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地球環境
4月29、30日にイタリア・トリノで主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境大臣会合が開催された。地球は気候変動、生物多様性の損失、汚染という三つの世界的危機に直面していることを明らかにした。これを踏まえ、初めて石炭火力発電の段階的廃止のための年限明記や、パリ協定が定める透明性報告書の提出目標が採択された。世界の再生可能エネルギーによる発電量3倍を目指すため蓄電システムやスマートグリッドなどの導入拡大を確認した。そうした中、日本ではPPA(電力販売契約)方式をはじめとした再生エネの普及拡大や、水素のサプライチェーン(供給網)確立に向けた取り組みが加速している。また、教育機関でのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた研究や環境への取り組みも進んでいる。地域で環境・社会・経済の課題を解決する〝ローカルSDGs〟も広がりつつあり、各自が持続可能な社会を実現するために挑戦を続けている。
地元企業と自治体の取り組み
海が育むローカルSDGs
【執筆】阪南市役所 未来創生部シティプロモーション推進課
大阪・阪南市と漁師鮮度 連携
大阪府阪南市は豊かな自然環境と温暖な気候に恵まれた漁業の町。阪南市では持続可能な地域社会の実現を目指し、漁師鮮度(大阪府阪南市、岩井克巳社長)と連携して、地域資源を活用したさまざまなローカルSDGsの取り組みを推進している。
漁業協同組合は2016年から「波有手(ぼうで)のカキ」として本格的なカキ養殖を開始した。17年に大阪府で初めて漁協直営のカキ小屋「波有手のカキ小屋」をオープン。21年から民間企業と共同出資で漁師鮮度を設立し、カキ小屋を地域のプラットホームとした観光漁業・魚食普及イベントなどを行うことで、人が集い、ともに楽しめる場所づくりに取り組んでいる。
また、次世代の担い手である小中学生への海洋教育の推進、地域の高齢者や障がい者の働きの場づくり、若者の職業・就業体験による担い手の育成なども行い、地域の環境保全とともに地域社会全体への貢献、地域循環共生圏の具現化を目指している。
大阪・阪南には人々の暮らしのすぐそば、程よい近さに森里川海がある。そして人々は、これらの豊かな恵みを日々感じながら暮らしている。それは例えば、古くは「土佐日記」に記されていることや、今も市の歌や校歌に森里川海が歌われていることから読み取ることができる。はだしで行ける浜があり、おいしい魚や多様な生き物がいる。阪南の海には豊かなアマモ場が広がっている。
大阪湾の環境は改変され、自然が失われてきた。阪南の豊かさや恵みは当たり前にあるのではなく、自然とともに営みを紡いできた人々がさまざまな活動を通じ、守り、育ててきたもの。環境保全と持続可能な漁業の実現は、地域社会の発展にとって不可欠な課題である。阪南市では、このような里山里海をフィールドに、官民連携の取り組みを推進している。
漁師鮮度とのローカルSDGsの取り組みは、地域活性化、環境保全、健康増進、教育・人材育成、情報発信・啓発活動など、さまざまな分野にわたっている。豊かな海を守りつつ、自立した地域づくり、地域資源の循環、地域間連携を基軸とした取り組みは、次世代型漁業や漁食文化、海洋観光、水産業の推進へと発展させる可能性を秘めたものと考えている。
SDGsの17の目標を地域課題の解決と地域活性化につなげていくローカルSDGsは、地域、企業、行政、住民が力を合わせて取り組むことで、持続可能な未来を創造することができるのだと信じている。
道路舗装の脱炭素を加速
【執筆】田中鉄工 サステナブル戦略室 陣内 太
廃食油で重油代替燃料に利活用
田中鉃工(佐賀県三養基郡)は道路舗装業界のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現するに当たり、地域の家庭や飲食店などから発生した使用済み食用油などの廃食油を、アスファルト合材の製造に使用する重油代替燃料として、その地域の道路や歩道に還元する官民一体型プロジェクト「Roa(d)cal SDGs Project」を発足した。廃食油はその地域から発生する地産地消のエネルギーとして循環型社会の実現に貢献し、さまざまな環境負荷軽減エネルギーとして地球環境の保全にも貢献する。
2024年4月26日、全国に先駆けて、地産地消型の国連の持続可能な開発目標(SDGs)モデルが実現した長崎県大村市でプロジェクトの発表会を開催した。
地域の道路舗装会社や油脂会社、小売店、生協、マスメディアなどとの共創と、大村市の広報・後方支援で、市民と一体となった廃食油のリサイクルにおける地域の地域の集中的な取り組み〝リサイクルドミノ〟が展開された。発表会当日は園田裕史大村市長をはじめ、関係各所の代表が登壇し、全国展開に向けての思いや意気込みを語った。
この取り組みによって資源ゴミや化石燃料使用量、二酸化炭素(CO2)・硫黄酸化物(SOx)・窒素酸化物(NOx)の排出量削減、および下水道と環境への影響、資源の有効活用に貢献することで、大村市のゼロカーボンシティーやローカルSDGsの実現につながる。今後は北海道小樽市や福岡県宗像市、熊本市など、全国のさまざまな地域での実施が決定している。
廃食油は事業系と家庭系に分類される。国内における課題として、家庭系廃食油は全体の約96%(1年当たり9・6万トン)が、現状ゴミとして捨てられており、循環されていない。また、事業系廃食油はほぼリサイクルされているものの、約3分の1(1年当たり12万トン)が海外に輸出されており、同じく地域内で循環されていない。さらに、家庭系・事業系ともに、履歴管理(トレーサビリティー)とカーボンフットプリントが確保されていないことが挙げられる。
こうした中、当社はリサイクルの推進に向けて、廃食油のみならず、小売店などで回収されている食品トレーや卵パックなどでも、回収量やリサイクルによる社会貢献量(CO2削減量など)の見える化や、小学生向けSDGs教育などを提案している。
また、廃食油のリサイクルを呼びかけるテレビCM・ラジオCMの放映や各種SDGsイベント出展などを通じて、地域や市民のリサイクルに対する意識醸成や行動変容を促す働きかけも実施している。
今後は脱炭素や循環型社会がより加速するために、制度設計や運用ルールについて、適切な仕組み創りを省庁や地方自治体と連携していく。その結果、関わる人たちの意識と行動が変わり、技術とプロダクトも進化していく。
当社はコーポレートメッセージである〝地域とともに循環型社会に貢献し、カーボンニュートラルを実現する〟を通じて、全てのステークホルダーとともに、地球環境の保全を達成する。