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地球環境特集
〔9面〕スイス、世界を先導/日本との産業連携に期待
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スイス大使館 スイス・ビジネス・ハブ 日本代表/参事官 ファビアン・シュティーファーター
【執筆】スイス大使館 スイス・ビジネス・ハブ 日本代表/参事官 ファビアン・シュティーファーター
ザンクトガレン大法卒、スイス公認税務専門家(EXPERTsuisse)。スイス外務省勤務として、ニューヨークとムンバイでのスイス・ビジネス・ハブ代表を経て22年より現職。
チーズやチョコレート、時計などで有名なスイスは、欧州の中央部に位置する内陸国。アルプスを中心に美しい山や峡谷、湖といった自然に恵まれ、環境先進国として知られる。スイス大使館のファビアン・シュティーファーター参事官に、スイスの環境政策や日本との産業連携への期待を寄せてもらった。
環境政策 国内課題として推進
スイスは国土の大半をアルプスに囲まれた国であり、気候変動の影響をもっとも直接的に体感している国の一つだ。氷河の後退、降雪パターンの変化、洪水リスクの増大—。これらは抽象的な統計ではなく、スイス国民が日々直面する現実である。だからこそ、スイスの環境政策は単なる国際的な義務感からではなく、切実な国内課題として推進されてきた。
スイスは2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成を「CO2法」で定め、「エネルギー戦略2050」の下で再生可能エネルギーへの転換を加速している。化石燃料に課される炭素税(1トン当たり120スイスフラン)と、排出量取引制度(ETS)を組み合わせた独自のカーボンプライシング制度で、経済的インセンティブと規制の両輪で脱炭素を推進しているのが特徴だ。
エネルギー分野では、スイス連邦工科大学チューリッヒ(ETH)と同ローザンヌ(EPFL)を中心とする世界最高水準の研究基盤の下、企業はグリッドの近代化、エネルギー貯蔵、太陽光発電、大気中から直接二酸化炭素(CO2)を回収する「DAC」など、幅広い脱炭素技術において際立った存在感を示している。大企業からスタートアップまで、精緻かつ革新的なソリューションを世界に提供する。
日本ではスイス大使館内の貿易投資振興機関であるスイス・ビジネス・ハブが、こうした技術を持つスイス企業と日本のパートナー企業・バイヤーとの橋渡しを行っている。またバイオテクノロジー、水素・燃料電池、鉄道、造船、半導体技術の分野では、スイスパビリオンを企画、運営している。
カーボンオフセット分野 日本とのつながり多数
カーボンオフセット分野でも、スイスは世界をけん引する(表)。ETH発スタートアップのクライムワークスは、大気中のCO2を直接回収・永久貯留する技術において世界をリードし、日本企業向けにもオフセットサービスを提供している。
サウスポールは科学的根拠に基づき第三者機関が認証する、国際水準のカーボンオフセットサービスとネットゼロ戦略を日本企業にも提供している。森林保全に依存する従来のオフセット手法とは一線を画し、CO2の永続的・検証可能な削減・除去を保証する点で、国際的な信頼を得ている。
またEPFL発スタートアップのナノジェンスは、ナノ材料技術でセメント製造における脱炭素という難題に挑んでいる。
スイスのベンチャーキャピタル・エコシステムも、日本企業との連携を深めている。例えば、エメラルド・テクノロジー・ベンチャーズには複数の日本企業が参画し、脱炭素・サステナビリティー技術分野でのテック・スカウティングや概念実証(PoC)を通じたオープンイノベーションを実践している。
スイスは欧州市場への玄関口であるのみならず、極めて優れた研究・イノベーション環境を誇る。世界最高峰の学術機関、国内6カ所に設置されたスイス・イノベーション・パークは、研究開発(R&D)とオープンイノベーションの場として、日本企業にも開かれている。
欧州統括拠点・販売拠点としても、スイスは政治的安定性や優れた法制度、多言語環境、高い生活水準により、比類のない競争力を持つ。スイスは日本企業にとって戦略的な拠点となりつつある。
日本の産業界への期待 スイスとの共創を
日本とスイスはいずれも資源に乏しく、技術力と精密さを基盤に世界市場を切り開いてきた。だからこそ脱炭素という共通の目標において、両国の協力は単なる貿易、技術移転にとどまらない次のステージへと進む可能性がある。
日本の産業界には、スイスを貿易相手にとどまらず、R&D・イノベーション創出、欧州における高付加価値市場獲得の拠点として活用してほしい。スイスのイノベーションネットワークは、脱炭素・グリーンテック分野の研究開発において世界最高水準の環境を提供している。
スタートアップとの共創、大学発企業との連携、現地法人の設立—。こうした形での進出が、欧州を起点に日本企業のグローバルな脱炭素戦略を加速させる現実的な道筋となり得る。スイス・ビジネス・ハブはこうした協力の入り口として、引き続き日本の産業界との対話を深めていく。
