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地球環境
4月29、30日にイタリア・トリノで主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境大臣会合が開催された。地球は気候変動、生物多様性の損失、汚染という三つの世界的危機に直面していることを明らかにした。これを踏まえ、初めて石炭火力発電の段階的廃止のための年限明記や、パリ協定が定める透明性報告書の提出目標が採択された。世界の再生可能エネルギーによる発電量3倍を目指すため蓄電システムやスマートグリッドなどの導入拡大を確認した。そうした中、日本ではPPA(電力販売契約)方式をはじめとした再生エネの普及拡大や、水素のサプライチェーン(供給網)確立に向けた取り組みが加速している。また、教育機関でのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた研究や環境への取り組みも進んでいる。地域で環境・社会・経済の課題を解決する〝ローカルSDGs〟も広がりつつあり、各自が持続可能な社会を実現するために挑戦を続けている。
気候変動対策・産業育成の両輪
国、供給網全体で脱炭素
世界各地で気候変動対策と産業育成が両輪で強力に進められる中、日本でもその必要性が急速に高まっている。政府はサプライチェーン(供給網)全体での脱炭素化を後押しする姿勢を鮮明にした政策強化をはかっている。あらゆる産業セクターにおいて、一層の脱炭素化をはかるイノベーションが求められている。
クリーンエネ転換を支援
6月に閣議決定したエネルギー白書では、日本がさらされるエネルギー価格高騰リスクなどの根本解決には危機に強い需給構造へ転換を進めることが極めて重要だと指摘。徹底した省エネ推進を強化するとともに、産業社会構造を変革し二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンエネルギー中心への転換を示している。
また気候変動がますます切迫したシグナルを発して〝危機〟があわらになっているにもかかわらず、情報通信技術(ICT)利活用が進み通信データ量が増大する中で、データセンターなどに求められる電力需要も中長期的に増加に転じるとのデータを示した。産業界の省エネ努力で減少するとしていたものから大きく軌道修正しており、膨大なデータ処理を行う人工知能(AI)の普及により、今後の電力消費量増大は避けられないトレンドとなる。
こうした背景から、政府は脱炭素化と市場創出を同時に両立するための重点領域を定め、集中投資する方針を打ち出した。ペロブスカイト太陽電池、洋上風力発電、水素などの支援を分厚く拡充する。
GXに官民で150兆円投資
また政府がそれに先立ち、2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」では、官民合計で150兆円の巨額投資を掲げた。26年に始まるとされるカーボンプライシングの実現などとともに、徹底した省エネ推進が打ち出された。
省エネ補助金については、複数年の投資計画に切れ目なく対応できるメニューを拡充。サプライチェーン上の中小企業まで含めた細かな脱炭素化ニーズを顕在化させ、支援を積極化する。スタートアップの先進的な脱炭素技術を、積極的に活用できる仕組みの構築も期待される。
ある産業機器メーカーは「歩みの遅かった日本でもここへきてようやく、高付加価値型の省エネ製品を求めるタイミングが来た」と強調する。省エネ効果が従来以上のグレード上位機種の拡販を本格化させており、顧客の反応も積極的になっているという。
デフレ経済からインフレへと節目が変わる中で切迫する気候危機。飛躍的な省エネ化や再エネ導入にアクセルを全開で踏む傾向は一層、より顕著になっていくとみられる。
自治体職員 水素利活用学ぶ
日刊工業新聞社と日本能率協会コンサルティング(東京都港区)は、水素の利活用に向けた自治体の施策立案を促す勉強会を初開催した。
6月5―7日に愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開かれたスマートシティー(次世代環境都市)関連の産業展示会「AXIA EXPO2024」の併催企画として5、6の両日実施。全国の自治体職員53人が参加した。
勉強会はセミナーや出展ブースツアーなどで構成。セミナーでは近畿経済産業局カーボンニュートラル推進室の織田貴士室長が水素の産業化のポイントや現状などについて解説。北海道ゼロカーボン産業課の名兒耶(なごや)大輝主幹は、道が地球温暖化対策として進める「ゼロカーボン北海道」の取り組みについて話した。ツアーでは水素の社会実装に向けた先進プロジェクトなどを紹介。出展者との情報交換も活発に行われた。
参加者からは「国の政策や他県の取り組みや悩みを聞くことができ、一人で展示会に来た場合と比べ得られる情報量が格段に多かった」「市町村レベルですぐに、かつ継続的に取り組める施策や運用の方法についても知りたい」といった声が聞かれた。