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第55回機械工業デザイン賞 IDEA
日刊工業新聞創刊110周年記念賞
【タカヤ】デュアルサイドフライングプローブテスタ APTー2600FD
市場では自動車の電装化・高性能化の進展に伴い、小型チップ部品の採用が加速し、高密度に多くの部品を実装するニーズが拡大している。こうした中、多品種少量生産に対応した高性能の基板検査が求められる。本製品はプリント回路基板の電気検査装置であるインサーキットテスター(ICT)について、治具が不要で高精細・高精度な検査が可能な「フライングプローブ式」を採用した。多様なプリント回路基板に対応する高効率なプロービング技術により潜在不良の検出を効率化した。
新開発のモーターシステム・プローブ機構を搭載し、上下同時に最大6プローブのコンタクト検査が可能。検査速度は加速度50Gを実現し、0・02秒の超高速検査性能を持つ。基板にプローブが接触する瞬間に動作速度をゼロにする「ZEROインパクトプローブ制御」による新制御システムを採用した。基板や部品へのダメージを最小限に抑え、耐久性を向上して低ストレスで正確なプロービングを可能とした。
液体レンズを搭載した最新の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)カラーカメラは、従来機比で解像度70%、被写体深度300%向上の高解像度を誇る。多機能ビジョンシステムの「3Dリアルマップ機能」によりプローブのコンタクト位置を立体的に表示、可視化することで直感的な操作を実現した。テスター内部を監視するリモートカメラを標準搭載し、遠隔地でもリアルタイムで作業状況を確認できる機能を持つ。検査できる基板の厚さは最大12・7ミリメートルと他社比約4倍の厚い基板に対応できる。
業界初のプローブの自動クリーナーを搭載し、利便性を大幅に高めて作業者の負担軽減やメンテナンス時間短縮などを実現した。簡単に短時間でのプログラム作成が可能な検査プログラム支援ソフトウエアを取り入れ、手作業によるプログラム作成のコスト削減や、作業時間の短縮と作業負荷の軽減に寄与する。ハードウエアは10年の長寿命設計としており、装置の維持管理コストの低減と安定した検査環境を提供している。
排気ファンの取り付けを背面から上面に変更。モニターアームやスイッチ類の取り付け位置を工場レイアウトやユーザーの使用方法に合わせて柔軟に対応できる。
本製品はハードウエアからソフトウエアまで自社による一貫生産を行い、顧客ニーズに合わせたカスタマイズ性と拡張性を有する。CADデータを自動変換し、最適な検査プログラムを自動的に構築できる。工具レスで部品交換を簡単にし、メンテナンス性を大幅に向上した。デジタル検査を対象とした「JTAGバウンダリスキャン」の標準装備化の早期実現が期待されるが、記念賞にふさわしい高機能を有している。
FOCUS ON IT! ―現物審査で注目されたデザイン技術開発
接触の衝撃、限りなくゼロに
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APTー2600FDによる高精度電気検査の様子
産業機器事業部 副事業部長 柳田 幸輝
フライングプローブテスタは治具式インサーキットテストが抱えていた設計工数の多さや高額なランニングコスト、微細部品や高密度パターンへのアクセス困難といった課題を解決した革新的な技術である。
近年は第5世代通信(5G)や6Gをはじめとする、より精密な実装が必要な次世代基板への対応が求められるようになった。高密度で精密な設計とともに、試験工程においてもこれまで以上に繊細な取り扱いが求められている。特にプローブ接触による打痕や微細な傷さえも、製品の信頼性や性能に影響を与える可能性があることから、検査による物理的な痕跡を極限まで抑える技術が不可欠である。
この課題をクリアするため開発したのが「ZEROインパクトプローブ制御」。接触時の衝撃値を限りなくゼロに近づける、というコンセプトは理論的には確立できたが、実際の装置に組み込んで検証すると、制御応答のタイミング、機構部の精度、さらには個体差への対応など、多くの壁が立ちはだかり、実現には相当な工夫と時間を要した。
ブレークスルーとなったのは、理論を現実に落とし込むためのアプローチを一から見直したこと。特に効果的だったのが、プローブが接触する直前の減速挙動を高精度にリアルタイム検出し、最適なタイミングで制御を二次実行する手法だった。これにより、接触の瞬間のエネルギーを限りなくゼロに抑えることが可能となった。
半導体業界におけるプローブカードやインターポーザーといった、極めて微細な電極構造を扱う検査工程への応用も視野に入れている。ウエハーレベルでの電気的接触や、中間インターフェースとしてのインターポーザーへの信号アクセスには、マイクロニュートン単位の荷重管理が求められる領域である。従来、物理的なダメージリスクから接触検査の限界とされてきたこれらの分野においても、ZEROインパクトプローブ制御を用いることで新たなブレークスルーをもたらす可能性を秘めている。
