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第54回機械工業デザイン賞 IDEA
日本商工会議所会頭賞
【タケダ機械】自動測長付 孔あけ切断複合機 CBF-4020Ⅱ-M
鉄骨造の柱・梁(はり)材、鉄塔や立体駐車場の構造材、建築物の胴縁をはじめとして、構造材にはH形鋼、チャンネル材、アングル材、角型鋼管が多用されている。本装置の開発は、複雑形状への対応力や迅速性が求められる形鋼加工において、最新のコンピューター数値制御(CNC)装置を搭載した自動測長機能付き孔(あな)あけ・切断複合機で、ボーダーレスな操作容易性にこだわるフレンドリーオペレーションにより、生産加工時間の短縮のみならず、機械の工程集約・自動化を通じた省エネを実現し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への寄与をめざす。
開発機はNC装置を搭載する。高速スピンドルモーターおよびセンタースルースピンドルを採用し、超硬ドリルの使用が可能。さらに、ドリル加工では対応できない大径穴、長孔、トラック加工などのミーリング加工機能を新たに付加し、多様化する加工への対応性能を備える。また自動測長機能を持つマシンは、ミーリング加工時にバイス軸とグリッパー軸を同期し、形綱の固定動作回数を軽減することでサイクルタイムを短縮し、搬入→3軸同時孔あけ→切断→搬出という加工前後のスケジューリング性能を向上させている。
さらに、自動工具交換装置(ATC)は、搭載本数を4本から10本に増加し、高速な孔あけに対応する。加えて、電動サーボ制御の高精度ギアを採用した高剛性の新鋸刃ミッションは、切断速度を150%にアップするとともに、切断時の速度可変とウェブ振動抑制で、騒音低減に加え鋸刃寿命を向上させている。インクジェットプリンターよる印字機能や遠隔地からのリモート操作、アフターサービスなどのケア機能を新規に搭載する。
主軸回転速度毎分3000回転、鋼材長最大12・5メートル、自動加工範囲400ミリ×200ミリメートル、鋸刃回転速度毎分41-227回転、移動速度毎分8・0メートル。
操作盤は、工作機械用CNC装置を搭載、長孔、輪郭孔などのミーリング加工を容易に使用できるパターン入力のインターフェースで複合加工の操作性に対応。ヒンジ可動式15インチカラータッチパネルで段取り時の作業性を向上させている。また段取りエリアには、インターロック機能で機械稼働が停止する安全性第一の対応がある。
エア機器を一カ所に集約したマシンは、オイルミスト残留の確認、容易な給油などメンテナンス性を向上させている。
機械は段差や凹凸を軽減しゲート型の造形をシンボリックにデザインするが、マシンフェースに比べ、背面処理や搬入・搬出ローダーに安全性対応のためのデザインが不足している。特にフレンドリーオペレーションをうたうのであれば、造形(モノ)のみならず造系(コト)にもこだわるべきである。
さまざまな形鋼への孔あけ、ドリルマーキング、タップ加工、ミーリング加工から切断まで、CNC装置の強みである多系統多軸制御をフルに生かした複合機は、全自動制御で柔軟な加工を可能とした。新たにバイス軸を付加し、比較的安価にミーリング加工を実現している。造形および造系処理にさらなる改善を講じれば、形鋼加工機のデファクトスタンダードとなり得る。
【ユーザック】ヒューム用集塵機 COSMO-X
レーザー・プラズマ加工や溶接作業、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ファインセラミックスなどの切削加工においては、発生する粉塵・ガスなどによる作業環境の汚染や、作業者の健康被害を誘発する原因物質が問題視される。本製品はこれらの有害物質を取り除き、環境汚染や作業者の健康被害を未然に防止する目的で開発されたヒューム用集塵機だ。
開発目標として、①作業負荷低減と健康被害根絶②フィルター交換にかかるコスト削減―などをテーマとして掲げ、同社独自のフィルター清掃機構「マッハウェイブ」を搭載している。
