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九州・沖縄 経済特集(2024年7月)
サステナビリティー 社会を支える会社
社会の持続可能性を高める上で企業の役割は大きい。企業は保有する製品やサービスの提供を通じて、顧客の価値を高めることで収益を得る。企業がこうした本業を通じて社会を良い方向に変革できれば、持続性を持った好循環ができあがる。
エヌ.エフ.ティ 半導体封止向け精密金型 国内外4拠点体制 国際供給網を支える
エヌ.エフ.ティ(福岡県太宰府市)は、研削やフライスをはじめ微細な金属加工を強みに、半導体用樹脂封止金型や半導体製造装置を供給するメーカーだ。福岡と熊本、中国とタイの4拠点体制で、半導体のグローバルサプライチェーン(供給網)の一翼を担う。
濱田博社長は第一精工(現I-PEX)で磨いた金属加工の腕を基に30代で独立した。2025年に創業40年を迎える。独立後の仕事は「手のひらに乗る大きさ」(濱田社長)からスタートし、大手電機メーカー向けも手がけるように。半導体分野で受注を伸ばし、現在では両手でも収まらない大きさの装置製造も手がける。
「成り行き任せ」の自然体を重んじる濱田社長。柔軟な経営姿勢で半導体産業の需給の波「シリコンサイクル」を乗り越えてきた。
顧客の注文は正面で受け止める。加工は“一点物”が中心。技術的に困難でも「他社でできるものが、当社でできないわけはない」(濱田社長)と結果を出し信頼を広げた。
九州で半導体関連の投資は活況だが、同社の主領域であるパッケージングなど後工程で恩恵はまだ小さい。半導体の世界的な在庫調整からの回復を待ちつつ、いまは力を蓄える。
目下、取り組むのが社内のデジタル化だ。新型コロナ禍による外出・渡航制限を機に、ペーパーレス化や間接業務の本社一元化などを進める。
本社以外の3工場は基本的に生産に特化し、これまでも全社での生産情報の共有を最適化してきた。内外問わず地域の工業系人材を各地で技術者に育ててきたことで、どこで生産しても同じ品質を維持できる。こうした体制を間接業務の面からも実現することを目指す。
デジタル化にあたっては、西日本シティ銀行と同行グループのイジゲングループ(大分市)が協力。遠隔地でも「壁の向こうにいるのと同じ感覚」(濱田社長)で一体的に業務を進める体制を固める。
「成り行きは『成行』。成功につながるチャンスだ」と濱田社長は時代や経済の流れを乗りこなしながら、次代に技術をつないでいく。
西日本シティ銀行 脱炭素化支援を一気通貫で
西日本シティ銀行は、温室効果ガス(GHG)排出量算定、削減支援、カーボン・オフセットまで一貫して提供する融資商品「フォレストライク」の提案を進める。GHG削減のモニタリングや伴走型支援が特徴だ。専門人材のいない中小企業でも脱炭素化の要請に応えられるとともに課題解決の手法を高度化、多様化できる。
商品を共同開発した丸紅のカーボンクレジットを用いるほか、排出量算出など分析にはe-dash(イーダッシュ、東京都港区)の知見を生かす。
運転資金や設備資金として融資額1億円以上で期間は3年以上。「温室効果ガス削減宣言書」などの発行を受けられ、ブランディングにもつながる。
西日本シティ銀の村上英之頭取は「脱炭素化の流れが止まることはない」として、企業の課題解決を通じて地域のサステナビリティー向上に貢献する。
九電グループ 地熱発電のトップランナー 再生エネ推進を加速
九電グループは長期安定的に運用できる再生可能エネルギーとして、地熱開発を推進している。九電グループが国内で擁する地熱発電の出力合計は約22万4000キロワットで全国の46%を占める(2022年度末時点)。4月には九電グループ内の地熱事業を九電みらいエナジー(福岡市中央区)へ集約。地熱発電のトップランナーとして開発を加速する。
地熱発電は、地中深く掘った井戸から高温高圧の蒸気や熱水を取り出し、その蒸気で発電用タービンを回す。“天然のボイラ”の恩恵により、燃料不要で24時間発電可能なベースロード電源となる。
熱水の地下への還元など、適正な管理により長期運用もできる。大分県九重町の大岳発電所(出力1万4500キロワット)は、1967年に事業用では国内で初めて運転を始めた。2020年には同じ井戸を流用しつつ、老朽化した発電設備を更新し、能力を増強して現在も発電を続ける。
九重町には国内最大の八丁原発電所(同11万キロワット)などがあるほか、新たな開発に向けた調査も進む。
また鹿児島県霧島市では26年度末の運転開始に向けて霧島烏帽子岳バイナリー発電所(出力4990キロワット)の建設を進める。熊本、長崎、東北地方の福島でも地熱調査を実施中だ。
海外への技術提供を含めて、社会全体の温室効果ガス排出量削減に向けて再生エネの可能性を深掘りしている。
TOTO ユニットバス誕生60年 くつろぎの場へ進化
1964年10月の東京オリンピック開催にあたり、日本初の超高層ホテル「ホテルニューオータニ」の開業が急ピッチで進められた。TOTOは同ホテルに短期間で大量の浴室を納入するため、前年に業界初の「ユニットバスルーム工法」を大手ゼネコンらと共同開発、64年9月に完成し納入した。
それまで現場で1室ずつ作り上げていた浴室空間を事前に工場で組み立て、現場で組み合わせる工法で、工期は10分の1に短縮した。現在では日本の浴室のおよそ9割が同工法によるものとされる。
同社製ユニットバスルームは誕生以来着実に販売台数を伸ばし、2024年2月に累計出荷台数1200万台を突破。これまでも業界初の「カラリ床」や「魔法びん浴槽」を、また従来より約35%節水性能が進んだシャワーの搭載など、生活価値が向上する機能の提案や環境負荷軽減を実現し続けてきた。
そして同バスルーム誕生から60年となる今年、上位シリーズ「SYNLA(シンラ)」を6年ぶりにフルモデルチェンジ。“上質をつむぐ。心をほどく。”をコンセプトに、居心地の良さを進化させた。ウルトラファインバブルを含むミスト吐水など三つのモードが選べるシャワー、人間工学を応用したベンチなどを採用するなど、浴室は体を洗う場所から、くつろぎの場へと進化を続けている。