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第54回機械工業デザイン賞 IDEA
最優秀賞(経済産業大臣賞)/アマダ
サーボベンディングマシン EGBー1303ATCe
自動化が進みにくい曲げ加工において①加工検討②段取り③試し曲げ④実加工―の作業プロセスで生じるさまざまな加工実態(課題)の解決とともに、変種変量生産・スキルレス・省力化などのニーズがある。この製品は誰でも簡単に曲げ加工できる〝人と環境に配慮した次世代型ベンディングマシン〟を目指して開発された。
製品は「4軸独立電動サーボシステム」を採用し、クラウニング機構左右2軸とプレス左右2軸の合計4軸の独立制御で、加工対象物(ワーク)の両端と中央での曲げ角度の通り精度を最適にコントロール。小容量化のサーボモーターは高生産性・高精度を保証、さらにクラッチ機構を内蔵し高速低トルク/低速高トルクを1モーターで実現し、生産性を15%向上。電動クラウニングは加圧中に生じるフレームや上部テーブルのたわみに対し、下部テーブルをたわませ補正する機能で、長尺製品の通り精度を向上させ、試し曲げ作業を大幅削減する。加圧能力1300キロニュートン。自動金型交換装置(ATC)を搭載する。
最新の数値制御(NC)装置「AMNC 4ie」は、21・5インチディスプレーで視認性を向上させ、各種オプション装置と「タブレットHMI」により曲げ加工の「スマートオペレーション」を実現する。ソフトウエア「VPSS 4ie BEND」は①シミュレーションと加工ガイダンス②突き当ての難しさを軽減するY3軸バックゲージと突き当てモニター③曲げ角度センサーと最終角度表示―などで操作の分かりやすさを追求。内蔵カメラによる顔認証機能、29カ国の多言語表示、8カ国対応の音声操作など多様な条件に対応する。タブレットHMIとフットペダルのオペレーター追従、高さ・傾斜・回転の調整が可能な制御盤など安全な操作にこだわる。
ATCは金型搭載量30%アップ。重い金型の自動交換が可能で、金型交換中はシャッターが自動開閉し挟まれを防止するセーフティーシューや、手指挟まれ防止のレーザー式安全装置「AS-01」を搭載し、安全性と汎用性を保証する。新サーボドライブシステムによる電動化はCO2排出量を最大220%削減。オイル交換・廃棄が不要でメンテナンスコストを低減し、保守性を確保する。アイドリングストップ機能で待機電力50%以上の削減を実現し、経済性を大幅に向上させた。
スマートオペレーションモデルの外観は、ベース部フレームや下部テーブルに黒、作業部中央にシルバー、動作部カバーにアマダレッドを配する明確な色彩構成。作業性を考慮し、マシン前面はフラット化。カバーも直線的な構成とし、主要なエッジには曲線を用い安全性にこだわるとともに、両側の新サーボ・ドライブ・システムのカバーは曲面を用い、力動感のある革新性をデザインしている。
この製品はサーボドライブシステムとスマートオペレーションで未来の曲げ加工を切り開く。人と環境に配慮したサーボベンディングマシンの開発に際して、初心者と熟練者の作業を徹底比較し、3年半に及ぶ分析・フィージビリティー・要素開発・効果検討プロセスを基盤としており、ATCを含めトータルとして完成度の高い仕上がりを見せ、高品位製品を実現している。
開発担当者に聞く/アマダ 常務執行役員 山内 和幸 氏
未習熟者も迷わず作業 3点突き当て・ARカギ
―板状の加工対象物(ワーク)を加工機で曲げながら目的の形を成形する板金加工は人手作業が伴います。
「変種変量生産の需要が高まり、金型交換など段取り作業が増えています。熟練技能者が作業を教えるのが一般的ですが、ワークを加工する順番を決め、曲げたい位置にワークを合わせるなど工程も多く、簡単に覚えられる技能ではありません。一方、労働力不足で未経験者を採用する機会が増え、技能の習熟にかかる時間を何とかしてほしいとの要望が強まっていました」
―2020年に開発を本格化しました。
「開発の一環で、ユーザーの工場で熟練技能者と若手作業者(オペレーター)に同じ作業をしてもらい撮影させていただきました。熟練者は段取りを含め一連の作業が染みついているが、若手は考えながら作業をしているので、無駄や繰り返しが多いことが分かってきました。そこで迷うことなく作業できるようなガイダンスや支援機能を開発することにしました」
―正確な位置や角度でワークを曲げるには経験が必要です。
「板金加工は加工機に補助装置『バックゲージ(突き当て)』を設置し、ワークを曲げたい位置に固定して成形します。従来から加工プログラムに応じ自動で突き当てを配置する機能はありますが、二つの突き当てで固定するためワークが左右にずれる余地がありました。そのため三つの突き当てを前後左右に自動配置する機能『Y3軸バックゲージ』を開発。3点でワークを固定するため、正確な位置合わせが短時間で可能になりました」
―ワークの向きも重要になります。
「金型に遮られ、のぞき込むように突き当てる動きも目に付きました。そこで機内カメラの映像をオペレーターの視点に合わせて俯瞰するように補正し、眼前のタブレット端末に表示する機能を開発。合わせて拡張現実(AR)でワークの形状と固定する位置を赤く表示し、モニター越しにワークを重ねれば、向きの間違いを防げるようにしました」
―曲げた角度の計測も技能が必要です。
「金型でワークを曲げた状態と、金型を離すとワークが僅かに戻るスプリングバックした状態を、接触式の曲げ角度センサーで自動計測して表示する機能も搭載しました。計測の方法も工夫し、計測や加工にかかる時間を従来の約3分の1に短縮しました」
―反響はいかがですか。
「特にY3軸バックゲージの評価は高いですが、不良率が下がったなど定量的なデータまでは取れていません。既に追加の要望もいただいていますので、次の開発に生かしていきたいと思います」