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第55回機械工業デザイン賞 IDEA
日本産業機械工業会賞/日本工作機械工業会賞
日本産業機械工業会賞
【ヒラカワ】 都市ガス・水素混焼小型貫流ボイラ HydroMix(ハイドロ ミックス)Series JSN—2000HM
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に水素は不可欠であり、水素の利活用を普及するには、「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」といった水素サプライチェーンにおける技術課題を解決する必要がある。本製品は都市ガス「13A」と水素を容積比でそれぞれ50%ずつを燃料として使用する小型貫流ボイラで、最大42%の二酸化炭素(CO2)を削減し、水素社会の実現を後押しする。
燃焼室を持たない独自の管巣(JAFI)燃焼方式を進化させ、都市ガスの予混合燃焼方式と水素の二段階燃焼方式を組み合わせた。窒素酸化物(NOx)を低減する機能を持ち、ボイラの出力0—75%の場合は都市ガスだけで燃焼し、それ以上の出力では都市ガスと水素の混焼を実現する。
換算蒸発量は1時間当たり2000キログラム、熱出力は1254キロワット、ボイラ効率は96%の性能を持つ。24時間365日対応のコールセンターを設け、全国に構築した自社メンテナンス拠点と連動することで質の高いアフターサービスを提供する。
運転操作はタッチパネルで独自のマイクロコントローラーを搭載した。見やすいカラー液晶画面で運転状態や燃焼モードを確認でき、操作性を高めた。誰でも簡単に操作可能な画像環境操作(GUI)を意図している。
燃焼速度が速い水素の使用に際しては、逆火に対する安全対策が必須となる。逆火防止安全対策として、内部で生じた爆発などの伝播を防止し火災を消し止める安全装置「フレームアレスタ」をガス供給配管に装備した。
また、水素供給配管内に水素ガスが残存した場合の対策として、不活性ガスである窒素により残留水素を除去する。
2種類の燃料を使用したハイブリッド感や機能の可視化を意図した外観は、水素の「Hydrogen」と社名のヒラカワの「H」をシンボライズして展開している。また、アクリル板と発光ダイオード(LED)を使用してシンボルマークや水素の稼働状況を明示する。アクリル板の使用で用いられる「エッジライティング」効果を採用すれば、その完成度は格段に向上することが期待される。内観にはさまざまなワイヤ類が設置されている。故障時やメンテナンス時における作業の効率化・容易化を考慮し、カラーワイヤリングなどの施策が望まれる。
本製品は貫流ボイラにおける小型ボイラ区分に分類され、取扱資格は事業主による特別教育受講だけで、ボイラ技師の免許を不要としている。小型貫流ボイラのカテゴリーに都市ガスと水素をそれぞれ独立して供給する「水素混焼」を初めて導入し、年間約346トンのCO2削減を実現する。水素社会の実現に向けて完成度の高い仕上がりを見せ、現状の小型貫流ボイラのあり方に一つの回答を示している。
日本工作機械工業会賞
【新日本工機】 高速形状加工機 DCⅡシリーズ
電気自動車(EV)の登場を契機に自動車メーカーの競争は、新興メーカーの勃興もあり激しさを増している。自動車製造に欠かせない金型づくりにおいてはリードタイム短縮が重要課題になる。
こうした中、新日本工機は金型加工機においてX軸駆動をリニアモーター化し、業界トップクラスである加工速度と形状精度の性能向上に取り組んだ。本製品は加工時間の短縮と、加工で生じる「象限突起」の極小化などによる面品位の向上を実現し、金型の修正や手仕上げ時間を削減。さらに消費電力を大幅に低減し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に対応する。
X、Y、Z、Wの各4軸の駆動と摺動(しゅうどう)方式(全軸リニアガイド)を強化し、加工速度の向上を実現した。Z、W軸には大型サーボモーターと大径ボールねじ構造を使用したツインサーボを採用し、各軸移動時の応答性を高めて高水準の動的精度を保証。駆動系の中でも特にボールねじの運動方向反転時の運動誤差である象限突起の抑制に向け、加工面に象限突起が現れないレベルに設定した基準値になるまでチューニングを行う機能を持つ。
金型向け制御システム「DCS」をバージョンアップし、制御上の誤差をリアルタイムに補正すると同時にパルスレベルのスムージングを高レベルで行う。従来と同じモードでも5%以上の時間短縮とより高品位な加工面を実現する。車のキャラクターラインをより鮮明に際立たせるエッジ強調モード機能を追加し、加工精度を3—30%高めた。消費電力は油圧装置の小型化や、油圧装置と冷却用油温調整装置のインバーター制御化などで従来機比30%削減した。
操作盤はメインディスプレーの右側に機械稼働状況や、状態監視などを示すサブディスプレーを設けたデュアルディスプレーにより、操作性を高めた。加工対象物(ワーク)を平行出しする作業は、計測から旋回までを自動化し、5分で完了する。またIoT(モノのインターネット)を活用したサポートソフトパッケージ「Si—Support」を標準搭載し、機械運転の状況確認や機械自己診断、リモートサービス、電子マニュアルの閲覧を可能とした。
造形は断面積の大きな主要構造(コラム、クロスレール、サドル—ラム)の優れた剛性にこだわる門型マシニングセンターとし、前方にワークを載せるテーブルを装備する明快な機械構造。水平のクロスレールはヨロイ付き蛇腹でシンプルにカバーする。
本製品は門型加工機におけるパイオニアの名に恥じない完成度の高い仕上がりを見せている。自動車用アウターパネルをはじめとして、デザイン通りの形状精度と面品位を高速加工で高次元に実現し、今後大きな競争力を発揮することが期待できる。


