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地球環境特集
〔10面〕豊かな海を次世代へ —生物保全の最前線—
6月8日は国連が定めた「世界海洋デー」。アントニオ・グテーレス事務総長は海が抱える深刻な問題の解決には、多国間の行動が必要であるとメッセージを発信した。MSC(海洋管理協議会)は認証事業やラベル制度で、持続可能な漁業の普及や水産資源の保全に務める。またサンシャイン水族館はその立場を生かして、サンゴの保全や、人々が環境問題について考える機会の創出に取り組む。
海洋生物守るBBNJ協定
地球の表面の7割以上を覆う海は、鉱物やエネルギー資源、水産物、さらには酸素の供給源として、我々の生活に欠かせない。しかし気候変動や水産資源の乱獲、生物多様性の喪失、海洋汚染などによって、海のさまざまな危機が深刻化している。
今年1月、約20年にもおよぶ策定作業の末、「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」が発行された。公海や深海底における海洋生物多様性の保全と持続可能な利用のため、海洋保護区(MPA)といった区域型管理ツールの設置や、環境影響評価(EIA)の義務化などが定められた。
今年の世界海洋デーに、国連のグテーレス事務総長は「海を無限のものとして扱い続けることはできません。私たちは海との新たな関係を築かねばならないのです。昨年の第3回国連海洋会議の成功と、今年のBBNJ協定発効は、多国間の行動が可能であり、かつ必要であることを物語っています。『世界海洋デー』にあたり、今まさに必要な野心と決意をもって行動を起こそうではありませんか」と世界に強く訴えた。
MSCは日本を含む世界23カ国で3万1000人以上を対象に実施した海に関する意識調査の結果を、世界海洋デーに発表した。「海の現状に不安を感じている」と回答した人は調査国全体で86%で、日本では94%にものぼった。一方で、調査国全体では66%が「過剰漁獲は50年前に比べて広がっている」と正しく答えたが、日本では調査国平均よりも大幅に低い43%だった。
“持続可能な”漁業 MSC認証で推進
MSCは「MSC漁業認証」と「MSC CoC認証」、およびMSC「海のエコラベル」を管理・推進している。MSC漁業認証は、第三者機関の審査によって、水産資源や環境に配慮した漁業であることを認証する。MSC漁業認証を取得した漁業でとられた水産物を使った商品には、海のエコラベルが付けられ店頭に並ぶ。
MSC CoC認証では、MSC認証水産物と非認証水産物が混ざらないよう厳格に管理し、認証水産物を消費者に確実に届けることを目的に、サプライチェーン(供給網)に関わる加工や卸売り、レストランなどの事業者を認証する。認証やラベル表示で、持続可能な漁業の普及と、それによる水産資源や海の保全に取り組む。
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キャンペーンのオープニングイベントでは、ココリコの田中直樹さんがMSC漁業認証と海のエコラベルについて解説
MSCの日本事務所であるMSCジャパンは、6月4日から7月3日まで「豊かな海をいつまでも。選ぼうMSCラベル」キャンペーンを行った。キャンペーン初日のオープニングイベントには、2018年からMSCアンバサダーを務めるお笑いコンビ・ココリコの田中直樹さんと、お笑いコンビのオズワルド、ドンデコルテ、かけおちが参加した。
イベントでは、田中さんが垂下式カキ漁として世界で初めてMSC漁業認証を取得したマルト水産(広島県福山市)と邑久町漁業協同組合、漁師の人々に、認証取得までの道のりなどをインタビューしたキャンペーン動画を初公開した。
また水産資源の現状やMSCの役割について田中さんが解説。現在、とり過ぎの状態にある世界の水産資源は約36%にのぼり、50年前の3倍以上となっていることを伝えた上で、MSCラベルが付いた商品を選ぶことが、世界規模で海を救うことにつながると来場者に呼びかけた。
さらに海や魚にまつわる質問に答えると、自分の性格がどの魚に似ているかが分かる「MSCおさかな性格診断」を登壇者が実施。楽しみながら、魚の生態やMSC漁業認証について考えた。
キャンペーン期間中、同診断は特設サイトでも展開され、約2万8000人が体験した。しかしMSCラベルの認知度はスイスなどの欧州に比べて、日本は低い。また日本では海産物の不漁は「気候変動によるもの」というイメージが強く、「とり過ぎ」が原因だとは考えない人も多い。MSCジャパンは過剰漁獲の現状や認証制度、MSCラベルの認知度向上を目指し、活動を行っている。
