-
業種・地域から探す
京都企業トップに聞く―3
片岡製作所会長 片岡 宏二氏/次世代向けの装置開発
―脱炭素社会に向けたGX(グリーントランスフォーメーション)投資が日本でも活発化してきました。
「脱炭素化で次世代太陽電池として期待される『ペロブスカイト太陽電池』の量産向け装置の開発を進めている。世界トップシェアの薄膜太陽電池用レーザーパターニング装置の技術を利用したもので、研究開発向けは既に展開済みだ。電気自動車(EV)バッテリーの充放電検査などを担う二次電池検査システムでは、当社は業界に先駆けて回生装置を標準化したが、業界をけん引する形で効率アップも進めている」
―車載電池関連の投資が国内外で活発です。世界トップシェアの二次電池検査システムの今後の見通しは。
「国内も欧米もアジアも需要が想像以上。本社近く(京都市南区)で建設を計画する新工場だけでは間に合わないため、2024年初めにも追加で新たに工場を借りて増産対応する。当社のシステムは実績豊富で全充電方式に対応し、顧客の技術進化にすぐ追従できる。次世代電池向けも含め、当社への期待の高まりを感じている」
―今後の課題は。
「人材確保が課題。持続的な成長の道筋をしっかりと示し、日頃からのコミュニケーションと、若い人が新しいことにどんどんチャレンジできる環境が重要だ。工場増設もしていかないといけない」
NKE社長 中村 道一氏/価値観・考え方など体系化
―従業員体験(EX)向上や、働く目的・目標を共有して一致協力するために独自のバイブルを作りました。
「“NKE Way”という本で4月に全社員へ配った。企業理念に込められた思いや仕事をする上での価値観、考え方、道理などを体系化した。コロナ禍で広がった内向き思考から脱却し、原点に立ち返って、なんのために働き、どんな成果をあげ、どんな風になりたいのかなどを共有、引き継いでいくために皆で学んでいる」
―デジタル変革(DX)も進めています。
「納期や価格、生産進捗など、営業所で受ける多様な問い合わせ内容をいつでも確認できる代理店専用ホームページを準備中。2024年度内に開設し、顧客の利便性と業務効率を高める。当社の自動化設備・機器の競争力とモノづくり力強化、独自部品加工技術の研さん、模倣防止などが目的の新型加工機は23年度中に導入する」
―事業環境は。
「電池工場向け関連をけん引役に上期売上高は前期比約2割増。ただ、変革期の自動車は企業ごとに投資姿勢が異なり注視したい。海外も堅調。中国で日本案件を受注する例もあり、日本での受注案件を中国で作ったり、その逆といった相互補完、最適地生産を進める。現地で鍛えられた中国子会社のスピード感やコスト意識を日本側が学ぶ狙いもある」
コフロック社長 小島 望氏/陸上養殖で酸素発生装置受注
―半導体製造などで使われる流体計測制御機器や、ガス発生装置の事業状況は。
「窒素ガス発生装置の用途は幅広く、コロナ禍の落ち着きによる各産業の投資活発化と、ローリーなどのガス輸送よりも二酸化炭素(CO2)排出量を削減できるGX(グリーントランスフォーメーション)の観点から堅調に推移している。陸上養殖の複数案件で酸素ガス発生装置を受注するといったトピックスもある。半導体製造の付帯装置向け流体計測制御機器の下期は少し厳しい見通しだが、中長期では成長トレンドなので今の間にできることをやっておく」
―付帯装置向け以外にも展開しています。
「分析機器や理化学機器向けは堅調で、半導体製造装置向けの市場開拓も推進中。培った技術を用いたエンジニアリングで、国の研究機関向けに環境負荷軽減に貢献する装置の製作も始めた。別の研究機関だが、水産物のトリチウム濃度検査で当社の流量計が活躍している事例もある。当社製品はSDGs(国連の持続可能な開発目標)と親和性が高く、引き続き社会に貢献していきたい」
―成長がキーワードの新人事制度の導入から1年がたちました。
「来年、付帯する人事機能も導入する方針。キャリアコースを管理職と専門職の複線型とし、社内異動公募なども導入して、一人一人が成長できる環境を整備し、従業員体験(EX)を高めたい」
不二電機工業社長 八木 達史氏/省力化・省人化とことん追求
―RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)など、デジタル変革(DX)を進めてきました。
「道半ばだが、意識付けになっている。例えばみんなで集まる会議を減らした。代わりに電子会議室に資料を上げ、好きな時間に確認して意見があればコメントする形にして、付加価値に使う時間を増やすことができた。以前はとにかく集まったが似た内容も多かった。デジタル化でタイムリーな業務推進が可能になった」
―世の中のデジタル化にマッチした製品の展開も進めています。
「電力関連などの顧客は人手不足。省工数で人手のかからない機器や省人化機器が求められている。JECA FAIR2023製品コンクールで大阪府知事賞を受賞した『電力量計無停電交換用ユニットUPD形』は電力量計を使用した状態で安全に交換可能。煩雑性が無く、作業効率化や短時間で省力化も図れる。省力化、省人化はとことん追求していく」
―電力向けが堅調な一方、ビルや公共施設向けなどは在庫調整の影響を受けています。
「顧客が急に製造現場の負荷を引き上げられないなどで、当社への発注が先延ばしになる事例もでている。働き方改革で、仕事を残業して回すことが減ったようだ。受注残は高止まりしているが、先納期がものすごく増える一方、短納期がかなり減った。先行き不透明とはまさにこのことで、慎重にみている」
(順不同)