-
業種・地域から探す
続きの記事
第56回機械工業デザイン賞 IDEA
審査委員会特別賞
【アイダエンジニアリング】横型成形機 DPH
これまで、蓄電池ケースの成形は絞り加工やしごき工程などの多工程を要してきた。この製品は成形工程を横方向に配置し、アシスト絞りと多段成形を組み合わせた独自の新しい成形システム技術により、成形工程や型部品点数を削減している。成形荷重の分散効果により、最小の加圧力でブランク打ち抜きから製品排出まで、ワンストロークで対処可能にすることを開発テーマとしている。
本機は箱形の絞り横型成形に特化した。パンチが水平方向に動き連続成形することで、工程ごとの成形荷重分散効果により、最小の加圧力(約12トン)で成形する。機械設置面積を従来機比で62%、機械重量を同92%削減した。本機はコンパクトかつシンプルな成形性能を持つ。アシストパンチを設け、被加工材に対し圧縮応力を与え成形限界を向上させる「アシスト絞り工法と多段成形との組み合わせ」は、成形工程を従来機比の半数以下の45%まで削減、さらに1個のパンチによる成形で金型部品点数も75%削減している。
加えて、従来型プレス機に比して加工油量50%、消費電力を70%削減した。省エネルギー環境性能のみならず、主要コスト要因であった金型製作費や維持費の低コスト化を実現している。
本機は機械前面の開閉により、ダイセットの出し入れを容易にするほか、ダイセット上部からダイスを簡単に引き上げられる構造により作業性を向上させている。また、1個のパンチで連続成形を行い、最小の加圧力でブランク打ち抜きから製品排出までをワンストロークで行うため、作業軽減による安全性向上と、成形工程や金型部品点数の削減、省エネなどで経済性に寄与する。
本機はホワイトカラーを基調にしたシンプルなボックス型。横型の構造により、油圧とサーボ両技術を効果的に取り入れている。また、新アシスト絞りによって、従来の縦型が持つ威圧感を解消すると同時に、低騒音・省エネを実現している。これまでのプレス工場の課題だった騒音・振動が大きく改善され、都市部に立地していても24時間稼働が可能になる。
ただし、マシンの造形は完成形とはいえず、機械性能に見合う操作系の対応、材料供給機や電力・油圧などの周辺機器は、保守性などの点で改善の余地を残す。
本機の最大の魅力は、独自開発のアシスト絞りを搭載し、コンパクトな横型プレス機とした点である。マシンは金型部品点数や加工油量および消費電力の削減で、ランニングコストの低減のみならず、基礎工事など設備投資関連コストの低減をもうたう。今後、オペレーターの安心・安全性向上など、ソフト面へのデザイン的配慮に期待したい。
環境性能を含め、これまでのプレス機による成形概念の革新に挑戦する開発姿勢が評価対象として映った。
【三共製作所】Precision Spin Table RPS330
近年、半導体ウエハーの大径化に伴い加工機も大型化傾向にある。この製品は高硬度脆性(ぜいせい)材の高効率研削加工を直進3軸に回転1軸を付加する精密回転テーブル。機械導入費や設置スペースを最小化し部品製造コストを低減する現場ニーズに応えるため、直進軸の必要ストロークを低減し、小型加工機での生産に対応する。脆性材は加工時間も長く、また微細で鋭利な切りくずの侵入により装置故障を誘因する。
開発は、長時間加工となる材料の連続運転による熱変位の最小化で高精度加工を保証し、テーブルの高速回転で加工能率を高め、半導体産業の発展に貢献することを目指している。
製品は駆動に入出力時のバックラッシュがなく、正確な位置決めが可能な長寿命の高速回転専用ローラーギアカム「ROLLERDRIVE機構」を搭載。圧力エアによる非接触シール構造の専用設計により、微細で鋭利な切りくずによる装置の損傷を長期に防止する。これにより、テーブルの毎分300回転という高速回転を維持する。24時間以上の長時間連続運転が可能で、生産性を大幅に向上させる。
効果的な軸受配列や部品処理により運転時の発熱を最小限にし、モーターの熱を伝達させず除去する構造と内部冷却機構を採用し、発熱を抑えている。テーブル面の熱変位は5マイクロメートル以下で脆性(ぜいせい)材の高精度高能率研削加工を保証する。
本機は出力テーブル(許容積載質量100キログラム)から制御サーボモーターまでが密閉性の高いボックスに一体化されており、製品質量はテーブル径330ミリメートルで195キログラムと軽量なため、さまざまな機械への搭載が可能。クーラントに対抗する防錆処理を施すなど従来の故障モードを解消する設計により、装置の長寿命化を達成し、保守性・経済性が大幅に向上。フラットな表面で微細な切りくず混じりのクーラントの残留を防止し、清掃作業を容易にする。
