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混迷の時代に成長投資で変革/中長期的な視点忘れず
エレクトロニクス業界が踊り場を抜け切れない。需要は回復基調との指摘がある一方、世界的な景気鈍化によるスマートフォンや家電、産業機器の販売台数低迷などが響き、力強さに欠ける。そんな状況下であっても、同業界と関わりの深い京都企業は中長期的な視点から既存事業や新事業、技術力の強化に充てる成長投資の手は緩めず、混迷の時代であっても変革し続ける。
生産増強へ拠点整備
ロームは電気自動車(EV)などで需要が拡大中の炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の生産増強に踏み切る。出光興産子会社ソーラーフロンティア(東京都千代田区)の旧国富工場(宮崎県国富町)を取得。SiC生産拠点として整備し、2024年末までに稼働する。
ロームは同拠点を含め、国内外でのSiC半導体生産能力を30年度に21年度比で35倍に高める計画だ。
新たな事業柱を構築
SCREENホールディングスは、世界的な脱炭素化を背景に次世代エネルギーとして注目される水素に照準を当て、彦根事業所(滋賀県彦根市)に水素関連製品を生産する新棟を建設する。
25年1月の稼働予定で、水素を生み出す水電解装置の中核部品であるセルスタックや燃料電池に使われる膜電極接合体(MEA)を生産する。総工費は約110億円。同社はディスプレー製造装置などで培った成膜技術を活用し、水素関連事業を新たな柱にする考えだ。
研究開発力を強化
持続的成長には技術力や研究開発力の強化も欠かせない。
京セラは滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)に、自社のスマート工場化を進めるための生産技術開発拠点を整備する。約130億円を投じ、25年4月の稼働を目指す。全国から生産技術関連の技術者を集め、生産工程の最適化・自動化に向けた技術開発を行う。各事業部門の技術者間による情報共有、共創、技術者のトレーニング拠点としても活用する。
高度化する技術に対応
堀場製作所の子会社で半導体製造装置向けマスフローコントローラーなどを手がける堀場エステック(京都市南区)は、京都府福知山市の研究開発拠点を拡張する。総投資額は約30億円。隣接地に新棟を建て、既存棟も改修する。25年4月の竣工を予定する。コア技術のガス流量制御や液体気化技術の高度化などが狙い。各種実験エリアの拡大に加え、半導体製造プロセスのモニター評価が可能な実験室や、産学連携を想定したラボスペースも整備予定だ。基礎研究能力を強化し、高度化する半導体技術に対応する。
トップインタビュー/日新電機社長 松下 芳弘氏
三つのデジタル変革
―三つのデジタル変革(DX)に取り組んでいます。
「業務革新、生産革新、事業革新を掲げて2022年度から強化している。業務革新は商談から設計、部材発注、製造、検査、出荷といった工程の情報を一元管理する。各工程の各担当者が全情報を見ることができればシームレスな連携につながる。生産革新では製造工程の見える化を進めるなど、それぞれのシステムを24年度に構築し、25年度からきちっと運用していく」
―5月に住友電気工業の完全子会社となりました。
「最も期待されているのは研究開発だ。当社は機器設計に強みを持つが、電力機器の特性を上げるには電気・機械設計が中心だ。今後は住友電工が強い材料技術と組み合わせて、材料までさかのぼった設計ができる。当社は機器のコンパクト化も得意とする。住友電工の絶縁材料などを活用すれば、今までよりも高電圧に耐えられて、さらにコンパクトな機器の開発が可能になる。23年度中に両社でアイデアを出し合い、24年度から相乗効果を発揮していくだろう」
―国内主要拠点の整備を進めています。
「事業継続計画(BCP)の観点や社員が安全安心に働ける環境づくり、生産性向上によるリードタイム短縮などを目的に進めてきた。前橋製作所(前橋市)はガス絶縁開閉装置(GIS)の新工場を昨年稼働し、九条工場(京都市南区)は耐震補強しつつ設備のレイアウト変更で効率化している。このほかにも大規模工場の増改築・新築をどうするか検討している。30年度までに整えたい」