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九州・沖縄 経済特集(2024年7月)
エリアトピックス 地域の明日を描く
半導体関連産業 集積進む
熊本県内では台湾積体電路製造(TSMC)の進出をはじめ、半導体関連産業の集積が菊陽町を中心とした地域で進む。TSMC製造子会社のJASM(熊本県菊陽町)は2月、第1工場を開所。年末にも第2工場の着工を予定し、さらに微細な回路線幅の製品製造を計画する。国内企業も事業拡大を目指して設備投資を進めるほか、熊本県は県南地域への経済効果の波及を狙い八代地域に工業団地を造成する。
JASMの工場周辺では、東京エレクトロン九州(熊本県合志市)やソニーグループ傘下のソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(同菊陽町)が拠点を構える。東京エレクトロン九州は新棟となる開発棟の建設を進める。ソニーGは合志市に約37万平方メートルの敷地を取得し、画像センサーの製造拡大などを図る。
三菱電機は2026年稼働を目指し同菊池市の拠点に新工場棟を建設し、炭化ケイ素(SiC)を用いたパワー半導体の需要拡大に備える。製造装置からウエハー、センサーに至るまで企業の半導体需要獲得に向けた取り組みは加速する。
一方、企業から人材不足の声が上がる。日銀熊本支店が7月に公表した県内企業短期経済観測調査(短観)の雇用人員判断では製造業・非製造業ともに「不足超」の結果になった。
各種表面処理を手がける熊防メタル(熊本市東区)では新入社員向けにメンター制度を取り入れており、よりよい職場作りを加速させる。人材育成のほか、生産性向上に向けたデジタル変革(DX)推進プロジェクトを立ち上げた。
熊本大学では半導体やデータサイエンスに特化した新教育課程が始まった。半導体教育のためのクリーンルーム設置が進むほか、台湾の国立陽明交通大学との連携教育も企画する。幅広い教育の提供によって専門人材の育成を試みる。
一連の動きが菊陽町周辺をはじめ県北部で盛り上がる一方、県南部への経済効果波及はこれから。熊本県は南部に20万平方メートル規模の工業団地造成を計画する。
南部の主要都市の一つである八代市は、国の重要港湾である八代港に加えて、新幹線や高速道路など交通インフラが集まる。
同市と熊本県は6月、物流施設やデータセンター開発を手がけるESR(東京都港区)と「県南地域の発展に向けたやつしろ物流拠点構想の推進に関する覚書」を結んだ。同社によると10億ドル規模の投資もあり得るという。豊富な交通インフラを生かして経済発展に生かす考えだ。
佐賀県は県内総生産の約4分の1の24・5%が製造業(2021年度県民経済計算)でモノづくりが盛んな県だ。半導体や自動車関連の産業も多い。陸上交通の要衝、鳥栖ジャンクション(JCT、佐賀県鳥栖市)があり、九州全体の物流網を支える。同JCT近くで造成予定の鳥栖市の新産業団地「サザン鳥栖クロスパーク」は九州経済への波及効果が期待されている。佐賀県を主拠点とする有力企業を紹介する。(掲載は順不同)
戸上電機製作所 創業100年へ準備着々
戸上電機製作所(佐賀市)は、開閉器など制御機器を手がける。電力会社向けの配電機器も実績豊富だ。電気工事の施工管理などを含めてインフラ全般を支える幅広い業務で社会基盤の維持に貢献する。
同社は25年3月12日に創業100周年を迎える。節目に向け着々と準備が進む。本社工場の正門から正面に位置する本館は耐震強化で改修し、外壁の独特なタイルは1枚ずつ剥がしてきれいに磨いて貼り直された。本館には社長室や秘書室のほか総務、経理、人事などの部署が入り、会社運営における連携力を高めている。
記念ロゴマークとスローガンも策定した。ロゴは節目を祝う金色に情熱を込めて今後もモノづくりに取り組む意思を示す赤を使い、本館のデザインを施した。スローガンは時代が変化しても新しいことに挑み続ける思いの「さぁ 挑もう つくろう かえていこう」。勢いよく走り出す人をモチーフにしたビジュアルも作成した。
ニシハツ 非常用発電機の受注堅調 生産増強
ニシハツ(佐賀県唐津市)は、非常用電源として使われる自家発電装置や自動制御盤の製造・販売、自社製品の保全・定期点検といったメンテナンス業務などを手がける。
相次ぐ自然災害の発生を受けて非常用発電機の引き合いは堅調。需要増を受けて同社は24年度中に現工場から約1・5キロメートルの場所で新工場を稼働させる計画だ。新工場での非常用発電機の生産能力は現状比1・3倍の年間約2400台に高まる。
新工場には省力化対応可能な各種設備を導入し、非常用発電機の生産基盤を強化する。現工場は顧客や協力会社が非常用発電機のメンテナンス研修ができる施設に転用する。非常用発電機は緊急時、確実に作動させなければならないが通常は動かさないため、定期的な点検や整備で「いざという時に動く状態」の維持が重要となる。
非常用発電機メーカーのニシハツ自らがメンテナンス指導機会を増やすとともに、製品全般の周知に努める。