「マッハウェイブ」は、衝撃波が伝播するスピードを利用した独自のフィルタークリーニングシステム。フィルター表面に付着したフレーク状のヒューム粉塵を20分ごとの自動動作で確実に払い落とす機能・性能を誇る。これにより集塵機の吸引力を新品状態の90%程度まで回復させ、フィルター効果を長時間持続するとともに、フィルター交換寿命を5倍以上に伸ばす性能を持つ。
システムは、フィルター室に衝撃波を発射する圧力調整弁と、連動して作動するダスト遮断弁からなるフィルターシリンダーを搭載する。集塵運転中はフィルター室とダストボックスを遮断して粉塵の巻き上げを防ぎ、集塵効率を大幅に向上させている。
運転騒音と装置作動音を大幅に低減し、スマートモード時は70デシベル。エア消費量は標準的な集塵機の100分の1以下で経済性に寄与する。
操作盤はフルカラー液晶タッチパネルの単純な集中操作であるが、クリーニングシステムと連動するGUIへのこだわりがある。フィルターはCOSMO-X3で9本、COSMO-X5で12本の最高性能のフッ素樹脂(PTFE)フィルターを搭載し、0・3マイクロメートルの粉塵をほぼ100%捕集。有害なヒュームをほとんど吸着する。
ダストボックスの取り出しは、タッチパネルのスイッチOFFでユニットを引き出すスマート操作により、作業者の吸引リスクは低く、快適環境に寄与する。また、温度センサーと排気センサーを装備し、火災などの異常発生時は排気シャッターを閉じるなど安全性に対応する。
装置は、下部にダストボックス、中間に操作盤/フィルター室、上部にモーター類を内蔵するボックスタイプ。本体部とカバー部を2重構造とし、防音材サンドイッチ構造の騒音対策がみられる。
装置外観はプレーンな平面の白色化粧パネルでカバリングする。COSMOシリーズのフラッグシップ機という開発は、技術的に達成された感はあるが、造形に関しては観念的であり、外観のラフなイメージチェンジ・パッケージデザインにとどまる。環境機器というすみ分けから、マシンのコンパクト化や環境美化に配慮するなどの検討が期待される。
製品は世界初の衝撃波の作用を利用した「マッハウェイブ」によるフィルタークリーニングシステムによって、フィルターを交換しなくても5年以上変わらない吸引性能を維持する。ヒューム粉塵を吸引してフレーク状で捕集し、90%以上を払い落とす性能があり、ヒューム用集塵機としての保守性・経済性に優れる。
FOCUS ON IT! ― 現物審査で注目されたデザイン技術開発
衝撃波の作用でフィルター除塵
営業技術部 部長 山下 哲哉
営業技術部 部長代理 田口 浩二
「COSMO-X」は、世界で初めて衝撃波の作用でフィルターに付着した粉塵を剥離させる装置「マッハウェイブ」を搭載する。集塵機ユーザーからのクレームは多くがフィルターの目詰まりについてだ。目詰まりを解消できれば大手に負けない製品になるという確信のもと、フィルターのクリーニング装置の開発を開始した。
エアパルス式など空気圧を使った方法から、打撃や各種周波数振動、振るい落としなど考え付く方法はすべて試した。しかし何をやっても成果が出ず、先がまったく見えない状況が続いた。
あるとき実験中に装置を誤作動させてしまった。その時、フィルターの一部分とはいえ、初めて粉塵がきれいに剥離した。後日、それは衝撃波の作用であることが判明した。
解決の糸口を見つけ、効果を高め、集塵機に搭載可能なクリーニング装置「マッハウェイブ」が完成。これを搭載した「COSMO-Z」を2014年に発売した。
最初はほとんど売れなかったが、ファイバーレーザー加工機の普及が転機となった。ファイバーレーザーから発生するヒュームは細かく付着性が高い。従来以上に目詰まりが早くなるが、COSMOは目詰まりをきれいに払い落とせた。ユーザーの「いままでの集塵機とは全く違う」という評価が広がり、台数はぐんぐん伸びた。
COSMO-Xは、同-Zで得られた知見、ユーザーの声を反映し、静粛性、デザイン性、操作性、メンテナンス性などすべてにおいて従来品を超える製品を目指した。機能性を高めるとともに、色は光沢の白、ボルト類は一切表面に出さないなど、洗練された外観とした。
次の目標は粉塵廃棄など日常の作業をワイシャツやスーツでもできるようにすること。捕集粉塵の後処理装置など、新しい付加装置の開発を進め、来年のMF-TOKYOで発表したい。
本製品は独、英、伊など欧州7カ国で特許を取得。世界中のヒューム集塵機のスタンダードを目指していく。