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京都産業界
加速するカーボンニュートラル、GX活動
カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)やGX(グリーントランスフォーメーション)への取り組みが京都でも加速している。
CO2分離装置開発へ
蓄電池大手のGSユアサは京都大学発ベンチャーのOOYOO(ウーユー、京都市下京区)と組んで、工場などからの排ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)を分離・回収する装置の開発、実用化を目指す。複数ある分離法の中でも、排ガスを膜に通してCO2を分離する技術を用いる。鉛蓄電池のセパレーター関連技術から派生し、現在は排水処理向け膜製品などを手がける子会社のGSユアサメンブレン(東京都港区)がCO2分離モジュールと装置を開発、ウーユーがモジュールに組み込む分離膜を供給する。
ウーユーの分離膜は低い圧力でCO2を取り出せるため、化学吸着や物理吸着といった主流の分離法と比べて電力コストが大幅に抑えられ、分離性能にも優れる。GSユアサメンブレンはこの分離膜の性能を最大限に引き出す新構造モジュールを開発し、装置に仕上げていく。
GSユアサにとってCO2の回収・再利用は新事業の位置づけ。2026年度までに市場投入する計画で、CO2利用事業者などへ展開する。
水管理をアプリで見える化
半導体洗浄装置世界トップ企業として、サステナビリティー(持続可能性)開発を加速するSCREENホールディングス。同社が開発・製造する半導体洗浄装置は近年、デバイスの微細化で洗浄工程数が増え、水の使用量も増加傾向にあるという。水のリユース、リサイクル技術は重要テーマとなっている。
このほど開発拠点で導入した水管理を可視化するアプリケーションは、洗浄装置などの開発装置を含め、装置開発に用いるクリーンルーム全体の水の流れをアプリ上で見える化した。これにより純水・薬液の使用量、排水、排液の低減につなげる。
全車両がEVの営業所本格稼働
サステナブル(持続可能)物流の実現を目指すヤマト運輸は10月、京都で同社初の全車両が電気自動車(EV)の営業所を本格稼働させた。ヤマトグループは50年に温室効果ガス(GHG)自社排出量実質ゼロを掲げ、各施策を進めている。中でも約5万台保有する車両のうち、30年までに2万台をEV化する計画で、今回の取り組みもその一環。
全32台をEVにした八幡営業所(京都府八幡市)は、夜間に一斉充電する際、電力使用ピークの偏りを緩和するといったエネルギーマネジメントを行う平準化システムも導入。太陽光発電設備と蓄電池も活用し、日中発電した電力でEV充電や建屋電力の一部を賄う。23年度末までに関西で、全車両EVの営業所をさらに10カ所拡大する方針。環境負荷を低減する開発や、GHG排出量削減に向けた取り組みがより一層広がりそうだ。
トップインタビュー/GSユアサ社長 村尾 修氏
SXに注力、新経営方針策定
―カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、サステナブル変革(SX)に力を入れます。
「モビリティーの電動化や社会インフラでの再生可能エネルギー導入拡大など、蓄電池の重要性が高まるにつれて当社が貢献できる分野が広がりつつある。今後はさらなる技術革新と、実装・運用していくことが重要となる。そこで従来の経営方針を見直し、『サステナビリティ経営方針』を新たに策定した。エネルギー技術で持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指す」
―バッテリー式電気自動車(BEV)用リチウムイオン電池(LiB)事業でホンダとの協業が加速します。
「7月に研究開発の合弁会社を設立した。この案件は当社の飛躍に欠かせないピースで絶対に失敗できない。競争力が高く、グローバルスタンダードとなる高性能BEV用LiBの開発を最優先で行う。並行して量産化の準備も進める。2027年4月には生産ラインを立ち上げ、35年には生産能力を当社グループ全体で年20ギガワット時(ギガは10億)超に拡大していく。この規模の物量を高い歩留まりで生産していくことは大きな挑戦となる」
―デジタル変革(DX)人材の育成を積極化しています。
「21年から本格的にDX推進の活動を始めた。22年度は全社員がDXリテラシー講座を受講して意識定着を図った。23年度も全社員対象の教材を配信し、DXレベルの底上げを進めている。また『DX育成道場』を開設し、各部門からの推薦者50人に専門教育も行っている」