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第54回機械工業デザイン賞 IDEA
日本産業機械工業会賞/日本工作機械工業会賞
日本産業機械工業会賞
【オルガノ】超純水製造装置 ピューリックωⅡ
ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)、半導体技術などで使用する超純水への要求水質は非常に高度化している。そうした中で、極微量分析、半導体洗浄に適した高精度超純水の製造装置には操作性・保守性などユーザビリティー改善が求められている。これらに応える装置として開発された。
水の純度は電気抵抗率により測定される。装置は、濾過(粉末状活性炭フィルター)/2段逆浸透膜(RO)処理/ホウ素除去BPカートリッジの3系統により、RO純水/BP超純水(電気抵抗率18メガオーム・センチメートル以上)を製造する性能を持つ。ROカートリッジは水を通しイオンや塩類など水以外の不純物は透過せず純水を作る。
装置の注目すべき機能・品質は、ホウ素を選択的に除去できるイオン交換樹脂を独自開発し、これを内蔵するBPカートリッジを採用したことだ。処理水のホウ素を除去し、ホウ素濃度は安定的に1ppt(pptは1兆分率)以下にできる。これは従来の10分の1の低濃度の品質で超純水を製造する能力を有する。
また、微粒子除去フィルターにより水中の微粒子、メタル、シリカにおいても最高水準の水質を達成している。採水流量は毎時120リットル、造水流量は同6リットル、排水流量は同54リットル。
装置のフットコントローラーは、採水・採水停止を容易にし、また、視認性に配慮するボタン配置の7インチタッチパネルのディスペンサーは、ユーザーサポート機能で操作性に優れたGUIが構築されている。
装置は殺菌用水銀フリーのキセノン(Xe)酸化紫外線(UV)ランプを採用し、水銀漏れによる事故リスクがなく、安全性を確保している。消耗品は6カ月あるいは1年で交換されるが、徹底したコンタミネーション対策として、ワンカートリッジ式を採用しメンテナンス作業を容易にしている。
全有機体炭素(TOC)計の間欠運転機能を搭載しており、ランニングコストは常時運転時に比べて%低減している。
本体はモノトーンを基調としたスタイリッシュなデザイン。本体と7땩タッチパネルのディスペンサーは、相似形のツインフォルムをデザインする。装置はドラフトチャンバー内での使用を想定し、ディスペンサーに付帯するチューブスタンドには酸雰囲気下でも腐食しない金属フリー素材を使用している。
造系デザインは内部の製造フローに沿い、2段階のRO工程で水中のイオン濃度を90%除去、装置内にはBPカートリッジを含め8本を配置する。これをハウジングするボックス造形は、素材、加工法、組み立てにおいて未処理部分が残る。
本装置の性能は、新規開発したBPカートリッジと微粒子除去フィルターに大きく依存している。しかしながら、これら二つの機能部品は、フラッグシップモデルとうたいながらオプション設定となっており、営業販売企画のあり方に疑問を抱く。
さらに検討すべきは、装置の外観に加えて内観の処理、換言すれば、高度化された処理工程を象徴化して可視化する〝流れのデザイン〟にある。機器類を連結する配管やワイヤリングのデザイン解が検討されれば、その完成度は格段に向上する。
日本工作機械工業会賞
【オークマ】ものづくり現場の人手不足を解決する移動式ロボット加工セル OMRシリーズ
開発コンセプトは、多品種少量生産や変種変量生産に柔軟に対応し、さらには機械のオペレーターが簡単に安心してロボットを使いこなせるティーチングレス、プログラミングレスの操作性を備えることで、モノづくり現場の人手不足を解決する移動式協働ロボット加工セルの提案である。現場において人に優しくフレキシブルに展開可能なコンパクト自動化のデザインを標榜する。
移動協働ロボット加工セルは、新規ワーク登録時のティーチングが不要。最大30種のワーク登録と、繁忙状況に合わせて最大10台の機械登録により、変種変量生産にも1台でフレキシブルに対応する。また、設置は機械前に移動しフロアストッパーによってワンタッチで定位する。
電源・通信ケーブル・エアホースを接続後、ロボット側のビジョンセンサーが機械側のドットパターンマーカーを読み取り、教示位置を自動補正。約10分でセットアップは完了する。ワーク切り替え時は従来のロボットセルに比べてワーク立ち上げ時間を約78%削減する性能を有し、最短4・5分で手軽に自動化をスタートさせる。
製品の上部に装備されるストッカーは、幅広いワークサイズに対応し、段取り時間は1分。ロボットに装備されるエンドエフェクターのフランジワーク3爪ハンドと、シャフトワーク並行ハンドの運用切り替えは、パラメーターで変更が可能で、多品種生産に対応する。
加工セルは機内や工具マガジンへのアクセス性が良く、設置スペースの半減でコンパクトな自動化を実現している。最大可搬質量10キロー20キログラム、自重400キログラム。
タブレット操作盤には動作支援ソフトが搭載され、ロボットに関する専門知識やティーチング、プログラミングを一切不要にしている。タブレット操作盤に提示されるガイダンスに従って、工作機械の種類とワーク情報を入力するだけでロボット動作が自動設定される。タイムライン画面においてアイコンをドラッグ&ドロップするだけでプログラミングが完了する。一例として、新規ワークの立ち上げ時間を最短10分(従来のロボットセル方式と比較して約78%短縮)で完了させた点は評価に値する。
ユーザビリティーに配慮した加工セルの造形処理は、省スペース協働ロボット加工を実現するコンパクト自動化のデザイン。ワークストッカー台車+協働ロボット(他社製)の先端にビジョンセンサーとエンドエフェクターを装着する。
移動式加工セルは手押しハンドル付きであるが、自重400キログラムであり、スムーズな可搬性を実現するために軽量化の必要性を感じる。惜しむらくは内製協働ロボットの搭載を望みたい。
一方、タブレット操作盤に展開された動作支援ソフトの造系処理は、マニュアル不要の直感的操作の域に達しており、完成度の高い仕上がりを見せている。
必要な時に必要な機械やワークを手軽に自動化するフレキシブルな移動式協働ロボット加工セルは、操作をサポートする人に優しいスキルレスで、製造業の生産形態が従来の大量生産から多品種少量生産へとシフトするのに合わせ、協働ロボット加工セル需要の拡大傾向に対応している。