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地球環境特集
〔6面〕再生可能エネルギー拡大でエネ安保に寄与
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法政大学 社会学部 教授 高橋 洋
【執筆】法政大学 社会学部 教授 高橋 洋
ソニー、内閣官房IT担当室、富士通総研、都留文科大学などを経て、23年(令5)4月から現職。博士(学術、東大院)。専門は電力システム改革、再生可能エネルギー政策。編著書に『エネルギー転換の国際政治経済学』(日本評論社)、『証言 原子力規制委員会は何をめざしたか』(岩波書店)など。
近年の日本では大規模太陽光発電所(メガソーラー)への反対運動が広がるなど、再生可能エネルギーに対するマイナスな評価も一部見られ、実際の導入速度も落ちている。対照的に、欧州などではエネルギー危機を受けて純国産である再生エネへの期待が高まり、導入は加速している。気候変動問題だけでなくエネルギー安全保障の観点も含めて、再生エネの価値と可能性を考えてみたい。
エネルギー危機と再生エネ
今年のイラン戦争を受けて、エネルギー危機が勃発している。2022年に始まったウクライナ戦争の際にも、我々は化石燃料の価格高騰に直面したが、今回はホルムズ海峡の封鎖によって実際にペルシャ湾岸からの原油や天然ガスの供給が途絶えた。
現代社会でエネルギーを欠かすことはできず、その約8割は化石燃料だ。最近まで気候変動問題の観点から脱炭素が叫ばれてきたが、今やエネルギー安全保障のためにも化石燃料への依存を減らすことが急務である。その最右翼が再生エネである。
1次エネルギーとしての再生エネは主に電力に変換されるが、これを電源構成で見ると00年代後半から世界的に拡大している(グラフ1)。欧州の主要国はこの流れを先導してきた。ドイツや英国、スペインは24年時点で電力の半分以上を再生エネによって供給している。再生エネの中でも風力と太陽光は、場所をそれ程選ばずほぼ無限に賦存し、燃料費はタダであることから、近年の増加分の大半を占める。
再生エネの課題克服
00年代までは風車や太陽光パネルが高価であったため、再生エネ電力は高いと言われてきた。そのため欧州の主要国であるドイツは、固定価格買い取り制度(FIT)などの支援策を講じることで再生エネの導入を促進し、これらの発電機は大量生産により大幅にコストが下がった。
今や、米国では陸上風力や太陽光は原子力やガス火力よりも安い電源となっており(グラフ2)、発展途上国も積極的に導入している。風力・太陽光ともに累積導入容量は中国が世界一で、24年の太陽光の導入容量については、1位の中国以下、インドが3位、パキスタンが4位、ブラジルが6位であった。
それでも、風力や太陽光は変動性再生エネと呼ばれ、出力が天候に左右されるため、需要と供給を瞬時に一致させる必要がある電力システムにおいて、安定供給上の限界があると指摘されてきた。しかし欧州の主要国において、再生エネが電源構成の5割を超えた結果、大規模停電が増えているわけではない。系統運用の方法の改革や市場メカニズムの活用により、電力システムの柔軟性を高めることで、変動性を克服してきたからである。
さらに近年は、高速の充放電を得意とする系統用蓄電池の導入が急拡大しており、再生エネが電源構成の80%以上に達しても技術的に問題ないと考えられている。その証拠に、国際エネルギー機関(IEA)による50年の脱炭素に向けた試算では、40年の世界全体の再生エネの電源構成は85%になっている(表)。なお、原子力は9%、水素や二酸化炭素(CO2)の回収・貯留(CCS)などは3%に留まる。
日本に求められる再生エネの導入拡大
日本がすべきことは明らかであろう。化石燃料やウランが実質的に賦存せず、原発の過酷事故を起こした地震大国として、再生エネを最優先で導入すべきだ。それは脱炭素にもエネルギー安全保障にも寄与し、経済的なメリットも大きい。にもかかわらず、グラフ1でも分かるように日本の再生エネの導入速度は遅い。
その理由としてよく挙げられるのが、立地できる場所がないというものである。しかし日本と人口密度が近い欧州の主要国が日本の2倍以上の割合を導入しており、今後さらに増やす予定だ。日本は日射量ではドイツや英国よりも多く、島国として洋上風力の賦存量では世界有数である。
地熱資源が世界第3位にもかかわらず、開発された容量は世界第10位に留まる。開発が容易な平地が少ないという声も聞くが、今後、太陽光パネルの設置場所として期待されるのは建築物の屋根や壁面だ。
広域融通 出力の変動対策に有効
また島国であるため国際送電線を介して広域で電力を融通できないという話も聞くが、これも決定的要因にはならない。日本はドイツの2倍弱、英国の3倍以上の電力需要を持っているため、国内で広域融通すればその効果は大きい。しかし国内の地域間を結ぶ長距離送電線の建設は遅れており、九つの送電会社間の広域運用は道半ばである。
さらに太陽光パネルの多くは中国製であるため、経済安全保障の面で問題があるといった声も聞く。しかし財務省の貿易統計によると、25年の太陽光モジュール・パネルの輸入額は1239億円だったのに対して、液化天然ガス(LNG)の輸入額は5兆7051億円だった。太陽光パネルは一度輸入すれば20年間程度は発電し続けられるが、LNGは産出国から輸出が停止されればすぐに不足に陥ることを考えても、そのリスクの違いは明らかであろう。
要するに、日本は再生エネの導入を拡大できる条件に恵まれているにもかかわらず、その取り組みが遅れている。その背景には、送電網の広域運用や電力市場に関する制度改革が進んでいないことがある。そして、日本政府の再生エネの導入目標は控えめで、その分、輸入に頼る原子力や水素などへの期待が大きい(表)。脱炭素だけでなくエネルギー安全保障にも寄与する再生エネの導入拡大を、日本は最優先で進めるべきである。
