-
業種・地域から探す
続きの記事
茨城県産業
将来の飛躍に向けて挑戦を続ける茨城県産業界。原材料やエネルギー価格の高騰を受けて景気の先行きには不透明感が漂うものの、中長期的の経営基盤強化を見据えた人材育成や、新規事業創出を目指す取り組みが官民で着実に進展している。今回の「茨城県産業特集」では、大井川和彦茨城県知事のメッセージのほか、県内の企業立地動向、県内の国立大学の動向や大手企業の地域貢献などを10ページにわたり紹介する。
ひたちなか市制30周年・ひたちなか商工会議所設立20周年/今とこれから
茨城県の中央部に位置するひたちなか市が、11月で合併による誕生から30周年を迎えた。県内有数の観光資源を抱えながら、大規模な工業団地には大手・中堅企業が数多く立地する。県庁所在地の水戸市とも隣接し、ベットタウンとしても知られる。また自治体の合併で誕生したひたちなか商工会議所も、4月で設立20周年となった。市内事業所の75%が入会する商工会議所で、手厚い企業支援が強み。それぞれのトップに現在の取り組みや今後の方針を取材した。
茨城港、内外物流の結節点/大手工場・中堅・中小企業が集積
-
大型貨物船が停泊する茨城港の常陸那珂港区(ひたちなか市)
ひたちなか市は、人口約15万人で、面積101・02平方キロメートルの自治体だ。1994年11月に勝田市と那珂湊市が合併して誕生した。市の東部は太平洋に面し、大型の貨物船やクルーズ船が寄港する茨城港常陸那珂港区、海鮮食材を楽しめる那珂湊おさかな市場を持つ。国営ひたち海浜公園や大型商業施設も建ち並び、休日には多くの人が訪れる。
モノづくり企業が集積しており、常陸那珂港区臨港地区には日立建機常陸那珂臨港工場、コマツ茨城工場、市西部には日立製作所水戸事業所、日立ハイテク那珂事業所さらに、これらの工場に部品を供給する中堅・中小企業が多く立地している。市東部では、茨城県による常陸那珂工業団地の拡張が予定されており、今後の経済発展が期待されている。
-
ひたちなか商工会議所の経営相談会の様子
ひたちなか商工会議所はひたちなか市誕生から10年後の04年4月に、二つの商工会議所が合併して生まれた。現在は約4050社が所属。県内有数の会員数だ。20周年にあたり今後の指針として「ひたちなか商工会議所ビジョン・ヒタチナカノカタチ2024ー2033」を策定して、人と企業が輝く地域社会の実現に向けて活動する。
近年は観光産業にも力を入れ、19年には日本商工会議所の「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」で大賞を受賞した。既存会員のサポートに加えて地域の創業支援スクールなども進め、多面的な地域振興に取り組む。
自立と協働のまちづくり推進/ひたちなか市長 大谷 明 氏
-
ひたちなか市長 大谷 明 氏
ーひたちなか市の経済の特徴は。
「農業と水産業、工業がバランス良く発展している。特産品である干し芋や、近年漁獲量が増えている伊勢エビなど、地域ならではの豊かな資源を観光事業と結びつけてPRし、地域全体の魅力向上を推進している。また、大手から中堅・中小企業までモノづくり企業が集積している。大型船が寄港できる港湾は、国内外の物流の結節点としても機能する」
ー都心部から100キロメートル圏に位置しています。
「企業立地や物流拠点としての役割のほか、コロナ禍以降に地方移住という選択肢が広がりを見せる中、多くの注目を集めている。また、若者を中心に都心部と地方の2拠点生活への関心が高まっており、阿字ヶ浦地域の海の魅力を生かしたワーケーションなどを通じ、市に興味を持ってくれる人を増やしていきたい」
ーまちづくりで意識していることは。
「市民に『シビックプライド』を持ってもらえるような施策に取り組んでいる。また、住む人だけでなく、仕事で通う人や観光で訪れる人なども含め、市のファンになってもらいたい。2010年に制定した『ひたちなか市自立と協働のまちづくり基本条例』を最高規範として、住民主体のまちづくりを進める」
ー次期総合計画策定に向けた取り組みは。
「民間のマーケティング手法を活用し、市民ニーズを調査・分析することで行政課題を明らかにしている。市政の基本方針を示す総合計画は、26年度から始まる第4次計画の策定に向け、市民とワークショップを重ねている。市民の言葉の背後にある状況や言葉にできない本質的なニーズをくみ取り、計画に反映させる。また、市民の主観的評価に加え、他自治体との比較など、客観的評価を取り入れ、総合的に評価・分析する手法の導入を検討している」
事業承継 M&Aも含めて支援/ひたちなか商工会議所 会頭 柳生 修 氏
-
ひたちなか商工会議所 会頭 柳生 修 氏
ーひたちなか商工会議所の特色は。
「企業支援が手厚い。日常的に生まれる小さな相談から、事業承継などまで幅広く取り扱う。特に19年の新型コロナウイルスの蔓延など中小企業の経済的な打撃が大きかったタイミングでは、会員企業の補助金や助成金の申請などをサポートしてきた。会員数を増やすだけでなく、会員企業に対して〝何ができるか〟を重視している」
ー地域への貢献も進めています。
「市内店舗などの利用促進と地域の消費の下支えをを目的にひたちなか市とともにプレミアム付き商品券を発行している。16回目となる今年も9-11月を使用期間として計8億4000万円分の商品券を発行し、地域の皆さまに多くご利用いただいた。商品券の使える店舗も豊富であり、結果的に会員企業数の増加にも繋がった。このほか市内を周遊するサイクリングイベントの運営や、地元の花火大会の支援などをしている。地域全体が盛り上がる事業にしたい」
-20周年を迎えて見えてきた課題は。
「会員企業の経営者の高齢化と後継者不足が大きい。事業停止と同時に商工会議所を抜ける企業も少なくない。事業承継やM&A(合併・買収)も含めて支援する。必要があれば、損失の少ない事業の〝上手な畳み方〟も教える。近年は物価上昇も著しい。飲食店や製造業は価格転嫁に苦労している話を聞く。定量的な情報も使いながら、適切に利益を出せるように支える」
ー今後の展開は。
「海外に向けて地域ブランドの認知拡大を進めたい。15年8月に米ロサンゼルスでひたちなか商工会議所の現地事務所を開いたが、コロナ禍の海外渡航制限なども影響して、活用し切れていない状況だ。海外の日本食ブームにも乗りながら、干し芋など地元の食材を広めたい」
モノづくり・農水産業…多様な産業が発展/市制30周年記念式典
茨城県ひたちなか市は市制30周年の記念式典を市内で開いた。来賓や市内の事業者、市民ら約1100人が参加し節目を祝った。大谷明市長は「製造業を中心に多くの企業が立地するモノづくりの街であり、農業や水産業など多様な産業もバランス良く発達してきた」とした上で「皆さんと築いてきた価値を守りながら魅力あふれる街づくりを目指していく」とあいさつした(写真)。
市の魅力や歴史を振り返る映像を上映し、地域に伝わる伝統芸能で日本3大民謡として全国に広まった「磯節」などを披露した。