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スタートアップ・ベンチャー/起業家志す学生の教育に注力
スタートアップやベンチャーを生み出したり、育成する動きが中部地方で活性化している。2024年に名古屋市昭和区に開設予定の日本最大級のスタートアップ支援拠点の準備を進めるステーションAi(名古屋市中村区)は、学生に向けた起業家育成プログロムを実施。また、中部の大学は起業家を志す学生の教育に注力する。次世代の産業界の担い手となるスタートアップベンチャーの創出が期待される。
育成プログラム本格始動/大学連携・合同プロジェクト活発化
ステーションAiは学生向け起業家育成プログラム「STAPS」を22年にはじめた。約1・5カ月で事業開発や仮説検証といった起業の手法を学ぶ。これまで2回開催し、愛知県内外から約130人の学生を集めた。参加後にはスタートアップで就業体験して更なる経験を積む学生も現れている。今夏の開催では約110人の申し込みがあった。
また、愛知県は6月、大学などの研究機関から生まれた最先端の科学技術「ディープテック」を武器とするスタートアップの支援に乗り出した。
県内産業との親和性が高い創業期の企業に対し、最大4000万円の研究開発費を支援する。専門家による経営や研究開発の伴走支援も展開することで破壊的なイノベーションを生み出す狙いとしている。
大学も学生に企業を促す施策を推し進めている。愛知県立芸術大学と愛知県立大学では、21年に活動を開始した「AAI起業部」で学生が起業家ノウハウを学んでいる。両大学合わせて、部員は約120人。アートとテクノロジーの融合でイノベーションの創出を目指すなど芸術系大学の学生ならではの視点もあり、クリエーティブな力を生かした起業が期待できそうだ。
両大学の学生による文理融合した環境が特徴だ。部内で仲間を募り、チームでビジネスアイデアに取り組んでいる。
これまでにチームでビジネスプランコンテストに出場したり、ビジネスアイデアを発表したりするイベントの開催など活動の範囲を広げてきた。同部のメンバーの中には「Tongaliアイデアピッチコンテスト」受賞者もおり、実績を重ねている。
愛知県立芸大では21年度から美術学部デザイン・工芸科デザイン専攻でアントレプレナー教育を取り入れている。起業家育成の教育を通じて、学生の資質、能力を伸ばす環境づくりを進めている。
名古屋大学をはじめとした中部の大学が参画する起業家育成プロジェクト「Tongali(トンガリ)」も活発となってきた。
当初は5大学からなる取り組みだったが、今では愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の23大学が参画。学生のみならず、研究者の起業支援にも乗り出している。
中小企業基盤整備機構 中部本部 企業支援部長 瀬崎 恭弘氏/地域全体にエコシステム
インキュベーション施設をはじめとする多様な支援策を展開する中小企業基盤整備機構は、創業支援のノウハウや関係機関とのネットワークを生かしてエコシステム形成の一翼を担っている。「地域の有望なスタートアップを発掘したい」と力を込める中小機構中部本部企業支援部長の瀬崎恭弘氏に支援策の取り組みを聞いた。
支援ノウハウ・ネットワーク駆使
―中部地方でのスタートアップ創出の動きをどう見ていますか。
「中部経済連合会、愛知県、名古屋市、名古屋大学および浜松市が主導役となり、金融機関などを含めた地域のステークホルダーが連携しながらエコシステム形成が進んでいる。2024年10月には愛知県による日本最大級のスタートアップ支援拠点『ステーションAi』が開業予定で、岐阜県や三重県でも行政を中心としたスタートアップ支援が始動するなど地域全体にエコシステムが拡大している」
―スタートアップ支援策の特徴は。
「スタートアップの成長段階に合わせた総合的な支援を展開している。インキュベーション施設の運営やファンド事業のほか、23年度から『スタートアップ挑戦支援事業』を開始した。全国10カ所の地域拠点にスタートアップ支援の経験が豊富な専門家を配置し、戦略立案や資金確保など成長の過程で直面する多様な課題の解決に対応する」
「アクセラレーションプログラム『FASTAR』も着実に実績を重ねている。参加企業に専門家が1年間伴走し、成長戦略や事業計画のブラッシュアップを支援するプログラムに取り組み、ベンチャーキャピタルからの資金調達、大企業との事業提携などを目指す。このほか、中小企業向けマッチングサイト『J-GoodTech』を活用し、大学発ベンチャーのシーズを中小企業につなげるといったことも考えたい」
―スタートアップ支援に向けた意気込みは。
「国のスタートアップ育成5カ年計画の一翼を担う立場として、これまでに培った支援ノウハウ、ネットワークを駆使して地域のエコシステム形成に貢献していく。私自身も大学を巡るなど、有望なスタートアップの発掘に汗をかきたいと思っている」