小型加工機に対応でき、機械導入設備費や設置スペースが削減され部品製造コストの低減に寄与する。過酷環境対応として保護等級IP66の防塵・防水性能を持つ。
製品は出力テーブル、回転伝達機構、制御モーターを一体にすることで、低床化、コンパクト化、軽量化を実現した。青と黒の鋳物ユニット造形で、安全性に配慮した滑らかな外観形状を示す。クーラントなどの水流れが良く切りくずがたまりにくいフラット構造で、防錆効果の高い表面処理が施されている。中央には治具へのエア配管や配線をコンパクトに構成する中空穴が設けられている。回転軸方向に応じて横置き、縦置きに対応する。
熱変位5マイクロメートル以下で高速連続回転、長時間連続運転の性能を持ち、ROLLERDRIVE機構による長寿命かつ高い位置決め精度によって、半導体産業の発展に貢献する装置である。
【ツガミ】CNC精密自動旋盤 BW389ZJ
同社のBWシリーズは前後刃物台が完全に独立して動作する構造で、多品種少量生産やリードタイム短縮、さらには単位面積当たりの生産性向上という現場の要請に応えてきた。開発は、この設計思想を踏襲し、新たに「高剛性×省スペース」「高機能×使いやすさ」の二つのトレードオフの解決を目指し、「圧倒的な加工剛性」「独立対向刃物台構造」「人に寄り添うデザイン」の具現化をコンセプトの柱としている。
独立対向くし刃機でワーク径38ミリメートルクラスの重切削性能を強化するとともに、高剛性・高生産性・複雑な同時加工を容易に扱えるプログラム支援を目的としている。その思想は“高度な加工を誰もが安定して行える”コンピューター数値制御(CNC)精密自動旋盤の新規モデルに照準する。
この製品はワーク径38ミリメートルクラスの大径素材加工に求められる高剛性と切削断面積2・4平方ミリメートルの重切削を安定して実現するとともに、複雑な3系統同時加工を容易に設定できる操作体系を具備する。
また、独立構造の前後刃物台と背面刃物台の同時加工をより簡単に扱えるよう、バランスターニング、同時ミーリング、重量制御加工などのパターンに対応する加工条件プリセット機能を新たに標準搭載し、従来機比でサイクルタイムを22%短縮している。さらに、1軸揺動切削により切りくず処理能力を高め、安定した高効率加工を維持できる。
操作は情報量を従来機比で約3分の1まで削減した自動プログラミングソフトを搭載。プリセット機能により、プログラム作成から初品加工開始までのリードタイムを短縮、実加工のみならず加工開始に至るまでの各ステップにおける作業負荷を軽減する運用性を実現し、スキルレスな同時加工を支援する。
チャック力可視化により、段取り時の確実性を向上させ、加工品質のバラつきを抑制。さらに干渉監視機能により複雑な同時加工時でも安全な動作範囲内での運転を可能にしている。加えて、切りくず流し専用ポンプの能力を強化し堆積抑制、ビルトインクーラントによる切りくず除去と侵入防止により、トラブル抑制と日常メンテナンスの負担軽減につなげる。
最新のサーボシステム導入、省エネモードとエコ運転モードにより消費電力を削減、経済性に配慮する。
重切削と3系統同時加工による圧倒的な加工時間短縮の性能を保ち、高剛性構造に加え、切りくずの排出と侵入抑制により安定した高効率加工を維持する。こうした優位性を持つ本機の造形は、操作盤を加工室側に寄せ、使いやすさにこだわる。また、機械高さを抑え周辺の視界確保に配慮する。ただ、正面性にこだわるあまり、側面から複雑な凹凸カバーが未整理のまま表出している。重厚感ある高機能なプロダクトであるので、この点の改善を期待したい。
【ミツトヨ】スマートビジョンシステム QM―Fit
製造市場の多品種生産・高品質・低コスト化によって測定に対する要求が高まる中で、非接触の画像測定機は多くの生産現場、検査市場に活用される。画像測定は高度測定ができる半面、オペレーターの熟練度が求められ、高齢化と労働人口の減少により計測技術者の育成と確保が困難な状況にある。これを受け、小物や薄物の部品に対する簡易な測定において、個人の力量に依存せず簡単・効率的な測定機を求める顧客ニーズが存在する。それに応じて「誰でも簡単測定」「測定の高効率化」「省スペース・コンパクト化」にかなう小型画像測定機の実現を目指した。
