-
業種・地域から探す
続きの記事
みちしるべ ~持続的成長へ 次世代モノづくりを中部から~
デジタル変革(DX)による現場力向上と脱炭素化へ向けた新たな取り組み/特別シンポジウム8月31日開催
日刊工業新聞社は8月31日、名古屋東急ホテルで「みちしるべ~持続的成長へ 次世代モノづくりを中部から~」と題し特別シンポジウムを開く。オーエスジー第2製造部の桝田典宏部長が「現場力を後押しするDX化」で千代田化工建設事業創造部事業デザインセクションの川井英司セクションリーダーが「脱炭素化へ向けた合成燃料の位置付け・技術・将来的な発展性について」のタイトルで講演する。産業界で関心の高いデジタル化、合成燃料について考える。同シンポジウムは日刊工業新聞社とモノづくり日本会議(事務局=日刊工業新聞社)中部地区研究会、名古屋産業人クラブ(森誠会長=富士精工会長)の共催。
OSG 第2製造部 部長 桝田 典宏氏/デジタル推進チーム選抜
OSGは国内のマザー工場であるNEO(ネオ)新城工場(愛知県新城市)で超硬ドリル、超硬タップ、ハイスドリル、ハイスエンドミルを製造する。月当たりの生産本数は約70万本で、種類は6000、ロットは8000にも上る。これほどの多品種少量生産を実現しながら、生産体制のデジタル変革にも取り組むスマートファクトリーとして2020年5月に稼働した。ネオ新城のDXについて工場長を務める桝田典宏第2製造部部長に聞いた。
本気度伝わり意識に変化
―ネオ新城工場で「デジタル推進チーム」を設けました。
「既存のIT部門とは別に、製造技術、生産管理などさまざまな部署から知見を持った社員を集めた。メンバーは専任で生産現場のデジタル変革(DX)に取り組んでいる。生産状況などを見える化したシステムは全員がゼロから勉強をして作り上げた」
―米マイクロソフトが提供するデータビジュアル化ツール「Power BI」を用いて自社開発したシステムで生産状況を見える化しました。
「開発したシステムでは、製品・工程・機械ごとの納期に対する進捗(しんちょく)や機械の稼働率などさまざまな切り口で見える化した。リアルタイムでのトラブルの把握だけでなく、信頼できる生データが収集できるため、数字を根拠としたトラブルへの対策や改善提案などができるようになってきている。今後は集めたデータを基に、人や機械の最適化して生産性を向上させる」
―DX化には現場の意識改革が必要です。
「導入後はデジタル推進チームが現場社員向けに、少人数単位でのシステム活用の教育を実施。そこで汲み取った現場の意見で改善を重ね、会社が変わろうとしているという姿勢を見せた。本気度が伝わることで現場の意識も変わってきた」
―今後の展開は。
「国内外の主要工場の生産状況などを一元管理する『ワンファクトリー』構想のため、ネオ新城はシステムのバグ出しをする。それでシステムを標準化し、他工場やグループ各社、海外拠点まで横展開する。材料メーカーやコーティング会社などにも協力してもらっており、サプライチェーン(供給網)全体での連携も進めている」
千代田化工建設 事業創造部事業デザインセクション セクションリーダー 川井 英司氏/合成燃料、水素コスト課題
千代田化工建設は液化天然ガス(LNG)など石油・ガスのプラント建設が得意な一方、脱炭素の新規事業に力を入れる。その一つが合成燃料だ。再生可能エネルギー由来の電力によるグリーン水素と回収した二酸化炭素(CO2)を合成して製造する。ガソリンやジェット燃料の代替に期待されており、エネルギーや自動車大手が熱視線を注ぐ。同社で合成燃料を研究する川井氏に聞いた。
製法に改良余地
―合成燃料が求められる背景は。
「国際エネルギー機関(IEA)が予測するように、内燃機関の自動車は残る。全て電気自動車(EV)に置き換わるわけではなく、特に発展途上国はそれほどEVを必要としていない。欧州でも合成燃料を認める流れに変わりつつある。エネルギートランジション(移行)への現実路線になっている」
―事業化にはどんな課題がありますか。
「化石燃料よりコストが高いことだ。2020年時点では、合成燃料のコストのほぼ8割は水素とされている。再生エネのコストが安いチリや中東で水素を製造するのが最近の潮流だ」
―CO2回収のコストをどうみますか。
「けっこう利いてくる。CO2の濃度が下がると、回収コストは高まる。例えば天然ガスの燃焼排ガスは濃度が低く、回収コストは高い。今は濃度が高い場所から回収しようとしているが、将来的にはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)のため、濃度が低い場所からも回収しなければならない」
―どのように製造するのですか。
「大きく分けると三つの製造方法がある。RWGS―FTパスという、CO2を一酸化炭素に還元する方法では、強固なCO2を分解するために触媒開発が必要なこともある。メタノールから製造する方法は二つある。開発自体はほぼ完了しているが、反応効率や稼働率向上の余地がある。一つはジェット燃料まで製造するが、炭素を伸ばさなければならず、触媒の改良余地がある」
―ENEOSから合成燃料の実証設備を受注したのがモデルケースになりそうです。
「さまざまなお客さまから要望をいただいている。皆さまの脱炭素に伴走する」