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第56回機械工業デザイン賞 IDEA
日本工作機械工業会賞/日本電機工業会賞
日本工作機械工業会賞
【ブラザー工業】ユニバーサルコンパクトマシニングセンタ SPEEDIO U500Xd2―100T
製造現場は大量生産から変種変量・多品種小ロット生産への転換が進む。特に自動車、半導体、医療機器などの分野では部品形状の複雑化に伴い多面加工のニーズが急増し、頻繁な工具交換に伴う段取り工数の削減は不可欠。また、人手不足や働き手の高齢化、脱炭素や国連の持続可能な開発目標(SDGs)などのテーマにも対応を要する。
本機は多品種小ロット加工に対応する連続無人運転、段取り工数削減、省スペース・省エネルギー・省コストな自動化システムの導入といった複合的な課題に対し、100本の工具収納力とオートパレットチェンジャーの連携により、長時間無人運転を実現する30番立型マシニングセンター(MC)である。
加工軸移動量をX軸500ミリメートル、Y軸/Z軸はそれぞれ450ミリメートル/380ミリメートルに拡大し、治具エリアは最大径500ミリメートル×高さ320ミリメートルの傾斜ロータリーテーブルを標準搭載する。また、タレット式マガジン28本、左右工具ストッカー各36本で収納本数100本のノンストップ自動工具交換装置(ATC)を新開発。二つの作業動線を阻害することなく相乗させて幅広い多面加工を実現し、多品種生産のボトルネックであった工具取り換え作業を排除した。
A軸とC軸にはノンバックラッシュのローラーギアを採用。高精度位置決めにより加工精度を向上させ、工程集約に対応する。機電一体型設計の最適化制御で無駄時間を削減、従来機比1サイクル消費電力量30%削減、生産性約1・7倍向上の性能を持つ。
100本マガジン管理に特化したATC工具アプリを搭載する制御装置「CNC―D00」は、15インチ液晶タッチパネル方式でホーム画面に生産に必要な情報を一元化し、直感的に操作できる。また加工プログラムと連動して、工具ストッカーからタレットへの一括移動を可能にし、準備時間を短縮している。加工室と左右工具ストッカーの間の自動開閉シャッターは、切りくず付着による加工不良防止とともに機内清掃の負担を軽減する。機械前面からテーブルまでは320ミリメートルで接近性・作業性に優れる。
製品の独創的造形は、コンパクトマシンに傾斜ロータリーテーブルと大容量100本マガジンを統合し、設置スペースを約40%削減する省スペース空間設計にある。ボックス型シンメトリックな製品は、右翼に制御盤を配し適度な緊張感をデザインする。一方、日常作業を支援する段取りサポート、加工調整サポート、生産サポート、復旧サポートなどの造系は、フォント構成や色彩構成に優れたユーザーインターフェース(UI)で視認性や操作性を高めている。
製品は100本マガジン搭載、最大径500ミリメートルの傾斜ロータリーテーブル、多品種少量生産の完全自動化により、省スペース設計と高速・高精度・高生産性を誇るコンパクトなMCに仕上がった。
工具収納・自動化対応力を一体化
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新開発の100本マガジン
産業機器開発部 開発1グループ スーパーバイザー 辻󠄀 俊輔
変種変量・多品種小ロット生産への移行、人手不足は現在の加工現場が直面する大きな課題である。従来、長時間の無人運転に対応するには、外付けの自動化設備や、大容量工具収納可能なチェーン式やマトリックス式マガジンを採用する40番以上の大型マシニングセンターを選択せざるを得ず、設置スペース、消費電力、導入コスト、段取り負荷が大きな制約となっていた。
そこで私たちは30番機ならではの高生産性、省スペース性、省エネルギー性を維持しながら、多品種生産に必要な工具収納力と自動化対応力を一体で備えた本機を開発した。
最大の特徴は、28本のタレットマガジンに加え、左右の工具ストッカー各36本を機内に内蔵し、合計100本の工具収納を実現した点である。当社のタレットマガジンはZ軸動作と連動して工具交換をするダイレクト式を採用しており、高い生産性を誇る。このタレットマガジンを生かした工具大容量化の実現を考えたことが発想の原点である。
省スペースを実現するために工具ストッカーを機内に内蔵すると、工具の加工エリアへの干渉を避ける必要があるという課題があったが、加工ヘッド左右のデッドスペースを活用し、工具を左右二つに分散させたことでブレークスルーした。
加えて、パレットチェンジャーPC―1との連携により、最大40枚のパレットを活用した長時間無人運転にも対応できる。工具交換、治具段取り、加工対象物(ワーク)交換に伴う停止時間を減らし、「人が段取りする機械」から「機械が削り続ける生産システム」へ進化させた点が、本開発の成果である。
