決し、地域や社会に貢献する構えだ。
小山学長は「横浜ディープテック構想」を打ち出す。社会を変えるデジタル変革(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)などの背景にあるディープテック領域を研究、教育の両面で深化させる方針だ。表面工学、電気・電子、応用化学、先進機械、数理・物理、生命科学、土木・都市防災などの各コースで、先端的なディープテック領域に知見を持つ学生や研究者を育成することで、社会課題を解決する。
小山学長は「理系人材が不足しているのは、日本にとって深刻な問題だ」と危惧する。第5世代通信(5G)やAI(人工知能)を支えるディープテック領域の要素技術を重視し、企業や行政、地域と深く関わり合う社会連携教育に力を注ぐ。その上で「ディープテックのコアの技術としての表面処理にフォーカスしていく」と力を込める。
同大は近くオープンする大規模複合施設「BASEGATE横浜関内」(横浜市中区)内に産学連携拠点「KGUオープンイノベーションスクエア HAMARISE(ハマライズ)」を創設する。同複合施設はJR関内駅前で、横浜スタジアムに直結。延べ床面積約12万8500平方メートル。横浜の都心部に立地し、オフィスや商業、ホテルなどが集積する。同大はHAMARISEを大学と企業との交流の場にしたい考えだ。企業の製品・サービスを展示するとともに、企業の課題と大学の研究成果をつなぐ。同大の研究シーズと企業のニーズをマッチングすることで、社会実装を目指す。
小山学長は「横浜発の世界に通用する技術・製品・サービスを提供していきたい」と力を込める。2034年の創立150年に向けて、創立の地・横浜から、最先端の研究成果を世界に発信していく。
神奈川大学/廃棄物極小化でゼロエミ社会に貢献
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高機能なモノだけでなくサステナブルなモノが重要になると堀教授 -
神奈川大学は研究成果による社会への還元で持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する取り組みを推進している。理学部の堀久男教授らの研究グループは、フッ素樹脂を簡便で環境の負荷がなく、フッ化物イオンまで完全に分解することに成功した。従来の熱分解を大幅に低温化し、地球温暖化への影響を抑制したほか、再資源化(ケミカルリサイクル)を実現。廃棄物の極小化につながるなど、ゼロエミッション社会への貢献が期待されている。
フッ素樹脂をはじめとする有機フッ素化合物(PFAS)は優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性を持つ。今回の研究の対象としたフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)。炭素原子が形成する共有結合の中でも最も強い炭素・フッ素結合のみから形成されている。
FEPは安定であるとともに溶融加工ができる。そのため、化学プラントのバルブ、タンク類のライニング(基材の内面を厚い膜で覆う表面処理のこと)、電線被覆、半導体関連部品など、さまざまな工業製品に使用されている。
だが、これらは熱的、化学的に安定であるため廃棄物の分解処理が難しいことが課題となっていた。焼却は可能であるが、完全分解には約1000度Cの膨大なエネルギーが必要だった。また低分子量のPFAS類が発生するなど、環境への影響が懸念されており、処理方法が社会的課題となっていた。
堀教授は「どこにでもあるような水とアルカリ試薬、耐圧容器を使って、FEPをフッ化物イオンまで完全に分解できるのが特徴だ」と強調する。FEPを水酸化カリウム水溶液とともに密閉容器に入れて360度Cに加熱する。FEP中の炭素・フッ素結合が事実上完全に分解してフッ化物イオンとして水中に回収できることを発見した。その際に、二酸化炭素(CO2)はほとんど発生せず、トリフルオロメタンのような温暖化係数が高い有害ガスも発生しなかった。さらに環境影響が問題となっている低分子量のPFAS類も発生しなかったことが確認された。
今回の研究成果は、経済安全保障の観点からも注目されている。フッ素樹脂の原料はフッ化カルシウムの鉱物である蛍石。原料として使用できる高純度品の産出は、中国と南アフリカ、メキシコの3カ国に偏在している。日本は中国からの輸入に、依存しているのが実情だ。フッ素樹脂の需要の増加により世界的に入手困難な状況が続いている。このため、欧州連合(EU)ではレアメタル(希少金属)と並んで蛍石を重要原材料に指定し、域内生産の増加を図る。今回の研究成果により、廃棄物を分解して、人工的に高純度のフッ化カルシウム「人工蛍石」が得ることが可能になるなど、資源問題の解決にも貢献が期待されている。
堀教授は「今後は高機能のモノだけではなく、サステナブルなモノが重要になってくる」と指摘する。PFASの持続的利用とサステナブル社会の実現の両立に向けて、さらなる研究開発に挑戦する構えだ。


