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地球環境
EV・自動運転で脱炭素化へ
4月13日に開幕する2025年大阪・関西万博に向け、モビリティー分野の環境関連の新しい取り組みが始まっている。大阪メトロはバスの電気自動車(EV)化を進めるとともに、自動運転の社会実装を目指した実証試験を行っている。万博開幕までに174台のEVバスを導入、万博会場内外での輸送に用いるとともに、路線バスのEV化を拡充する。35年度をめどに500台を超える路線バス全車両をEV化する。昼間走行して夜間充電する車両が多いと見られる中、充電コストを低減する仕組みを築く。自動運転は一定条件下で無人走行できるレベル4での社会実装を目指す。
路線バスEV化、円滑な運行・充電を両立
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自動運転の実証実験を進めているEVバス
大阪メトロは関西電力、ダイヘン、大林組、東日本高速道路と共同で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択され、EVバスの円滑な運行と効率的な充電の両立を図る。運行計画の作成や管理、車両手配などを行う運行管理システム(FMS)を開発し、車両への充電を制御するエネルギー管理システム(EMS)と連動させ、エネルギー効率化を図る。「充電時の電力使用量のピークを抑えることで電気の基本料金をできるだけ低くする」(大阪メトロ)のが狙いだ。
FMSでは翌日に予定する走行距離や電池残量をベースに充電の優先順位を決める。効率的な充電での最適運行を目指す。担当者が手作業で管理する必要がなくなり、現場負担も軽減できる。また走行中給電システム(DWPT)を導入してEMSと連携、充電可能な経路情報を得る機能を持たせる。
EMSとFMSは想定通りに稼働するかを検証している。万博までに運用技術を確立させる方針。
万博では会場内周遊バスやパーク&ライド用駐車場と万博会場を結ぶシャトルバスなどで実証する計画。会場内周遊バスでは一部区間にDWPTを設ける。車体10台程度に設置するコイルと路面に埋設したコイル同士を通電させて充電し、機能や効果を確認する。EMSとFMSの相互接続の実証も行う。
万博後も万博での実証を基に改良して高性能化し、2年間程度大阪市内の公道で実証する。数百台規模の実験で効率運用するシステムを確立できれば国内で活用される可能性が高く、他のバス事業者などへの販売を検討する。ただ各営業所などに設ける充電や受変電設備のコスト低減が実用化への課題だ。「充電設備の小型化による省スペース化は可能だ」(同)と捉える。
EMSとFMSにより運行計画に沿った中での電力使用の負荷平準化を図れる。充電時のピーク電力使用量を下げられれば大容量の充電設備が不要で、投資コストを抑えられる。また充電時に再生可能エネルギー由来電力の活用を進めれば脱炭素化に貢献できる。
DWPTも路線バスを中心に公道で実証する。公道に埋設できれば事業所外の運行経路上で充電でき、充電効率が高められる。高速道路にも対応したDWPTと汎用型EMS・FMSとの連携技術を確立するなどで社会実装を目指す。DWPTを実用化できれば夜間の一斉充電を減らせ、設備運用の効率化や脱炭素化につながる。
一般道路でレベル4実験、自動運転実装へ
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レベル4での自動運転実現に向けて運転手付きで実証実験するEVバス
自動運転も万博の会場内外輸送で実証する計画。さらに万博閉幕直後から、路線バスの廃止があった大阪府南部の南河内地域で乗客がいるケースも含めて3年間程度実証実験する。民間バス事業者が路線廃止した地域などでレベル4での実証を目指し、「万博のレガシーとして公共交通の確保を図る」(同)。実用化では無人運転時の車いす利用者などへの対応が課題だが「30年度までの社会実装を目指す」(河井英明社長)と意気込む。
実装へは社会受容性も必要だ。安全・安心な乗り物として利用してもらうための理解、走行中にほかの車両のドライバーに譲ってもらえる理解などがないと公共交通としての役割を果たしにくい。「専用道路ではなく一般道路で実験するところもある。現時点では珍しい」(同)と説明、実用性に加えて社会から理解を得るための実験環境を整えている。
EVと自動運転で脱炭素化と運転士不足への対応を進める。人件費削減につながるほか、24時間運行も可能な利便性向上も図れ、持続可能なサービスとしての確立を目指す。高齢化社会への対応も視野に「一定のモビリティー、サービスを用いて大阪全域でネットワーク化し、圧倒的に便利にする」(同)と意気込む。
LED・太陽光活用、CO2を削減
大阪メトロでは環境対策を全ての事業活動の基本に位置付ける。地下鉄車内や駅構内の照明を蛍光灯から発光ダイオード(LED)に置き換え、25年度の照明での消費電力を地下鉄で従来比36%減、駅構内で同65%減を目指す。
保有建築物の屋上などへの太陽光発電装置の設置も進める。耐荷重に課題がある場所では軽量・薄型の太陽光パネルの導入を検討、25年度の年間発電量11万キロワット時を目指す。鉄道への電力供給の安定化に向けて太陽光と燃料電池を組み合わせた発電施設も整備する。25年度の年間発電量8000キロワット時を目指す。
これらで25年度の二酸化炭素(CO2)排出量を13年度比で40%減、50年度に実質ゼロを目標に脱炭素社会につなげる。