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九州・沖縄 経済特集(2024年7月)
ICT エネルギー 活力を生かせ
正興電機製作所 サステナ経営を深化 「デジタル」「脱酸素」領域に重点
正興電機製作所では、2026年12月期まで5年間の中期経営計画「SEIKO IC2026」が走る。環境対応の高まりやデジタル化といった事業環境の変化を取り込み、売上高を400億円まで高める計画だ。添田英俊社長に聞いた。
-中計が折り返しの3年目に入っています。
「サステナビリティ経営を基本方針に、三つの重点課題『デジタルファースト』『脱炭素社会の実現』『One正興』に取り組んでいる。サステナビリティ経営ではパーパスが重要になる。企業や組織の成り立ちには、事業を顧客に提供したいとの思いがあるはずだ。組織の存続が事業継続の目的になってはならず、時代や環境に応じて事業内容を変えていくことが必要だ」
-どのような変化を念頭に置きますか。
「例えば中国の全額出資子会社、大連正興電気制御は高品質の電気設備を納めるべく設立したが環境や競争条件が変わり、現地での需要が減っている。ポートフォリオを変えてサービス事業を中心にすることを見据える」
-「デジタルファースト」「脱炭素社会の実現」については。
「デジタル分野ではロボットやカメラによる遠隔監視を中心にスマート保安のプラットフォーム化を進める。脱炭素ではレドックスフロー電池を用いたエネルギーマネジメントシステム(EMS)の事業化を目指す」
-どのように事業を推進する考えですか。
「こうした領域の開発拠点を北九州市若松区の『北九州学術研究都市』に置く構想がある。研究開発と並行してモノづくりもできることが理想だ。技術者を集めるほか、大学などとも連携する。採用を含めて、次世代の正興電機製作所や製品・サービスを生み出したい」
経営・ビジネス“健康優良“に
正興電機製作所の中計でもう1本の柱となる「One正興」では、グループが一体となり事業開発にあたることを掲げている。健康経営のソリューション提供はその一つだ。
健康経営支援ソリューション「ヘルスレジャー」はグループの正興ITソリューション(福岡市博多区)がシステム開発を担う。4月には高齢労働者の健康と体力の状況把握を効率化するアプリケーション「KOKEN(コケン)」をラインアップに加えた。労働災害で最多を占める転倒事故を防ぐものだ。
健康経営には自社でも取り組み、経済産業省などの制度「健康経営優良法人2024」では上位の「ホワイト500」に認定された。24年度は、正興電機製作所が経産省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」にも選定され、存在感を増している。
再エネ最大限に 鉄道会社、蓄電事業に参入
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けて、再生可能エネルギーを最大限に活用する動きが活発だ。九州では大手鉄道会社がパートナー企業とともに遊休地に蓄電設備を置く。沖縄では、電源の選択肢が限られる中で再生エネの存在はより大きく、蓄電やエネルギー管理の取り組みが進む。
西日本鉄道は2025年度までに九州で10カ所の系統用蓄電設備の整備を目指す。グループ保有の遊休地に蓄電池を置いて運用する。まず24年に2カ所を福岡県で稼働する。
6月には同社初の蓄電所「バッテリーハブ宇美」を福岡県宇美町のバス拠点に置いた。蓄電容量4659キロワット時で卸電力市場などで電力を販売する。11月には福岡県の筑豊地区でも稼働を計画する。
自然電力(福岡市中央区)と共同で出資する西鉄自然電力(同博多区)が開発する。西鉄は、自然電力の子会社でエネルギー管理システムを開発、運用するシゼンコネクト(東京都中央区)とも資本業務提携。エネルギー事業を強化する。
JR九州は住友商事と折半出資する事業会社、でんきの駅(福岡市博多区)を通じて系統用蓄電所を開発する。1号案件は「でんきの駅川尻(かわしり)」。JR川尻駅(熊本市南区)の隣接地にあった資材置き場を転用した。蓄電池の実効容量は6000キロワット時だ。
蓄電池には、住友商事が日産自動車との共同事業で調達する電気自動車(EV)の中古バッテリーを用いてコストを最適化する。電力系統を通じて需給調整市場、容量市場で電気を販売する。今後もJR九州の沿線地や遊休地を活用し、九州で複数施設を開設する。
離島のエネ管理を実証-沖縄
沖縄電力は宮古島と橋で結ばれた来間島でマイクログリッド(小規模電力網)のエネルギーマネジメントシステム(EMS)を実証中だ。ネクステムズ(沖縄県浦添市)、宮古島未来エネルギー(同宮古島市)と進める。
電力網は蓄電池と太陽光発電システム、補充電用ディーゼル発電機などで構成。約200人を対象に家庭や施設の電力需給をEMSで最適化する。太陽光発電による電気を最大限に使うほか、非常時には独立した電力網として使用できる。
4月には宮古島系統で停電が発生したが、遠隔操作で来間島のマイクログリッドを先行して復旧。有効性を実運用で実証した。
また宮古島系統では、世帯数や観光客の急激な伸びが見込まれることから、送配電事業で宮古第二発電所に容量4万8000キロワット時の電力供給用蓄電池を25年5月に導入する。導入までの期間を短縮できるため蓄電池を選んだ。
昼間に充電し、主に夜間の需要ピークに対応する。充電する電気は市内家庭などの太陽光発電からも受け入れられると見ており、再生エネの利用拡大にもつながる見込みだ。