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第54回機械工業デザイン賞 IDEA
日本デザイン振興会賞/日本デザイン学会賞
日本デザイン振興会賞
【ミツトヨ】CNC画像測定機 QUICK VISION Pro
画像測定機は、半導体、電子デバイス業界、自動車産業、医療機器、精密機械部品産業など幅広い分野においてニーズが顕在する。開発のコンセプトは、量産体制強化、生産性向上や製品品質向上(全数検査など)を目的とした測定時間短縮・スループット向上の要求に対して、測定時間を約40%短縮し、高速化を目指す非接触CNC画像測定機で応えることだ。
装置は生産性向上に寄与するハイスループット画像測定を実現する基本性能を持つ。その高速化性能は、ストロボ瞬停撮像により測定ステージの静止判定時間を35%から45%短縮する「新画像測定機能ストロボスナップ」や、ノンストップ高速連続測定を可能とする独自の「ストリーム新機能」(オプション)、さらにレーザー照射のオートフォーカスにより、XY軸を移動しながら瞬時にピントが合う位置に定位するトラッキングオートフォーカス「TAF」のZ軸自動追従測定機能などの搭載で測定時間短縮を実現している。
また、鏡面から粗面までさまざまなワークの高精度高さ測定に対応する「新高性能画像オートフォーカス」や、新規の白色・カラーLEDのリング照明位置を移動するための駆動部高速化、エッジコントラストを強調する機能などで、測定速度を30%アップする性能・品質を持つ。豊富なマルチセンサーや追加機能によりさまざまな測定用途に対応する。
操作は、「QVリモートボックス」で測定位置をナビゲートする。カラーLEDの活用、ゴミ/バリ/欠けなどの欠陥検査が可能なソフトウエアの利便性向上で、高いユーザビリティー性に対応する。また測定ヘッドにはCMOSデジタルカメラを搭載し、ズーム変倍域の拡大によって測定性能を向上させている。
装置はパソコンモニタリングと予防保全が可能なIoTスマートファクトリー対応。温度補正機能などを搭載し、広範囲の温度条件下で精度を保証する設置環境への配慮がある。また電装基板の統廃合や部品点数を削減した設計で省資源・小電力化を図る。
据え置き・門型の本製品は、測定機にふさわしい姿はいかにあるべきかを追求し、シンプルで洗練された外観実現に注力している。測定器本体はゆるやかな前面ラウンド形状+斜めのスラント形状で圧迫感を解消する測定者配慮の造形を示す。
仕上がり完成度を重視して、外観カバーは外観カバーは板金など各種製造方法に合わせて無理なく作れる造形とした。
上質な板金加工でデッドスペース最小化のシンプルかつ洗練されたデザインの装置は、設置台に測定器を乗せて配置し、テーブル上のリモートボックス、モニター、パソコンにより構成される。
競合他社からのシェア挽回を目指した今回の開発は、新開発のストロボスナップ、ストリーム機能、TAFなどにより測定時間短縮を実現しており、導入先における生産性向上や量産体制構築に大きく貢献していくことが期待できる。
画像測定器に求められるハイスループット画像測定性能を大幅に拡大、圧倒的な各種機能により、多様な測定要求に対応するデザインは、画像測定機としての明確なポジションを示すように映る。
日本デザイン学会賞
【高松機械工業】CNC2スピンドル2スライド精密旋盤 XWG-3
国連の持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルへの対応が求められる社会情勢を背景として、工作機械には短時間のワーク加工、さらには、単位面積当たりの生産性向上に資する省スペース化が強く求められている。本製品は①非加工時間を短縮する主軸ユニットの加減速時間の短縮②ローディングタイム短縮のローダーーについて検討が行われ、2スピンドル2スライド・くし刃型CNC精密旋盤に照準を合わせて開発された。
この装置は主軸に5・5キロ/3・7キロワット高効率同期モーターをビルトインし、主軸最高回転数毎分8000回転の2スピンドル仕様。高出力かつ低発熱の高生産主軸ユニットを搭載。またビルトイン主軸の振動抑制と冷却タンク内設ベッドの熱変形抑制で、誤差5マイクロメートル以下の安定した加工精度を保証し、不良ワークを削減する機能を持つ。
