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京都企業におけるAI活用法/第3次人工知能ブーム
身近な存在となりつつある人工知能(AI)。AIの歴史は1950年代までさかのぼり、現在はビッグデータ(大量データ)を用いてAI自らが知識を得る学習機能が実用化された「第三次AIブーム」時代とされる。今年は米オープンAI(カリフォルニア州)が提供する対話型AI「チャットGPT」が話題となったほか、製品やサービスへの導入も増えている。大変革時代における京都でのAI活用を探った。
ベンチャー成長に勢い
AI製品・サービスの提案により、目覚ましい勢いで成長しているのは、ベンチャーやスタートアップが多い。
2016年創業で、18年に京セラ傘下となった外観検査AIのスタートアップ、Rist(リスト、京都市下京区)は、著作権などの権利トラブル対策を施したAI開発システム「RPipe―Image」を提供している。工場などで製品を検査する画像解析AIに用いるもので、著作権や肖像権を確認済みの画像だけを使って学習するため、海外展開時などに権利関係のトラブル発生リスクを抑えられるという。
外観検査への普及促進
同業のRUTILEA(ルテリア、京都市中京区)は、部品などのAI外観検査で、教師データとして必要な不良品画像をAIによって生成できる無料ウェブサービスを始めた。同社開発の画像生成AIを活用しており、専用ウェブページ上に検査対象の良品画像をアップロードすると不良品画像が生成できる。不良品画像を円滑に入手したい顧客を支援し、AI外観検査の普及を促す。
業務効率化で生産性向上
業務の効率化などを目的にAIを活用する企業も相次ぐ。
村田製作所は米オープンAIの技術を使って米マイクロソフトが提供する対話型AIサービスを、7月から本格導入した。工場を含む国内の全従業員3万人を対象に、社内外の情報検索やプログラミング支援に加え、生産現場でエラーへの対応マニュアルを提示する使い方などを想定している。
個人情報や機密情報を取り扱うことは原則禁止で、サービスを利用できるのは村田の社内ネットワーク上のみ。総務などの間接部門から生産現場まで幅広い職場で生産性向上を目指す。
良さと限界の認識を
こういった社内での生成AI活用は、京都銀行やNISSHA、第一工業製薬、宝ホールディングス、たけびし、イシダをはじめ、多種多様な京都企業で進む。
長年AIを研究してきた仲谷善雄立命館総長は普及が進む生成AI技術について「ようやく我々が目指してきた時代に来た。脅威に感じるという声もあるが、新しい技術が生まれたときは必ずそうした意見は出る。実際に活用し、良いところ、限界を認識することが重要だ」と説明する。
トップインタビュー/TOWA社長 岡田 博和氏
業務をデジタル変革
―半導体業界は大変革期を迎えています。
「市況悪化で顧客によっては製造装置の出荷時期に遅れが生じている。一方、受注は想定以上に伸びており、市況の底は打った感がある。最近話題の生成人工知能(AI)普及は今後の楽しみの一つ。生成AI向け半導体の製造には、当社が手がける顆粒(かりゅう)状の樹脂を金型に敷いてから半導体を封止するコンプレッション方式の半導体モールディング装置が最適という評価を顧客から得ており、足元の受注が増えている」
―医療用プラスチック製品の生産能力を現状比2倍に高めます。
「コロナ禍の収束に伴った外科手術の増加で、同製品需要が増えているほか、新規受注もあり、既存の生産能力では対応できない。早期に工場を新設し、稼働する方針だ。建設場所は、既存工場近くの関東甲信越地域で検討している。既存工場の人材活用や顧客への供給のしやすさが場所選定のポイントとなる。売り上げ拡大に向けた道筋が明確になってきたので、先手先手で動いていきたい」
―業務のデジタル変革(DX)に取り組んでいます。
「工場の生産性を高めるため、スマートファクトリー化を推し進めている。例えば、半導体製造装置向け金型の生産ラインは従来から自動化されていたが、さらに収益性を高められるようなライン作りを進める。新事業では販売が伸びている工具の生産ライン自動化に取り組んでいる。管理部門でも業務の効率化に向けて、部署ごとにどのようなDXを実施するか戦略を練っている」