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化学産業
環境負荷低減に貢献/カーボンニュートラル
化学業界にとってカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応は今後の付加価値の創出に向けて重要な取り組みだ。化学各社は多様な取り組みを活発化している。環境負荷低減に貢献する化学品に加え、リサイクルを促進する取り組み、環境に優しい燃料を活用するなどの動きが目立っている。
循環型社会への道 着々
独自製法 米にプラント
UBEは米国ルイジアナ州でジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を手がけるプラントを建設する計画だ。2月に起工式を開いた。独自の気相ナイトライト法で製造され、エチレン由来の製法に比べて低エネルギー消費、高品質、副産物や不純物が少ないという特徴があるという。
CO2原料 製造技術供与
旭化成も二酸化炭素(CO2)を原料として活用する高純度エチレンカーボネート(EC)や、高純度DMCの製造技術ライセンス供与の提案に取り組んでいる。
未利用材で本革を再現
三洋化成子会社のサンノプコ(京都市東山区)は、国産木材の未利用材を使って本革の見た目や質感を再現した高機能テキスタイル「モックテックス」を手がける。サンノプコの分散技術や消泡技術を生かし、木材を高い比率でバイオマス樹脂中に分散した。国内森林資源の有効活用やカーボンニュートラル実現などに貢献する。
また目立ってきたのが、リサイクルを広げる動きだ。業界や地域連携に関わる取り組みが出てきた。
プラ容器回収 再生品に循環
茨城県鹿嶋市や三菱ケミカルグループ、東洋製缶グループホールディングス(HD)など6者は、茨城県でプラスチックの資源循環に向けた実証実験を計画する。「参加いただいている各企業の協力を得ながらサーキュラーエコノミー(循環経済)を実現していきたい」と、田口伸一鹿嶋市長は意気込む。
小売店などを含めて業界横断的に連携し、三菱ケミカルのケミカルリサイクル(CR)技術などを通じたプラ容器の資源循環の枠組みづくりに取り組む。回収などした廃プラを三菱ケミカル茨城事業所(茨城県神栖市)に設けるCRプラントなどを通じて樹脂に再資源化する。東洋製缶グループHDで再資源化した樹脂を使った容器を製造し、キユーピーはドレッシングの容器に使う。スーパーマーケットのカスミ(茨城県つくば市)の店舗で対象の商品を販売し、店頭でプラ容器回収も担う。実証実験は2025年夏頃めどにスタートする構え。26年3月までに検証結果を発表する予定だ。
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三菱ケミカル茨城事業所のCR設備
実際、三菱ケミカルの茨城事業所に設けたCR設備は国内最大規模となる年2万トンの処理能力を持つ。「超臨界水」と呼ばれる高温・高圧の状態の水の中で廃プラを分解し、生成油にする仕組み。その生成油を石化製品などに再生品化することで資源循環につなげる構えだ。
また三菱ケミカルグループは、コーセー子会社のアルビオン(東京都中央区)と化粧品容器の資源循環モデル構築に向けて協業。アルビオンで発生する梱包資材の廃棄物を三菱ケミカルのCR設備を生かして油化し、ポリプロピレン(PP)に再生した後、新たな化粧品容器の材料へと再生するモデルづくりに取り組む。
建設資材プラ 再資源化
リサイクル関連では出光興産と、JNCなどが出資するJNCエンジニアリング(千葉市中央区)は、油化CR装置を建設する際に発生する使用済みプラスチックの再資源化で協業する。装置建設時に生じる梱包材や緩衝材、養生シートなどを活用して生成油を製造し、石油化学製品などの原料への活用を目指す。将来はJNCエンジが他の装置を建設する際に生じる使用済みプラスチックもリサイクルに活用するなど、取り組みの拡大も視野に入れる。
ボイラ燃料にバイオメタン
燃料の関連では、エア・ウォーターはLNG(液化天然ガス)の代替燃料となる家畜ふん尿由来の「バイオメタン」の製造から販売に至るサプライチェーンを確立し、ボイラ燃料などとして利用するよつ葉乳業の十勝主管工場へ納入している。各社の幅広い取り組みを含め、カーボンニュートラルや循環型社会実現への道が着々と進みつつある。