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茨城県産業 明日への挑戦
茨城県特集 座談会② “地域ぐるみの仕組み”が不可欠
圷 最後のテーマは「展望」です。皆さんが感じる“ひたちなかのこれから”についてうかがいます。行政・大企業・中小企業、それぞれの視点からお話しください。まずは大谷市長お願いします。
HNSを“共創の舞台”に
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市の取り組みを熱く語る大谷市長
大谷 展望として一番大きいのは、産学官金言の横串のネットワークを本格的に動かすことです。これまで業界ごとのコミュニティーはありましたが、異分野が交わる“越境の場”が不足していました。そこで立ち上げたのが「HNS(ひたちなかネットワークシステム)」です。
HNSは、企業・大学・行政・金融機関、マスメディアが固定の会員になるものではなく、“課題ごとに柔軟に集まれるプラットフォーム”として設計しています。人材育成、事業創出、研究連携、補助金獲得、事業承継、デジタル変革(DX)など、多様なテーマで顔が見える関係を作るのが目的です。行政は、企業がやりづらい横断的な調整や、情報のとりまとめができます。一方で企業はスピードと専門性を持っています。その掛け合わせを広げるために、HNSを“共創の舞台”に育てていくつもりです。
これからの20年を考えると、人口減少社会の中で「人が来たくなる街かどうか」が全ての起点になります。働く場所、住む場所、育てる環境。この三つを切り離さず、ひとつの生活圏として設計する。これができる都市が、今後は選ばれる。ひたちなか市は、そのポテンシャルを十分に持っていると感じています。
地域に根差した人材循環
久保木 当社としては、ひたちなかの新工場を半導体材料の中核拠点として育てていきたいと思っています。AI(人工知能)やデータセンターの急増で先端半導体の需要が世界的に伸びており、グループ内の製造基盤を強化する意味でも、ここひたちなかの位置づけは非常に重要です。地域との向き合い方については、これまで以上に重視していきます。特に人材面では、子ども向けの科学イベントや理科教育支援、大学との共同研究、中小企業との技術交流など、地域に根差した人材循環をつくっていきたい。
働き方の面でも、社員が家族とともに安心して暮らせる地域であるかどうかは大きな要素です。商業、医療、教育が身近にあり、移動もしやすいひたちなかの魅力を、企業としてもしっかり発信していきたい。「技術が進化しても、結局は“人”が中心」だという前提は変わりません。地域の皆さんと一緒に、その環境を作りたいと思っています。
地域全体で“人の循環”を
柳生 地域全体で“人の循環”をつくっていくことが鍵になると感じています。企業ごとに採用するのではなく、地域全体で先に挙げたデジタル技術文化のような具体的な魅力を高めて「ここで働きたい」と思ってもらう。中小企業だけでは難しく、大手・行政・大学と一緒に取り組む必要があります。
工業高校・大学との接点の強化が大事です。モノづくりの現場を知ってもらえる授業や職場体験を増やし、「設計や品質保証の仕事は地元でもできる」というイメージを若い世代に伝える必要があります。そして、外国人材の受け入れも地域として制度化しなければならない。住居・教育・言語支援など、市と一緒に基盤を整える仕組みがあれば、企業も安心して採用できます。強みを生かした地域づくりが必要です。
中小は“越境する力”必要
松木 これからの中小企業に必要なのは、技術だけでなく“越境する力”だと思っています。当社は医療機器と陸上養殖という、モノづくりとは違う領域に踏み出していますが、やってみて痛感したのは「地域内だけでは完結しない」ことです。
例えば養殖は販路がまったく違うし、医療機器は規制や品質保証が厳しい。どちらも商業・金融・大学などと連携しないと前に進まない。だからこそ、HNSのような“異業種が気軽に交われる場”は中小企業にとって非常にありがたい。そこに大学や商業、スタートアップも交われば、技術以外の知恵が集まってくる。
もう一つは情報発信です。地域には良い取り組みをしている会社が多いのに、知られていないままで損をしている。SNSも含め、地域ぐるみでブランド力を高める仕組みがあれば、採用でも事業でもプラスになる。企業が挑戦しやすい、風通しの良い地域になれば、ひたちなかの産業はもっと多角的に広がると思っています。
次世代へ技術の継承必要
菊池 展望としては、やはり“技術の継承”が最大のテーマです。今の50—70代が持っている加工・組立の技術は、ひたちなか地域の資産そのものです。この知恵をどう次世代へ受け渡すか。若い人が入りやすい環境を作ることが重要だと思っています。
そのためには、多様な働き方を整える必要があります。製造業でも、短時間勤務や柔軟なシフト、女性の復職支援など、間口を広げることで若い人が入りやすくなる。さらに、地域全体で製造業を“見える化”することも大事です。工場見学や技術体験イベントなどを増やし、モノづくりが身近にある地域だと感じてもらいたい。
そして、HNSのような場で大手・中小・大学が同じテーブルにつくことで、新しい技術交流や共同研究が生まれるはずです。ひたちなかの“モノづくり文化”を守りつつ、時代に合わせて進化させる。それが次の世代につなぐ仕事だと思います。
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異なる立場からひたちなか市の魅力や展望を語り合った
圷 「人を中心に据えた地域づくり」が共通のキーワードになっているように感じます。産業集積、技術伝承、研究連携、多様な働き方、外国人材、情報発信。これらを支えるのが産学官金の横断的なネットワークであり、その核としてHNSが期待されている。
社会や産業の環境が大きく変わる中で、ひたちなかが次の10—20年に向け、どんな地域像を描くのか。その輪郭が今日の議論から浮かび上がってきたように思います。
【寄稿】 常陽銀行 執行役員 コンサルティング営業部 部長 鈴木 新一 氏/産学官金言連携に期待
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常陽銀行 執行役員 コンサルティング営業部 部長 鈴木 新一 氏
本年7月「産学官金言連携キックオフ」にて、「ひたちなかネットワークシステム(HNS)」の活動計画を伺った。ひたちなか市は、人口15万2000人、生産年齢人口9万1000人、周辺地域からの通勤流入も増加している。また、企業は交通インフラや行政の支援、良好な生活環境を評価し、事業所数は県内で市町村別に6番目、工業団地もほぼ満床。港湾や高速道路網の整備も進み、企業が投資しやすい環境である。
さらに、地域には技術者が多く、製造業のサプライチェーン(部品供給網)が地域内で完結できる強固な産業基盤が存在している。また、工業・農業・水産・観光がバランスよく成長し、特に観光は県内最多の来訪者数を誇っており、恵まれた社会基盤を有している。
これまで、当行はひたちなか市の指定金融機関として、金融機能のみならず、企業誘致や輸出をはじめとする産業振興など地域特有の社会課題解決に資するコンサルティング機能の提供を通じ、強固な連携体制を築いてきた。
こうした背景を踏まえ、今後HNSとの連携強化により、「コンサルティングなどによる個別企業支援の強化」、大手企業やスタートアップを含めた「地域企業の交流促進」、地元の大学・企業と連携した地域の脱炭素化、脱炭素ビジネスへの取り組みなど「産学官金言連携の一層の促進」を協働して進め、新たなイノベーションの創出を図りたい。