この製品は15・6インチタッチパネルディスプレーを採用し、タッチ操作を生かした分かりやすいソフトウエアにより、初心者でも安心して測定できる。特別なトレーニングやスキルは不要。新規開発のピント合わせ不要の広視野/長焦点深度レンズ(測定可能範囲=横115ミリメートル×縦75ミリメートル×高さ36ミリメートル)を搭載する。ラフに置いた測定対象物(ワーク)でも形状を自動認識し、測定を開始する機能や8分割リング照明などで、測定を高効率化する。モニター、パソコン、制御基板を全て内蔵し、A3サイズの省スペース・コンパクト化を実現した。測定精度はプラスマイナス10マイクロメートル。
本機はワークを置いて、まず測定箇所を選択する自動要素検出やマーカー機能などを搭載する。直感的な測定が可能で、次操作を説明するガイド表示で操作手順に迷わない。さらにアナログ感覚のキャリパースナップ機能で初心者でも気軽に測定できる。さらに、定期的なバージョンアップにより細やかなユーザーニーズに対応する高い操作性を持つ。本体のみで測定でき、別途設備の必要はない。
セッティングは電源ケーブル1本のみで電源起動・測定が可能で、導入から設備立ち上げまでが早く、省資源、省電力化にかなう。各種CE規格、ランプ指令、電池指令、WEEE指令に準拠する。
卓上測定機として、安定感・一体感のあるコンパクトデザインとなっている。外観は、製法の異なるパーツ(鋳物・板金・樹脂)をネジやつなぎ目を目立たせずに取り付けているが、鋳物フレーム部の表面処理や造形(ハード)に一部未消化な箇所が見られた。一方、製品の核心的操作性は、全てタッチパネルに集約し、シンプルで迷わないユーザーインターフェース(UI)により、誤操作を低減する造系(ソフト)への細やかな配慮があり評価できる。
本機は画面全体から自動検出された円や線などの要素をワンタッチで選択し測定する。ワークを置くだけで素早く形状認識・特定し、自動測定する。「誰でも簡単に」「効率よく」という開発目標は達成された。なお、製品は国家標準のトレーサビリティーと品質保証体系を確立している。
「誰でも簡単に測れる」を意識
研究開発本部 ソフトウェア開発部 主任研究員 新座 恒治
QM―Fitで目指したのは、従来の画像測定機とは異なる、新しい測定体験である。画像を用いた測定技術は高度化が進む一方で、操作には専門知識や経験が求められ、簡単な測定であっても熟練者に頼る場面が少なくなかった。そこで我々は、現場で誰もが簡単に測れることを出発点にした。
その象徴となる機能がキャリパスナップである。発想の原点には、当社が長く扱ってきたノギスやマイクロメーターなど、手で測る測定工具の感覚がある。ユーザーが行いたいのは、コマンドを選ぶことでも、測定要素を正確に指定することでもなく、目の前に見えている箇所を、自然に、確実に測ることである。そこで画面上のルーラーを測りたい箇所へ近づけるだけで、自動で吸着し、挟み込むように寸法を得られる操作を考えた。
開発当初は単なるルーラー表示から始まった。しかしそれだけでは、ユーザーの意図に寄り添う操作感にはならない。吸着のコンセプトを取り入れたプロトタイプには大きな手応えがあったが、その後もなかなか仕様を確定できなかった。
例えば、ルーラーをどの要素に、どの距離で吸着させるかといったフィット感の定量化が課題であった。意図しない箇所へ吸着しすぎず、かといって手作業の負担を残しすぎないなど、自然な操作体験の実現に苦労した。タッチ操作そのものにおいても、指に対してどの点を中心に動かせば自然に感じられるかといった細部の挙動にも工夫を重ねた。
こうした直感的な操作の実現には、高度な要素検出処理と高速な応答性が必要であった。高速処理ソフトウエアの基盤づくりから取り組み、デザインと一体で作り込んだことが実現の突破口となった。
キャリパスナップはQM―Fitの多くの機能の一つであるが、「誰でも簡単に測れる」という本製品の価値を最も端的に示す機能である。測定を専門家だけの作業にせず、現場の誰もが扱える作業へ近づけることで、検査工程の標準化や省人化に貢献できると考えている。
【三菱電機】端子カバー形計測器 One touch MDU
この製品はブレーカーにワンタッチで簡単に装着可能で、電力使用量を確認できる磁気センサーデバイスである。ブレーカーで電力の“簡単計測”をコンセプトに、エネルギー消費の見える化と施工の省力化を同時に実現し、社会的課題であるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の裾野を現場解決レベルまで広げ、労働力不足の解決に貢献する。
このデバイスは変流器(CT)電流センサーに代わり、磁気センサーを用いたコアレス電流センサーを開発するとともに、変圧器(VT)電圧センサーに代わりブレーカー負荷端子部に直接接触するピンを搭載し、計測機能を動作させる制御電源をピンから得るようにした。そのため、電源ケーブルレスも実現する革新的なセンシング技術を搭載する。