サンシャイン水族館の活動/サンゴプロジェクト20年 沖縄に130群体戻す
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㊤14年に有性生殖によってサンゴを殖やすサンゴ礁再生プロジェクトが始動 -
㊦同プロジェクトで植え付けたサンゴは成長が早く、約10年間で1メートル近くまで成長(㊤㊦ともにサンシャインシティ提供)
東京都豊島区にあるサンシャイン水族館は、環境保全に関する多様な取り組みを行っている。そのうちの一つである「サンゴプロジェクト」が、今年で20周年を迎えた。同プロジェクトは「サンゴ返還プロジェクト」と「サンゴ礁再生プロジェクト」の二つからなり、沖縄県恩納村との協力の下、進めている。
06年に始まったサンゴ返還プロジェクトでは、恩納村の海に生息するサンゴの一部を折り、別の土台に活着させ、同館の水槽で十分に成長させた後に、再び恩納村の海に植え付け、成長を見守る。
14年にスタートしたサンゴ礁再生プロジェクトでは、卵子と精子が受精する有性生殖によってサンゴを殖やす。親となるサンゴを育成し、そのサンゴが産卵することで自然界での再生産を行っている。また水族館スタッフが産卵に立ち会えた際は、一部の卵を回収。同館で育て、恩納村の海に返す。
これまで、二つのプロジェクトを通して130群体のサンゴを返還してきた。サンゴはデリケートな生き物で、水質悪化や光量不足、水温変化などのストレスを受けると「共肉」と呼ばれる組織が溶けてしまうこともある。同館ではなるべく飼育環境を海に近づけるよう、水の流れを再現するポンプやサンゴ飼育用LED、水質検査などを駆使し、試行錯誤しながら水槽飼育を行ってきたという。
サンゴは海水温が30度Cを超える日が続くと白化し、それが続くと死滅してしまう。プロジェクト開始以降、16年に初めて大規模な白化が起こり、その後も17年、22年、24年に白化が起こった。24年には、サンゴ返還プロジェクトで返したサンゴの83%が、サンゴ礁再生プロジェクトで育成しているサンゴの61%が死んでしまった。地球温暖化の影響が恩納村の海にも表れている。
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恩納村の海のサンゴを育成・展示するサンシャイン水族館の水槽
プロジェクトの担当者は「サンゴプロジェクトによるサンゴの再生は自然界においては微々たるものではあるが、少しでも回復の手助けになっていれば嬉しい。23年にはサンゴ礁再生プロジェクトの当初の植え付けエリアがいっぱいになるほどサンゴが増えた。またプロジェクトを行うことで、遠い東京の地でも人々のサンゴ保全への意識を高められており、そういった意義もあると感じている」と語った。
廃棄漁網でユニホーム/海洋プラ問題の解決を実践
また同館は今年2月、使用済みの廃棄漁網をリサイクルした生地を用いたオリジナルユニホームを導入した。
環境省の「令和6年度漂着ごみ組成調査データ取りまとめの結果について」によると、24年度の調査結果では、日本に漂着したゴミの内、プラスチック製ロープ・ひも(漁具)が、個数では全体の11・6%、重量では15・3%を占めた。寿命を迎えた漁網は埋め立て処分が主流で、環境に優しい処分方法やリサイクル方法の確立が求められていた。
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廃棄漁網由来の生地を用いた新ユニホーム(サンシャインシティ提供)
同館ではリサイクルが難しいポリエステル製漁網をケミカルリサイクルしたユニホームを、案内スタッフが着用。①環境配慮②今までにないデザイン③ジェンダーレス④機能性—を追求した同ユニホームは性別問わず着こなせ、漁網由来であることが分からないほど質感もよいという。
2月9日―3月19日に、ユニホームとともにリサイクルの流れが分かるポスターや再生材を展示し、来場者に海洋プラスチック問題についてアピールした。
同館はほかにも、体験企画などを通じて、絶滅の危機にひんしているケープペンギンの現状や、カワウソ・アシカを取り巻く環境課題などについて発信するイベント、アクアポニックス水槽の展示、ケープペンギンの保全に向けたクラウドファンディングへの協力なども行っている。今後も老若男女に愛される“水族館”という立場を生かし、さまざまな角度から海洋・環境課題の解決に向けて、活動を続けていく。
