-
業種・地域から探す
続きの記事
茨城県産業
将来の飛躍に向けて挑戦を続ける茨城県産業界。原材料やエネルギー価格の高騰を受けて景気の先行きには不透明感が漂うものの、中長期的の経営基盤強化を見据えた人材育成や、新規事業創出を目指す取り組みが官民で着実に進展している。今回の「茨城県産業特集」では、大井川和彦茨城県知事のメッセージのほか、県内の企業立地動向、県内の国立大学の動向や大手企業の地域貢献などを10ページにわたり紹介する。
大手製造業の地域貢献
茨城県内に立地する大手製造業が、地域貢献を進めている。環境問題への対応や、住民との交流イベントを企画する。重要な製造拠点として長く操業している事業所も多く、地域に根ざした取り組みが活発だ。
水戸事業所内の自然環境保全/日立ビルシステム
-
サギ山に散策路を整備し、地表面の明るさを確保する
日立ビルシステム(東京都千代田区、網谷憲晴社長)は水戸事業所(茨城県ひたちなか市)内の自然環境保全に日立製作所と取り組む。事業所内の約20%は緑地帯で、動植物や昆虫など300種以上が確認された豊かな環境にある。環境省が生物多様性を維持する地区を認定する「自然共生サイト」にも2月に認定済み。工場から排出される二酸化炭素(CO2)の吸収や、保全活動を通じた従業員のエンゲージメント向上にも寄与する。
水戸事業所の緑地では、ハヤブサなどの猛禽類からウサギやタヌキなどの哺乳類、チョウなどの昆虫類が多く確認される。このほか高さ25メートル以上あるアカマツが自生する。特に事業所南側にある約3万平方メートルの緑地「サギ山」には、水戸事業所を設立した1940年当時から育ってきた樹木などが残る。
-
エレベーター実験棟の麓の「サギ山」に集まる「日立水戸サギ山クラブ」のメンバー
緑地の維持や保全計画は、従業員の有志団体「日立水戸サギ山クラブ」が担う。日立ビルシステムと日立製作所の従業員約20人が参加。活動日は明確に定めず、必要に応じてメンバーが集まる。外部の環境コンサルタントとともに植生の調査や遊歩道の整備をする。
従業員の家族を招待したイベントなども開き、楽しみながら活動する。同クラブに設立当初から参加する日立ビルシステムの岩田竜一部長代理は「〝ノルマ感〟を出さず、あくまでもメンバーが楽しむことを重視している」と強調する。2015年に事業所内の自然環境保全を本格化させた頃、行政や民間非営利団体(NPO)の活動事例を調べ、住民自らが主体的に動いている事例ほど環境保全に成功していることに気付いた。
一方で課題も多く残る。水戸事業所を担当する環境コンサルタントは「自然環境の保全も、人間が手を加えない状態が良いのではない」と断言する。高木や高草が成長すると、地表面に生息する植物まで太陽光が届かず、成長の妨げになる。自生するササの伐採など、適度に人の手を加えて多様な動植物が生活できる場を醸成する。
特別支援学校で生徒に清掃法を〝伝授〟/JX金属
-
JX金属の社員らが見守る中、生徒たちは清掃に励んだ
JX金属が障がい者の社会活躍を後押ししている。このほど、磯原工場(茨城県北茨城市)の社員らが茨城県立北茨城特別支援学校を訪問。知的障がいを持つ生徒に対し、より良い清掃の方法を〝伝授〟した。学校との連携も深めて、地域貢献を進める。
同校で清掃の社会人講師を務めるJX金属コーポレートサービス(東京都港区)の松崎雅明氏は「一生懸命に学ぼうとする姿が見えてうれしい」と顔をほころばせた。
高等部3年生の11人が参加し、テーブル拭きや掃除機のかけ方を学習。JX金属の社員が見守る中、生徒は一人ひとり手を動かして清掃に取り組んだ。テーブル拭きでは、直線を意識して拭き残しがないようにすることなどのコツも体得した。
両者の連携は、卒業生がJX金属コーポレートサービスに就職したことをきっかけに2022年ごろ始まった。横山ふさみ校長は「どの生徒にとっても、清掃は就業先や日常生活で必要な能力。教員も机の運び方など勉強になることが多い」と強調する。今後も相互の連携を強めていく方針だ。
J2水戸に協賛 日立市でサッカーフェス
-
日立市内で開いたサッカーフェス(左から2人目が相場玲宏日立事業所長 )
フットボールクラブ水戸ホーリーホック(水戸市、小島耕社長)は、JX金属の協賛により、「水戸ホーリーホックサッカーフェスティバルin日立」を茨城県日立市で開いた。
JX金属はサッカーJ2水戸ホーリーホックとトップパートナー契約を結んでいる。当日は水戸ホーリーホックとJ3大宮アルディージャとの親善試合を実施。日立市民ら1628人がイベントを楽しんだ。
試合は2対0で水戸ホーリーホックが勝利した。キッチンカーなどが出展したほか、小学生向けサッカー教室を開いた。JX金属日立事業所長の相場玲宏執行役員は「スポーツの力を発揮してほしい。日立市は創業の地。重要な場所だ」と強調した。
また水戸ホーリーホックの小島社長は「多くの市民が楽しんでいる姿が見えた」と笑顔を見せた。
稲作実証研究 福祉施設に収穫米寄贈/コマツ
-
茨城大学阿見キャンパス(茨城県阿見町)で開いた贈呈式(右から2人目が黒田教授)
コマツは茨城大学とともに、実証研究で収穫したコメを茨城県内の福祉団体などに寄贈した。経済的に困窮する人への援助が目的。寄贈を受けたボランティア団体ami seedの清水直子代表は「2024年はコメが高騰して困っていた。県内の施設が、この寄贈米に助けられている」と笑顔を見せた。
コマツと茨城大は農業ブルドーザーを使った稲作の省力化について、茨城県稲敷市で「乾田直播(ちょくはん)水稲栽培」を実証研究している。ブルドーザー前部のブレードで農地を平らにし、後部のアタッチメントで種子を直接農地にまく。従来の種子をトレーで育てて田植えする手間を省き効率化できる。
実証で収穫したコメ17トンを県内44団体に寄贈した。同大の黒田久雄教授は「20年後の農業人口は現在の5分の1ほどになる。1農家当たりの生産性を5-10倍に引き上げなければ」と持続可能な農業の実現に向け決意を示した。
地域向け工場イベント開催/日立建機
-
アスタコとの玉入れ勝負
日立建機は土浦工場(茨城県土浦市)で、「第17回日立建機フェスティバル」を開いた。工場を地域住民に公開し、油圧ショベルやホイールローダーなどの展示・操縦体験会を通じて日頃の感謝を伝えた。家族連れなど計6500人が訪れ、秋の休日を楽しんだ。
目玉の双腕仕様機「アスタコ」の実演では、事前に会員制交流サイト(SNS)の投票で選ばれた参加者との「玉入れ勝負」を行った。アームの先端にかごを準備し、そのかごに向けて参加者はボールを投げ入れた。かご内の基準線を越えてボールが入り、参加者が勝利した。
このほか、地域の物産・軽食販売や子ども向けにキャラクターショーを開いた。土浦工場は敷地面積49万4000平方メートルで、中型油圧ショベルを国内外向けに量産している。