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環境分野/新発想の取り組み活発
中部地方の企業は環境分野への取り組みにも積極的だ。工場の労働環境を改善する新発想の空気清浄機を展開したり、木質廃棄物の再資源化事業を強化したりしている。輸送時の二酸化炭素(CO2)排出量削減と「2024年問題」という社会課題の克服を合わせて進める施策もある。環境分野でも盛んな中部企業の動きを追った。
集塵機に着想、空気清浄
新東工業は工場内の粉塵を除きつつ、空気中の菌やウイルスの増殖を抑える空気循環清浄機「ダスミックJXMaxシリーズ」を発売。新たな形の労働環境改善を提案する。
この清浄機は工場向けの集塵機をベースに開発。空気を吸引し粉塵を除去しながら、菌やウイルスは不活性化させ、清浄な空気にして工場内に戻す。粉塵が飛散する工場空間の使用できる空気清浄装置は珍しい。
同社は集じん機や排ガス浄化装置などの環境装置の製造販売を手がける。今回、溶接や切削加工などで粉塵が飛散しやすい製造現場にある集塵機に着目。工場内の空気を清浄して循環させる機能を持たせ、一般の集塵機では装置外に出すだけの排気に付加価値を加える新しいタイプの製品に仕上げた。
木質廃棄物で発電燃料
木質廃棄物を再資源化に注力するのはフルハシEPO。輸入燃料・木材の高騰で国内の木材チップ需要が増えている上、リサイクル燃料に対する社会的評価の高まりもあり、受注を増やしている。
供給する木材チップは紙・パルプ、ボード建材の原料やバイオマス発電の燃料に利用。供給先のニーズに合わせ加工プロセスを制御し、品質要求を満たした木材チップの安定供給できるのが強みだ。
新規生産拠点として2022年5月に岐阜第二工場(岐阜県大垣市)、11月に西東京工場(埼玉県入間市)を開設。また、国内2カ所でバイオマス発電事業に参画し、燃料の木材チップを供給する。
バイオマス発電は化石燃料を使わないクリーン電力として注目される。「将来的にエネルギーは地産地消の時代に向かう」(上野徹取締役)と循環型社会への貢献を目指し、推進していく考えだ。
産業ガス鉄道輸送シフト
ジャパンマテリアルは半導体製造用ガスの輸送時の環境負荷削減に向け、新たな試みを始めた。JR貨物、日本トランスシティと共同でガスの長距離輸送の実証実験を実施。三重県と岩手県間の輸送において、トラック輸送に代わる貨物鉄道との併用輸送の可能性を検証。CO2排出量削減に加え、物流業界の「2024年問題」の解消も図る
国内では北は北海道から南は熊本県まで大規模な半導体工場の建設計画が相次ぎ、半導体材料の国内輸送の急増が予想される。だが、物流業界ではトラック運転手に時間外労働の上限規制を適用する2024年問題で輸送能力の低下が懸念されており、その対策が求められている。
大同特殊鋼取締役常務執行役員 岩田 龍司氏/脱炭素貢献製品こそ価値
2050年のカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)など脱炭素へのアプローチは企業の必須課題と言える。大同特殊鋼もロードマップの策定や組織体制を進めている企業の一つ。同社はこれにとどまらず自社製品の競争優位性の確立や環境に配慮した製品の地位向上も狙う。脱炭素に取り組む意義や意味を取締役の岩田龍司常務執行役員に聞いた。
稼ぐ力とサステナビリティー 両輪に
―21年に「大同CNチャレンジ2030」というビジョンを掲げ、22―23年は社内の組織も整備しました。
「30年に二酸化炭素排出量(CO2)を13年比で半減し、50年にゼロにするためのロードマップを示した。まず、30年までに自社の努力でCO2を13%減らす。残り37%はCO2フリー電源を購入する計画。22年4月には社長直轄の『サステナビリティ委員会』を立ち上げ、23年1月に『ESG推進統括部』を組織した。全社でCNの活動を強化・推進する体制をつくった」
―企業にとって重要なのは収益の確保です。環境保護は収益につながるのでしょうか。
「企業が存続するには稼ぐ力が必要。成長がなければ存続もない。一方、企業は社会やステークホルダー(利害関係者)から認められなければ存続することはできない。社会の要求に応える必要がある。稼ぐ力とサステナビリティー(持続可能性)は企業運営の両輪だと思う」
―CNの取り組みは仕入れ先や供給先との連携も必要です。
「仕入れ先の約200社とはCO2がどこから出て、どう減らすのか一緒に考えている。供給先は自動車メーカーなどであり、我々より先行する。CO2の削減目標だけでなく、製品一つあたりの排出量を把握する。顧客の脱炭素に貢献するだけでなく、顧客に選ばれる製品を目指す」
―海外の一部地域ではCO2排出量の少ない製品の価値が高まっています。
「今後、間違いなくそういう時代がくる。技術力やコストに加え、CO2排出量も製品の競争力を評価する指標になるだろう。他社より排出量が低ければ、より高く購入してもらえる可能性もある。そうなればその費用をCO2削減の原資として使える。当社も先陣を切ってお客さまに働きかけられるよう準備をしていく」