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第54回機械工業デザイン賞 IDEA
日本電機工業会賞/日本ロボット工業会賞
日本電機工業会賞
【マスダック】トンネルオーブンエコベイク STO-9009GV1
ギフトや流通菓子の製造においては、おいしく焼き上げる焼成工程の実現が希求されている。本製品の目指すところは、従来機の課題や生産性の向上、品質・安全性に関わる菓子製造現場での課題、さらに歩留まり改善、省人化、CO2排出削減などの環境問題を受けて、焼成品質・操作性・安全性の向上を開発の基本コンセプトキーに据えるとともに、省エネ、省スペースを実現すること。断熱性・気密性の向上、操作パネルの操作性改善、新型3セクションバーナーの開発など、エコロジー&エコノミーの新型トンネルオーブンとして開発された。
オーブンは高性能断熱材にセラミックウールを採用し、断熱層厚さ150ミリメートルのスリム化にもかかわらず、断熱性と気密性を強化した炉体構造となっている。そこに、上炎バーナー上に装備される遠赤外線発生プレートの形状と配置の工夫、またオプションの焼きムラや温度分布の改善を意図した3セクションバーナーの改良と焼き時間短縮を実現する過熱蒸気発生ユニット(ヒートプラス)を採用した。
これらにより熱効率を向上させ、面積生産性を4・6%アップ、ランニングコスト低減とCO2排出削減を実現し、省エネ化に貢献する。
焼成ガスバーナーは無段階で自動調整、加えて四つの焼成パターンを用意し、最適な温度での焼成品質を保証する。
熱源はガス式/電気式/ガス式+電気式/ガス式+過熱蒸気の4タイプがある。しかしながら、前述のオプション二つの改良点は、本製品の核心を担う要素技術であり、優れた技術開発に対する営業・販売企画のあり方、ありようは再考されるべきである。
パネル操作盤は、安定した着火を維持できるバーナーの開発により、バーナーパターンを6から4に削減して設定を容易にするなど、熟練技能を不要としながら、安定した焼成品質が得られるようにする操作性にこだわりがみられる。また、リモート・メンテナンス・システム搭載やマニュアル内蔵でスピーディーにトラブルを復旧する保守性への対応がある。
操作パネル上に炉内状態を確認できるウェブカメラ、設定や動画で製品状態を確認する無線式パネルなどのオプションにより、操作性をさらに向上させ業務効率化に寄与する。
焼成時の使用エネルギーは従来比で20-26%の省エネを実現。オーブン立ち上げ時間を従来比で約半分に短縮し経済性に優れる。
標準仕様で炉幅は900ミリメートル、炉長6-20ミリメートルのトンネル型デザインは、サイド3箇所にのぞき窓、出口付近に操作盤、上部に3基の排気ファンを装備する。
シンプルな造形は、清掃しやすく異物混入リスクを低減する。断熱層のスリム化により炉体幅を変えずに炉内幅を拡大した構造は、面積生産性を向上させるとともに、外装カバー重量を約3分の2へと軽量化することに寄与する。
製品は、省エネ化でランニングコスト低減と面積生産性アップを実現し、熟練技術者不要でも焼成品質を安定保証、労働生産性を向上させる。また、清掃しやすく異物混入リスクを低減、迅速なトラブル復旧で保守性に対応するが、ユーザーオリエンテッドな開発視点は必須の条件である。
日本ロボット工業会賞
【川崎重工業】屋内配送用サービスロボットFORRO
川崎重工業の「グループビジョン2030」に制定された「安全リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」という注力フィールドの中において、本製品の開発はロジスティック×モビリティーに遠隔・無人化の技術を加える新しいソリーションの提供に照準を定めている。人手不足・労働人口減少などの社会課題が顕在する病院内展開例として、自動配送サービスロボットで応える。
ロボットは広範囲をセンシングし、自己位置を推定しながら3Dの環境地図を作製して走行するSLAM方式での自律走行機能を搭載し、人が多い日中の混雑時条件下においても高い安全走行で24時間365日稼働、タスクとタスクの間に自動充電し稼働時間を最大化、45分の高速充電で6時間連続稼働の性能を持つ。
また、エレベーター利用時においては、エレベーター・セキュリティードアとの連携機能を有し、人の手を介さず地点間を走行する。人との相乗り機能、途中階降車/自動再呼び出し機能を搭載する。
通信機能は4G/LTE通信を使用することで、施設側専用Wi―Fi敷設やマーカー設置を不要とする。複数の目的地を経由するなど自由度の高い配送計画や定時便の設定、呼び出し機能など業務に合わせた運用を可能としている。
積載能力は容量100リットル、最大重量30キログラムの積載でセキュリティーロック付き。自重は70キログラム。環境に合わせた速度可変機能を有し、走行最高速度は時速4キロメートル。
製品は簡略化したインターフェースで誰でも使える操作性を有している。自律走行性能で障害物との接触は99%生じなく、混雑時は徐行するなど安全走行を実現している。また、遠隔サポートで監視体制の提供も可能。導入しやすいサブスクリプションでデリバリーロボットとしてのサービスを提供し、初期導入費の抑制と、導入の迅速化に対応する。
しかしながら、現時点において、医療環境内使用の課題とも言える検体・薬剤などの冷蔵配送が先送りされている。積載能力とセキュリティーロック付きのみであり、真に安心・安全な自動搬送という点では課題が残る。
本製品は病院内での使用を想定し、曲面を多用し親近感のある外観デザインとしている。基本仕様は人体を模して、ボディー上部(ヘッド)に回転する3個のLiDARセンサー(光による検知・測距)を搭載し、フェース部にはステータスランプ、タッチパネル、一時停止スイッチを備える。ショルダー部に4個の遠隔監視カメラと非常停止スイッチ、荷室ボディーにはICカードリーダー、ベース部に4個のメカナムホイールおよび自動充電プラグが配され、ABS樹脂によりカバリングされる。
ロボットは存在を示すライティングや音声機能を持つが、稼働中のモニターに表示される表情は親和性にこだわるあまり、観念的すぎる。
本製品はSLAM方式による自律走行機能を有する。また、LTE通信を使用することで、施設側専用Wi-Fi敷設やマーカー設置を不要とし、初期導入費の抑制と導入速化が可能である。病院内配送用自動サービスロボットソリューションの展開例といえる。