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第54回機械工業デザイン賞 IDEA
最優秀賞(経済産業大臣賞)/JUKI
高速フレキシブルマウンタ LX-8
開発は、省スペースを最大限に有効活用した高い面積生産性、また完全独立した2ヘッド対応のバッファーステーションにより、待ち時間のタクトロスを削減、さらに新構造の画像認識やレーザー認識技術の改良などにより高精度、時間短縮を実現する超高速生産フレキシブルマウンターに照準する。新開発の「プラネットヘッドP20S」と汎用性の高い「匠ヘッド」の組み合わせによる超フレキシブル生産や、クラス最多のフィーダー装着数による段取り時間の短縮、部品搭載1点当りの消費電力20%削減、システムソフト「JaNets」を介したマウンター起因エラーの迅速なつぶし込みなどを、大型スマートパネルに集約し使いやすさを追求する。
製品は、ヘッド交換可能なZA軸の接続構造を新開発、高速搭載する「プラネットヘッドP20S」と汎用性の高い「匠ヘッド」という独自の2種ヘッド対応で独創性・優位性を誇る。ヘッド移動のXYユニットは小型化し最高タクトを2倍にアップ。さらに、部品センタリング機能、画像認識、レーザー認識の処理技術により不良基板を未然に防止し、クラス最高水準の部品搭載スピードと安定した搭載品質を支える。部品搭載精度はプラスマイナス35マイクロメートル、部品搭載速度(搭載タクト)はクラス最高水準10万5000CPH(1時間の部品搭載数)、面積生産性は1平方メートル当たり3万5900CPH。フィーダー部品装着数は同社従来機の112本から43%増のクラス最多160本を搭載し、段取り時間の大幅短縮、生産準備の効率化を実現する。
チルト機構採用の制御部は、物理スイッチや画面操作をマシン中央上部に集約し基本動線を固定化。15・6インチ縦型大型スマートパネルは状態表示/操作・入力/ツール選択の三つをゾーニングし、巧みな画像操作環境(GUI)デザインで操作性にこだわる。また装置全ての開閉カバーは無段階ストップ機構により内部オペレーションエリアを拡張するなど、ヒューマン・センタード・デザインに基づく操作性・作業性に配慮している。
誤操作・危険箇所の未然回避で安全性を確保、メンテナンスの向上とトラブル時のダウンタイムを低減するとともに、省エネ化、拡張性で経済性に寄与する。
フロントの20度スラント形状により、筐体(きょうたい)体積と装置高さを最小化。軽量化により作業時の圧迫感を軽減する人との協働を意識した優しいデザインは、水平性を強調し視覚的に重心を下げる。アクリル窓の開閉カバーを装置側面まで延長させる構造とし、両サイドの固定壁を排除して拡張性・連続性を意識した造形としている。特に大型スマートパネルのGUIデザインは秀逸で、オペレーターオリエンテッドなインターフェースに造系化している。
クラス最高レベルの性能を実現した本製品においては、高速フレキシブルマウンターという新カテゴリーを価値創造し、モノづくりに革新を興すと言える。生産性の向上のみならず、省人化、脱技能化、環境配慮といった社会的課題への解決に向けても積極的に取り組み、生産ラインのスマートソリューションで、超リアルタイム生産を力強く牽引(けんいん)し、現場をサポートする。
開発担当者に聞く/JUKIオートメーションシステムズ 実装機器開発部 部長 東 盛夫 氏
統合2社のハード 融合 2系統の操作環境 一新
―開発に至った経緯を教えてください。
「マウンターが主力の産業装置事業は、2014年にソニーの実装機器・関連事業と事業統合しました。『LX-8』の開発の起点はハードとソフトの両面でJUKIとソニーの特徴を融合することでした。電子部品を吸着する主要機構のヘッドですが、1台のマウンターでJUKIのインラインヘッドとソニーのロータリーヘッドの両方に対応できるようになったのは画期的です。単体機の中で、2種類のヘッドを交換できるようになりました。変種変量生産など生産品目に応じて最適な生産ラインを構築できます」
―開発する上で、特に苦労された点はどこですか。
「二つのヘッドを左右に並列配置したことで、装置の土台になるベースフレームの強度を出すのに苦労しました。左右のヘッドのベースは力を受けるとねじれの動きが発生します。部品搭載時にずれが起こらないようにするため、ベースの強度の確保が必要でした。3次元(3D)シミュレーションの解析と実機での評価に差異が生じ、鋳物の変更などベースの作り直しに1年を要しました」
―どのように乗り越えましたか。
「最初は3Dシミュレーションを簡略化し過ぎていました。部品を細かくすればするほどシミュレーションにも時間がかかることや、どこまで3Dで作り込めば実機での評価と合うかなどが分かりました。ベースを作り直すことにはなりましたが、古いベースを活用することでソフトウエアを作り込むことができました。1年を無駄にすることなくすみました」
―ソフトの開発面での苦労はありますか。
「マウンター開発では、ソフトの工数が全体の約7割を占めます。ソフト開発が一番厳しくボトルネックでした。ヘッド同様に、ソフトもJUKIとソニーで異なっていたため一から作り直しました。オペレーターの操作画面など、2系統あった画像操作環境(GUI)はゼロから見直し、デザインを刷新しました。2系統を維持したままでは、オペレーターの教育にも時間がかかります。今回の刷新は人手不足への対応にもつながります」
―今後の開発目標は何ですか。
「『LX-8』は新製品を開発する上でのベースになります。従来、各機種ごとに担当者が付き開発にあたっていました。今後は担当者以外でも開発しやすくなることに加え、さまざまな機種にも派生しやすくなります」