-
業種・地域から探す
続きの記事
第55回機械工業デザイン賞 IDEA
日本デザイン振興会賞/日本デザイン学会賞
日本デザイン振興会賞
【高松機械工業】 CNC2スピンドル2タレット精密旋盤 XWT—8
本製品はコンピューター数値制御(CNC)旋盤の従来機「XW—130」をフルモデルチェンジした。短時間に顧客要求精度に応える高い生産性やデジタル変革(DX)技術による作業性・操作性の向上、サステナビリティー(持続可能性)に焦点を当てた。ランニングコスト削減や省エネルギーを実現し、環境負荷低減に貢献する。
二つのスピンドルの高い生産性をベースに、DX技術とカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対策を兼ね備えた8インチチャックのタレット精密旋盤。新型の3軸ローダーシステムの搭載により早送り速度を全軸で向上させ、ローディングタイムを従来機より10%短縮した。さらにフロアの空気層を工作機械ベッド内に取り込む冷却方法によって、ベッド全体に空気を流して温度の均一化を図り安定させている。独自の熱変位補正システム(サーモニー2・0)は、過酷な環境下における環境温度の変化に対して安定した寸法管理が可能で、加工不良を低減する。主軸の最高回転数は毎分4000回転、X、Z軸の早送り速度は同24メートルの性能を有する。
制御盤は21・5インチの大型タッチパネルを採用し、上下3分割のマルチ画面で視認性と作業性を改善した。DX技術として操作システム「TAKAMAZ OS」の標準搭載などにより操作の自動化や作業の簡易化を実現した。マシンは低重心構造で無理なく手が届く範囲に操作、段取り箇所を配置した。回生エネルギーの利用や機械冷却装置の空冷化、油圧ポンプのアイドルストップ機能、主軸モーターの省エネレベル選択機能などにより、加工対象物(ワーク)1個当たりの消費電力は動作時で従来機比2・2%、機械停止時で同13・2%削減した。
フロントのワークスペースにスライド式スプラッシュ扉を装備し、2スピンドルと2タレットが対称的に並列されている。上部には3軸ローダーを装備し、マシン主要部を象徴的に見せるボックス造形で、新たに芯押し台を設けた。右側に大型制御盤とローダーを配置することで、稼働部のシンメトリック性に適度な緊張感を醸し出した。製品外観は、中央の加工室をメインに、両側をヘアラインのステンレスパネルでトリムし、精密さと信頼感をデザインした。
本製品は独自の熱変位補正システムと省エネ空冷システムなどで、安定した加工精度を保証し、ランニングコスト削減と省エネを実現した。ローダー制御にも対応する大型タッチパネルの採用で視認性を良くし、快適な操作性の向上につなげた。また新型3軸ローダーシステムの導入による速度向上でサイクルタイムを短縮している。高い生産性をベースにDX技術による作業性の向上、サステナビリティーに対する強化を示した。
FOCUS ON IT!—現物審査で注目されたデザイン技術開発
床の空気でベッド冷却
技術部 研究開発課係長 新元 翔太
XWT—8は機械1台分の省スペースで2台分の生産ができる工作機械として、工作物を加工するユニットを対称に2個並べた構成を持つ2スピンドル2タレット機である。このユニット構成の課題は、ベッド(工作機械のベースとなる鋳物部品)中央部に熱源となるユニットが集中するため、熱変形が発生し加工径変化に影響を及ぼすことである。従来機はこの課題の対策として、ベッド中央部に冷却水を循環させる方法を採用していた。しかし、この冷却方式は冷却水の循環ポンプ、ラジエーターファンの消費エネルギー、冷却水の定期交換といった生産コストが増加する欠点がある。
今回、開発した技術の発想は、機械性能の試験時に複数の動作条件下において、床面に近い空気層の温度変化が小さく安定している結果に気付いたことからである。