従来のブレーカー端子カバーと互換性のある90ミリメートル幅/75ミリメートル幅の2タイプがあり、革新的なコアレスCT装備の計測ユニットとパネル表示ユニットの組み合わせで構成される。ブレーカーにワンタッチで取り付けて電力量を簡単計測でき、電力の見える化と施工性向上、配線レス、盤の省スペース化で省力化を同時に実現し、カーボンニュートラルと労働力不足の解消に貢献する。
デバイスは既設ブレーカーの端子カバーをスライドさせて交換するだけ。取り外しもボタンを押し込むだけのワンタッチ仕様で、簡単設置・施工での簡単計測を特徴とし、操作性・経済性に優れる。システム構成は、上位システム(サーバー、パソコンなど)およびシーケンサーにCC―LinkあるいはMODBUS RTU通信で、ブレーカー内の計測ユニットとパネル表示ユニットが無線接続される。さまざまなエネルギー管理が可能。
計測ユニットで計測した電力データは、盤の扉に付けられた専用のパネル表示ユニットに無線技術で伝送する。現場で計測値の見える化に対応するのみならず、さらにシーケンサーなど上位機器にデータを伝送し、エネルギー管理システムを構築する。パネル表示ユニットは、最大8個の計測ユニットと接続可能で、同一盤内に最大4台設置でき、32回路の電力量を計測できる。
このデバイスは従来品と共色でデザインされているが、セッティングを明示する的確なデザインによる差別化が十分ではなく、プロダクツバリューを訴求しきれていない点が惜しまれる。
製品はブレーカー端子部から電源供給するなど、新たなセンシング技術によって外付けセンサーと配線を不要とし、施工性の向上に寄与する点で画期的である。電源・通信・センサーケーブルレスな構造は、設置時の誤配線を防止でき、従来の端子カバーと同等形状・外形サイズのため、既設盤への導入が容易である。
【リガク】熱重量—示差走査熱量測定装置 STAvesta
本機の開発は装置と人との関係性を再設計することを基点とし、熱分析の自動化・高精度化・多用途化を実現する同時熱分析装置(STA)に照準し、研究現場における操作負荷・設定ミス・保守負担といった潜在的課題の解消を目指す。
製品は熱重量測定—質量変化(TG)と示差走査熱量測定—エネルギー変化(DSC)の同時測定が可能なSTA仕様となっている。従来機で培われた熱分析の基本性能として、分析の信頼性に直結するガス制御、温度制御の安定性・分析条件の再現性・拡張ユニットとの高い親和性などをシステム全体として最適化している。
TGは試料の重量が温度変化によってどのように変化するか、蒸発/脱水/分解/酸化/還元などでの質量変化を測定する。一方、DSCは試料と基準物質を同じ温度プログラムで加熱・冷却し、両者に生じる温度差からの熱エネルギー変化をセンサーで検出、素材の融点/ガラス転移点の評価/結晶化挙動や熱安定性の分析/反応熱などを測定する。
測定システムは検査試料を載せる水平てんびんを電気炉内で加熱し測定する。てんびん部の気密化・最適化や電気炉内装の均熱ユニットにより分析性能を支える「見えない設計」で、確かな品質をパソコン画面上の図表・グラフ化で見える化させる。性能向上を単なる数値競争にとどめず、常に安定性、再現性の得られる品質にこだわる。ただし、最大52試料の測定が可能なオートサンプルチェンジャー(ASC)や安全カバーはオプション仕様だ。
装置の操作は、操作手順の直感化を目指し、装置コーナー操作盤の自己診断のインジケーター(vestaeye、加熱—冷却/時間—温度)に集約し、誤設定を誘発しにくいインターフェースとしている。制御系は革新的なFlatBlank機能によるベースラインドリフト自動補正や、Rapid制御とアドバンス制御の組み合わせによる温度コントロールなどで分析性能にこだわる。点検、メンテナンス作業の負担軽減をうたい、装置トラブルや分析ロス低減、教育・引き継ぎコストの抑制や装置稼働率の向上といった経済的価値の実現を目指す。
てんびん部と電気炉、および電気系統の三つのブロックで構成される造形は、機能が必然として現れる研究装置の“カタチ”を示すが、オペレーターとの関係で定位される正面性は重要なポイントの一つである。プロダクトフェースを明示する製品の顔なのだが、やや散漫さが残る。
装置は業界初のSTAvestaeyeの「自己診断×自己補正」による信頼性設計で、測定精度を人の技能に依存せず、人為ミスと調整作業を排除する操作性のデザインにより、研究の本質に集中できることと、再現性を重要視する分析装置である。