本開発により、人手不足に悩む中小規模工場でも、省スペースで本格的な自動化や工程集約を導入しやすくなると考えている。加工現場の仕事を止めることなく、無駄を省き、環境負荷を抑えて生産する。この考え方が広がれば、工作機械は単なる加工設備ではなく、現場の働き方そのものを変える存在になるはずである。
日本電機工業会賞
【安川電機】YRMコントローラ(YRM1030)
自動化には全ての機器を高精度にデータでつなぎ、より高度なデータ活用が求められる。だが、多くの生産現場では装置単体の自動化にとどまり、装置間の加工対象物(ワーク)搬送や段取り作業が人手によって行われている。また、セル全体で収集した大量のデータは時間のずれにより、工程改善に向け正確な解析ができない現状がある。そこで、装置とロボットからなる自動化されたセルを容易に構築でき、変種変量生産の自動化に呼応する制御装置を開発した。
「YRMコントローラ」は多数の装置から構成される製造工程のセルを統合制御し、生産自動化を容易に実現、データの活用による継続的な改善とイノベーションを創出する。また、生産品種ごとの製造工程と各工程の作業をタスクとレシピデータとして管理し、セル内の装置・ロボットを制御する。
セル内のステータスデータとプロセスデータはワークごとに時間軸を合わせて統合・収集され、自動的に「Cockpit(YCP、フィードバックのソフトウエア)」に格納。「YCP」で解析したデータを制御装置にリグレッションフィードバックする。データの管理・統合/収集・格納・解析・フィードバックという統合機能によって時系列に沿う精度の高いデータの活用を可能とし、生産品の品質やセルの稼働率を向上させる。
エンジニアリングツール「YRM Studio」はタスクの実行順番などのセットアップ作業をドラッグ&ドロップで視覚的に設定でき、最小限のプログラミングで変種変量生産に対応する。また、大規模なシステムに対しては、制御盤内にユニットを安全に固定する構造で、ユニットのみの着脱が可能。拡張性・保守性に優れ、シンプルなエンジニアリングで装置や生産品種の追加・変更時の工程を劇的に削減する。
コントローラーは電源ユニット/中央処理装置(CPU)のほか、オプションとしてIoTユニット/カウンターユニットなどをメインに、デジタル出力モジュールが横に連続するユニット造形。樹脂製ハウジングの外観はライトグレー色を基調とし、剛性の高いアルミ製ベースプレートにマウント可能な構造であり保守性に配慮。最大で24台の機能ユニットと64列のデジタル出力モジュールの装着が可能だ。
この製品はデータを基に動きを変える「データドリブンなシステム」により、製造品種の追加・変更に対応する「自律分散型のモノづくり」を可能とする。シンプルなエンジニアリング、精度の高いデータ収集と活用は、生産現場における装置間のデータ制御を、人を介さずに行える。安全性の高いハードウエア構造によって、省人化・生産性を向上させ新たなモノづくりに寄与することは明確な評価点だ。
セルをデータ接続、生産を進化
技術開発本部コントローラ開発部 ソフトウェア開発課 池内 真史
YRMコントローラの開発において、私たちが着目したのは「装置を動かす」ことではなく、「セル全体をデータでつなぎ、生産を進化させる」ことであった。従来の生産現場では、個々の装置は高い自動化を実現している一方、装置間のつながりや、生産現場で発生するデータの活用は十分とは言えなかった。そのため、不良発生時の原因特定や生産改善が経験や勘に依存する場面も少なくなかった。こうした課題を解決するには、設備単位ではなくセル全体を一つのシステムとして捉え、データを中心に生産を制御する必要があると考えたことが発想の原点である。
開発で最も苦労したのは、セルを構成する装置やロボットを、共通の考え方で柔軟に制御できる仕組みを構築することであった。従来は品種ごとに制御プログラムを作り込む必要があり、品種追加や仕様変更のたびに対応が複雑化していた。セル全体を統合的に制御しようとすると、従来のプログラム中心の考え方では限界があると感じた。そこで私たちは、セル内で実行される作業を「装置タスク」として整理し、生産手順や条件を「レシピデータ」として管理する方式を採用した。
これにより、品種追加や仕様変更の際も、プログラムを大きく書き換えるのではなく、データを変更してセルの動きを変えられるようになった。装置中心からセル中心へ、さらにプログラム中心からデータ中心へ視点を変えたことが最大のブレークスルーであった。
もう一つの特徴は、装置ではなく「ワーク」を基準にデータを管理することにある。加工対象物(ワーク)ごとの工程履歴や実績データを時系列で蓄積することで、不良要因や生産課題を把握しやすくなる。今後は、こうしたデータを活用して生産条件の最適化や異常の予兆把握を支援できるコントローラーへ進化させていきたい。YRMコントローラを単なるセル制御装置ではなく、モノづくり現場の知見を蓄積・活用するプラットフォームへ成長させることが私たちの目標である。
