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地球環境
4月29、30日にイタリア・トリノで主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境大臣会合が開催された。地球は気候変動、生物多様性の損失、汚染という三つの世界的危機に直面していることを明らかにした。これを踏まえ、初めて石炭火力発電の段階的廃止のための年限明記や、パリ協定が定める透明性報告書の提出目標が採択された。世界の再生可能エネルギーによる発電量3倍を目指すため蓄電システムやスマートグリッドなどの導入拡大を確認した。そうした中、日本ではPPA(電力販売契約)方式をはじめとした再生エネの普及拡大や、水素のサプライチェーン(供給網)確立に向けた取り組みが加速している。また、教育機関でのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けた研究や環境への取り組みも進んでいる。地域で環境・社会・経済の課題を解決する〝ローカルSDGs〟も広がりつつあり、各自が持続可能な社会を実現するために挑戦を続けている。
「資源プラ」の未来創る
【執筆】
資源プラ協会代表理事 犬飼 健太郎
資源プラ協会理事(技術担当) 本堀 雷太
【資源プラ協会】資源プラ協会は2018年に設立した団体で「資源プラ」の普及と高品質なリサイクルプラスチックの推進を目指す。環境省の基準策定にも関与し、認定制度やセミナーを通じて循環型社会の実現と地球環境の改善に貢献する。
持続的な事業構築
資源プラ協会は「国内に豊富に存在する〝プラスチック廃棄物という資源〟を資源循環の輪に乗せて社会のために役立てる」を目的に、安定かつ持続的なリサイクルビジネスモデルの構築に挑んできた。その答えの一つが「資源プラ」という取り組みである。現在、資源プラは国内のみならずグローバルな資源循環の輪を形成し、プラスチックリサイクルをリードしている。
なぜ今「資源プラ」なのか?
2022年4月から施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)」では、事業者、消費者、国、地方自治体の役割(責任)が明確化された。おのおのの立場でプラスチックの使用の合理化や、リサイクルを含めた適切な処理・処分に積極的に取り組むことが求められている。
これを受け、資源プラ協会は安定で持続的なプラスチックリサイクルビジネスモデルの一つとして「資源プラ」(資源プラスチック)を提唱し、普及に努めている。
資源プラの仕組みと本質
当協会ではプラスチック廃棄物の中間処理物の品質を高め、再生プラスチック原料の品質をも高めることを追求している。マテリアルリサイクルのフローで川上に位置する前処理・中間処理で、目的とする素材のみを適切に分別し素材の単一化の徹底を図る。また、品質低下の要因となる異物混入を極力排除し、良質な基材を得る。
この基材はさらなる異物対策が不要で、川下の再生処理工程に直接投入が可能。その結果、高品質で市場流通性に優れた再生プラスチック原料が効率的に製造される。
このように基材の品質を前処理・中間処理の段階で向上させているため、再生処理業者への過剰な負担を避けることができる。
高品質な基材を製造する前処理・中間処理と、再生プラスチック原料を製造する再生処理の役割分担を明確化することで、マテリアルリサイクルのシステム全体の効率化に貢献している。
資源プラの「潔いリサイクル」
安定かつ持続的なリサイクルビジネスモデルを構築するためには、ビジネスモデルを客観的かつ合理的に判断する必要がある。この判断の基準となるのが「潔さ」という視点である。
当協会は潔さの定義をリサイクル事業の安定性と持続性を確立するために経済的な合理性に基づいて事業の可能性を主体的に判断している。リサイクルを担う技術要素を自律的かつ自立的に運用するための技術的な妥当性を確保するために不可欠な判断基準としている。
資源プラのビジネスモデルは無理に背伸びをせず、身の丈に合ったリサイクル、つまり「潔いリサイクル」とを基に、事業を営み続けることを狙いとしている。この潔いリサイクルに裏打ちされた資源プラの取り組みが、発泡スチロールのマテリアルリサイクルシステム「J-EPS recycling」である。
資源プラの取り組み「J-EPS recycling」
J-EPS recyclingのシステムでは、卸売市場などで発生した廃棄発泡スチロールを減容した後ポリスチレン(PS)のインゴットに成形する。このインゴットを基材として再生PS原料を製造している。この取り組みは、プラスチックリサイクルの先駆的成功事例として数十年にわたり資源循環の輪を維持してきた。
発泡スチロールはかさが高く、可能な限り発生源に近い場所で減容処理を施す必要がある。オンサイト処理と呼ばれる他素材との分別や異物の除去を徹底することで、純粋なPSのインゴット製造に成功した。
PSに単一化されたインゴットは有価物として市場取引を経て、そのまま再生処理に供される。移動や保管の過程で周辺環境への環境負荷を与える恐れがなく「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(バーゼル条約)」にも適合した輸出商材として税関当局からも理解を得ている。
現在、J-EPS recyclingで製造されたインゴットは、国内だけでなく世界各地で再生原料の基材として利用されている。わが国における重要な戦略的輸出資源として外貨獲得に貢献している。
広がる資源プラ協会の挑戦
当協会は資源プラを中心にさまざまな取り組みを展開し、プラスチックリサイクルの未来を作る挑戦を続けている。詳細は当協会のホームページをご覧いただきたい。