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新技術/ファインバブルで環境負荷 低減
直径100マイクロメートル(マイクロは100万分の1)に満たない微細な泡である「ファインバブル」。構成するのは水と空気のみながら、洗浄や滅菌に優れた効果を発揮し、SDGsにも適する次世代の技術として注目を集めている。中部地方の企業もまたファインバブルを活用し、環境負荷を減らす製品の開発につなげている。
切削・研削・洗浄液を浄化/異物・油分除去ユニット
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スギノマシン 微細コンタミ・油分除去ユニット「JCC-HM」
スギノマシン(富山県滑川市、杉野良暁社長)は、使用済みの工作機械用の切削液や研削液、洗浄機用の洗浄液に含まれる微細な異物(コンタミ)や油分を除去するユニット「JCC―HM」を市場に展開している。ファインバブルを活用し、油や液を効率的に浄化できる。液の再利用を促すことで、環境負荷やコストの低減を後押ししている。
液中の粒子を凝集させるファインバブルの特性を利用して、処理液中の切粉や油分といった異物を浮上・分離させて洗浄。タンク内の構造を工夫し、洗浄能力と効率を高めた。空気を動力とし、電源が不要。エアと給排水のホースをつなぐだけですぐに稼働できる。
フィルターを用いないため回収した切粉や油分以外の廃棄部材が出ない。洗浄液の交換周期が約3倍に伸びた事例もあるという。
液面に浮いた異物を除去する「浮上油回収ユニット」も用意。四つのフロート(浮き)が回収ユニットを液面に浮かせ、液面に浮上してたまっている油分を回収する。納入済みのJCC-HMに対しても、接続部の配管を変更することで後付けが可能。液中だけでなく液面に浮いた異物も除去でき、JCC-HMの油分回収量を2倍以上に増やせる。
切削液や洗浄液に混入した油分は液の腐敗の原因となり、悪臭を発生させたり、液の機能を低下させたりする。液の交換にはコストと労力がかかるほか、劣化した液は産業廃棄物として処理する必要がある。このため、環境負荷低減の観点からも、液を再利用する動きが広がっている。
「ウルトラ」微細泡発生/ガス給湯器 高付加価値化
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リンナイの微細な気泡を発生させるガス給湯器「ウルトラファインバブル給湯器」。浴室や洗面所、キッチンで汚れや水あかが付きにくくなるという
リンナイは給湯器の付加価値を高める技術としてファインバブルに着目。そして、通常のファインバブルよりもさらに小さい直径1マイクロメートルの泡「ウルトラファインバブル」を発生させるガス給湯器「ウルトラファインバブル給湯器」を2022年に発売した。細かい隙間の汚れを落とす作用によって浴室や洗面所などの汚れや水あかが付きにくくなるという特徴を持つ。内藤弘康社長は「普通の水より汚れが落ちやすくて販売台数が伸びている」と語る。
家庭向けのガス給湯器として業界初の製品だ。湯の水圧を変えて水中の空気を気泡にする仕組みで、泡が入った湯を蛇口を通じて使える。1ミリリットルの湯に約1700万―約2200万個の泡が含まれており、数週間から数カ月残っているという。新たな水道配管の工事は不要。同社によると、一般的な湯と比べて水あかの付着は18%減り、排水管の汚れも付きにくいとしている。
累計出荷100万本 ダブルスパイラル技術搭載/微細気泡発生シャワーヘッド
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MTGでは、微細な泡を発生させるシャワーヘッドの販売台数が累計100万本を突破した
MTGでは22年に微細気泡を発生させるシャワーヘッドの累計出荷数が100万本を突破した。100マイクロメートル未満の「マイクロバブル」と1マイクロメートル未満の「ウルトラファインバブル」の二種類の気泡を扱っている。肌や髪への効果を期待する美容への関心が高い層を中心に売れている。
疎水性相互作用という特性を活用し、水と混じりにくい疎水性の汚れを気泡が取り除いて肌を洗浄するという。肌にうるおいも与える効果があるとされ、同社によると使用後には肌の角質水分量が約36%上昇するとしている。節水効果も期待できるという。
水の加圧と減圧によって気泡を作る「ダブルスパイラルキャビテーション」と呼ぶ技術を搭載。販売中の製品重量は約250―約345グラムに抑えた。
同社は13年から気泡を発生させる機構を取り付けたシャワーヘッドを販売。今後は美容や洗濯など日常生活向けの製品にも技術を活用していく考えだ。
医薬向け需要拡大 次世代の主力製品に/超微細ナノサイズ気泡発生器
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ノリタケカンパニーリミテドが販売するファインバブル発生器「セラポール」。材料加工や化学反応、バイオ医薬品向けなど幅広い用途に使える
さらに小さな気泡の発生器を次代の主力製品に育てようとしているのはノリタケカンパニーリミテドだ。
同社のファインバブル発生器「セラポール」は数十ナノメートル(ナノは10億分の1)もの超微細の気泡を作れる。多孔質のセラミックス膜に気体を供給するだけで気泡をできる点も特徴だ。高粘度の液体にも供給できるため、医薬向けでの需要も期待される。液体に力を加えない方式のため、せん断力や摩擦熱による液体の温度上昇や変質は起こらないという。
24年度には、売上高を22年度比4倍の2億円に引き上げる計画だ。
セラポールは3種類の型を提供する。一つ目は浸漬型。発生器の外側に気泡を供給する仕組みで、バイオ医薬品の製造で使われる。二つ目はインライン型。管を流れる液体に気泡を供給するもので、化学反応に使う。三つ目はノズル型で、研削や洗浄用の液体に気泡を添加できる。
開発当初は研削や切削工具の寿命を延ばす狙いで販売していた。だが実は、ペースト状の液体やスラリー液にも使えるという利点から細胞や藻類の培養のほか有機化合物の水素化反応などの医薬向けの需要が伸びている。23年度では同発生器の売上高の6割が医薬分野となる見通しだ。