この床面に近い空気層を、熱源が集中するベッド中央部の冷却に活用するアイデアを考えついた。
床面が大きな熱容量を有することは知られているが、これを有効活用できる技術となると考え、実際に簡易ベッドモデルを製作し検証を行った。床面に近い空気層は、床面と熱交換が発生し、空気の流れを作ることで熱交換が促進され、より安定した温度となる結果を得た。
ベッド形状の検討は、試行錯誤の連続であった。ベッドは鋳造で成形を行うため、形状の肉厚や配置間隔、中空構造における中子の配置といった形状の制約がある。これらを考慮しつつ、設計と流体解析のフィードバックを重ね、床面に近い空気層を冷却に用いる新たなベッド構造を具現化した。
従来技術である冷却水を循環させる水冷システムに対して、新たに開発した空冷システムの消費電力量は、アイドル時で13・2%、生産時で2・2%の削減効果を得た。
本機に採用した空冷システムは、床の熱エネルギーを継続的に活用し、省エネルギーで安定した加工精度が得られる技術であり、多くの工作機械への採用が期待できる。
日本デザイン学会賞
【古河ユニック】 住宅建築用ミニ・クローラクレーン U—CUBEシリーズ URW7035C4—HC1/URW7055C4—HC1
都市圏では小さな土地や住宅密集地に住宅を建設する狭小住宅の建設ニーズが数多くある。しかし、重機が建屋前の道路にも入れないほど狭く、結果として建築コストが割高になってしまう。本製品は狭小地の住宅建設で、コンパクトで走行・可搬性があり、高い吊り上げ能力と操作性の両立をコンセプトに開発されたミニ・クローラークレーン。工期の大幅な短縮やコスト削減、地域社会との共生への貢献を目指している。
クレーンは資材吊り上げ作業を行う機能に特化した。油圧式伸縮型で「起伏ブーム3段」×「折曲ブーム5段」のタイプと「起伏ブーム5段」×「折曲ブーム5段」の計2タイプある。ブームの作業姿勢角度は前者が85、90、95度、後者が87度、地上からクレーンのフックまでの最大揚程は前者が21メートル、後者が27メートルの性能を備える。最大吊り上げ能力は980キログラム、最大作業半径は約14メートルで、建物の奥側へのアクセスが容易に行え、電線や足場などをかわして資材搬入が行える。
クレーンを支える4脚のアウトリガーは、2段折り曲げ式を採用し、張り出し状態を6パターン選択できる。前方で各30パターン、後方で各36パターンの多様な張り出し設置で安定化し、安全な作業を実現する。どのアウトリガーの状態でも一般的な住宅基礎の高さ(約450ミリメートル)をまたいで設置できる。格納状態での本体全幅は1・5メートルで、幅員2メートルの直角通路を走行可能。独自の「脱出モード」を搭載し、通常のクレーン・アウトリガー操作の制限を解除することで、省スペースでの格納・撤収作業が行える。
液晶制御部は、吊り荷重を10キログラム単位で表示する。多様なアウトリガーのパターンにも対応し、作業姿勢に応じた定格荷重や負荷率などが確認でき、安全な作業の遂行を支援する。機体の前方カメラの映像を確認でき、走行モードでは車幅を示すガイド線が表示され、狭い道での走行に配慮した。クレーン操作は、吊り上げ場所や脱荷場所が確認できる位置に移動して行うため、ラジコン操作する。
コンパクトでありながらアウトリガーが展開するユニークな造形は、静から動へ展開するフォームとして一定の成果を収めている。ブームやアウトリガーに設置された電気配線のブラック色と本体レッド色の対比は、力動感や力強さを表出する。改善点として美観に配慮した配線レイアウトが望ましく、ブームやアウトリガー内部への収納が理想。液晶画面においてクレーン状態の常時監視画面やアウトリガー設置パターン画面に画像操作環境(GUI)設計が求められる。ジョイスティック方式のラジコンについては視認性を向上させる液晶画面の設置方式への変更などが期待される。



