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地球環境特集
〔4面〕トレンドテクノロジー —陸上養殖 & AI—
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現や環境負荷の低減、持続可能な食料供給の確保など、社会課題の解決に向けた取り組みが加速している。ここでは、省エネルギー化や生産性向上を支えるAI(人工知能)活用の最新事例と、新たな食料生産モデルとして注目される陸上養殖の取り組みを紹介する。
【AI活用】 生産体制・サービス拡充
シード/工場のエネ利用最適化
コンタクトレンズの製造を手がけるシードは、生産時の二酸化炭素(CO2)排出量削減に向けた計画立案に、AIを活用する。同社ではエネルギーとして電気とガスを使用しており、AIにより最適な使用比率などを検証する。
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シードの鴻巣研究所ではCO2削減にAIを活用
同社の鴻巣研究所(埼玉県鴻巣市)は、4棟の製造棟と研究所などを有する国内主力生産拠点だ。コンタクトレンズの製造においては、クリーンルームにおける作業や滅菌工程など、コンタクトレンズの品質を保つために多くのエネルギーを使う。同社のCO2排出量のうち鴻巣研究所からが95%を占めるという。
同拠点の各工場のエネルギー使用に関する大まかなデータをAIで解析することで、電気とガスの最適な組み合わせとCO2削減量、それに対する投資目安が自動で算出される。これまではCO2削減の計画立案に多くのデータと時間が必要だったが、AIにより作業を効率化し、中長期的な投資計画も立てやすくなる。
国内外のコンタクトレンズの需要増に伴い、シードは製造能力の強化を進めており、年間の生産能力を10億枚に引き上げる計画だ。一方で、2050年までにカーボンゼロを目指しており、中間目標として、30年度までに鴻巣研究所におけるCO2排出量を22年度比50%改善することを掲げる。AIの活用により、製造能力の強化と環境負荷低減を両立した生産体制の構築で、持続的な事業を実現する。
リコー/企業向け環境コンサル
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AIと見学のセットで環境課題の解決を支援するリコーの環境事業開発センター
リコーは4月、環境事業開発センター(静岡県御殿場市)をリニューアルし、企業の環境対策を支援するコンサルティング機能を強化した。AIで企業の困りごとを診断し、環境技術の見学とセットで解決策を提案する。
センターには、脱炭素や資源循環への取り組み方が分からずに悩んでいる企業が来所する。事前にリコーの担当者が困りごとを聞き取る。さらにAIが公開されている会社情報を読み込み、想定課題を抽出する。「省エネが不足していないか」「資源の削減に必要な加工技術があるのか」と分析が具体的だ。さらにAIが見学コースを設定する。
16年に開所したセンターは、リコーグループの「環境総本山」の位置付け。木質バイオマスボイラやソーラーカーポート、大型蓄電池、ペロブスカイト太陽電池などの環境技術が稼働している。センターはネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)になっており、再生可能エネルギー電力も活用してオフィス複合機の再生工場を稼働させている。
こうした豊富な環境技術や活動から、AIが企業ごとに最適な見学コースを決定する。見学当日、来所した企業とリコーの担当者がセンターを回りながら興味を持ったことや気づきをタブレット端末に記録。見学から戻るとAIがアクションを提案する。企業は見学も含めた振り返りをしながら、リコー担当者と議論を深めていく。
企業の課題を解決できれば、リコーへの信頼が高まる。するとリコーにとっても取引の継続や拡大などのビジネスチャンスとなる。リコーグループとして26年度、センターへの来所をきっかけとした商談貢献売上高30億円を目標に設定した。
【陸上養殖】 食と環境の両立を実現
遊食房屋/廃棄うどんでウニ養殖
和食料理店などを経営する遊食房屋(香川県観音寺市)は新食材「讃岐うどん雲丹(うに)」を開発、提供している。
瀬戸内海ではムラサキウニが海藻を食い荒らすことで藻場が消失し、魚介類の生息環境が失われる「磯焼け」が深刻化している。また香川県で多いセルフ式の讃岐うどん店では、ゆで置きしたうどんを30分以上放置するとコシがなくなってしまうため、調理と客入りのタイミングがズレると提供が難しくなってしまう課題があった。
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廃棄うどんを餌に、厄介者だったムラサキウニを育成。新食材として提供
こうした背景から、同社は23年に香川県立多度津高校海洋生産科と共同で、廃棄する讃岐うどんを餌に、駆除対象だったムラサキウニを食用として育成するプロジェクトを始めた。24年4月から地元の庵治漁業協同組合の協力で陸上養殖実験を開始。香川県水産課や大学とも連携して、同年11月には味や品質の実験を行い、ウニの成長速度や色味、甘みなど商品化へのデータを蓄積した。
25年4月には香川県多度津町に、養殖場「讃岐うどん雲丹Labo」を設立。同ラボでは年産1万個のウニを養殖できる。同年10月からは、遊食房屋が運営する飲食店舗での提供を開始した。讃岐うどん雲丹は通常のウニよりも苦みやクセがなくクリーミーで、「ウニが苦手な人でも食べられる、全く新しいウニ。県外から食べに来てくれるお客さまもいる」と取締役営業本部長の細川明宏氏は自信を見せる。
現在、新養殖場の開設準備を進めており、27年頭に試験運転、同年3月に稼働予定。新養殖場では年産20万個のウニ養殖を見込む。
また同社は同県立農業経営高校と、昆布やいりこなどの出し殻やウニ殻による堆肥の製造にも取り組んでいる。その堆肥で小麦を育て、うどん製造につなげるという循環システムの構築を目指す。
新菱冷熱/水族館の設備設計応用
新菱冷熱工業(東京都新宿区)は、水産物需要の増加や水産資源保全の重要性が高まる中、閉鎖循環式陸上養殖プラントの実証プロジェクトを開始した。同社のイノベーションハブ(茨城県つくば市)で外部の海や河川と接続せず、養殖水を施設内で循環・管理する「閉鎖循環式陸上養殖」の実証設備を完成させた。今年から本格的な実証運転を開始し、実証後は陸上養殖における設備工事の受注拡大や水族館向け脱窒システムの導入を目指している。
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脱窒システムを導入することで飼育水を再利用でき、補給水の低減、水資源節約を実現
同社は中期計画における成長戦略のひとつとして、新たな事業の創出に取り組んでいる。その一環として、全国21カ所の水族館で飼育設備の設計・施工を通じて培ってきた水処理や生体管理技術を活用している。実証プロジェクトでは脱窒システムを導入し、水中に含まれる硝酸性窒素を微生物の働きによって窒素ガスに変換、除去する。同システムを組み込むことで、飼育水の再利用により補給水の低減が図れ、水資源節約などに貢献する。
近年、グローバルで水産物消費が増加する中、国内では水産庁が「養殖業成長産業化総合戦略」を掲げており、陸上養殖は持続可能な水産資源の供給手段とされている。海面養殖による水質悪化や、赤潮、気候変動などによる水産資源への影響が懸念される中、閉鎖循環式陸上養殖は安定的な水産物の供給と環境負荷の低減を両立可能な方式として注目される。