一方、アルミ合金製スライド刃物ユニットは、取り付け本数4×2台で8本の動作削減により高速・高生産性を実現している。さらに、アルミ合金製で軽量化した新型「MGローダ」の内設は、高速・高精度・高ローディングタイム2秒を切る工作物搬送を可能としている。
制御盤には、視認性に優れた19インチタッチパネルを採用、2画面マルチ表示で分かりやすさにこだわるとともに、ヒンジ回転による適正ポジションで操作性への配慮がある。また、低重心構造で上部跳ね上げ構造のフロントドアは、段取り性・作業性が良い。
製品は、低発熱モーターによって冷却装置の簡素化できたことから消費電力を削減。また、本体とローダーのNC制御システム一本化により、待機時の消費電力を10%削減。さらに、回生エネルギーの有効活用などで省エネルギーに貢献する。設置面積は2・75平方メートルで省スペースに対応するなど、経済性に優れるコンパクトマシンである。
ベッドの上面に主軸移動軸、垂直な前面に刃物移動軸を取り付ける構造とすることで機械幅を小さくし、さらにベッド下部に冷却タンクを設け、コンパクト省スペース化に寄与する造形とした。マシンフロントは、上部が後方にスラントする跳ね上げ式ドアを特徴的に配する。作業者に圧迫感を与えず、シルバーとブラックのカラーコンビネーションで新規性と精密感をデザインしている。
しかしながら、台形をパターンレイアウトするフェースデザインは、動勢はあっても精度感にかけるオーバーな平面処理であり、スラントしつつ開閉するドアは垂直性にこだわる方が好ましく思える。機種名・ブランド名の切り文字貼り付けなど、グラフィック処理にも一考の余地がある。
本製品は同社XWシリーズラインアップにおける「ハイスピード・高精度加工機」として位置づけられている。しかしながら、その外観は信頼感や高精度感を訴求するほかの6機種とは異なる造形処理でデザインされており、シリーズ全体の同一感を損なう結果を招いている。「ローダーシステム内蔵、オペレーティング・システム一新」の新製品ということであるが、ブランドイメージはどのようにして構築し得るのか、開発担当者全員の意識改革に期待したい。
FOCUS ON IT! ― 現物審査で注目されたデザイン技術開発
冷却液用タンクをベッド内に収容
技術部研究開発課 係長 橋場 勝英
本製品は高い生産性と精度を実現させるために主軸ユニットの内部にモーターを組み込んだビルトインモータースピンドルを採用。主軸の加減速時間を大幅に短縮するとともに高い加工精度を実現したCNC旋盤だ。主軸内部に組み込まれたモーターの発熱を取り除くために冷却液を主軸内部に循環させる必要があり、冷却液は板金製のタンクを機械の傍らに配置することが一般的であった。しかし、機械幅1000ミリメートルの省スペース機をコンセプトとしており、冷却用のタンクを設置するスペースを設けるのは難しかった。
タンクの設置場所に悩んでいた時に、ベッド(工作機械のベースの鋳物部品)内部に冷却液用のタンク部を設けることで設置スペースを削減でき、同時に、ベッド内部を冷却液で満たして熱容量を増やすことで熱変形を抑えられるのではないかと考えついた。
ベッドは鋳物で作られている。ベッド内部に冷却液用のタンク部を設けるためには適切なリブ配置や鋳物製作工程での砂抜き作業の容易さが重要となるため、木型・鋳物製作会社と打ち合わせを重ねながらタンク部の構造検討を行った。タンク部以外にも冷却液循環用ポンプや給水口、排水口などの配置にも悩み、いかにこれらをコンパクトな機械に配置するかというところに苦労した。
開発当初はタンク内の空気が抜けきらずにたまってしまい冷却液がうまく循環できないトラブルもあったが、配管経路やエア抜き回路を見直して、ベッドの剛性を確保しつつ、内部に90リットルの大型タンクを設けることに成功した。ベッド内部に冷却液のタンク部を設けたことで、当初の狙い通り熱変形を抑えることができて、1日のワーク加工寸法の変化が直径5マイクロメートル以下という高精度を実現できた。
この技術は高生産性・省スペース・高精度をセールスポイントとするXWG-3の基盤技術の一つとなった。今後は世界中で製品を使用していただけるようにPR活動にも力を入れていきたい。