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化学産業
安定供給で産業活動 支援/化学品物流
【執筆】 化学産業企画 代表取締役 高橋 英晴
生活や産業に欠かせない化学品の中には、法律が定める危険物に指定されているものも存在する。化学品を安全かつ安定的に保管・輸送する化学品物流は、社会で非常に重要な役割を担っている。さまざまな課題に直面する化学品物流の現状と今後の展望について、関連3団体の会長に語ってもらった。
日本危険物コンテナ協会 会長 大森 寿明 氏/危険物コンテナ 多層式—高度化進む
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日本危険物コンテナ協会 会長 大森 寿明 氏
現在、輸送単位の大型化や安全性確保の観点から、危険物コンテナの需要はさらに高まっている。例えば、熊本県では半導体工場の新設などを背景に半導体製造向け化学品の荷動きが活発になっている。半導体向けに加え、医療向け薬品など危険物の指定を受ける製品の需要が拡大する中、危険物コンテナの果たす役割はより重要なものとなっている。
日本では化学品の高付加価値化が進み、多品種少量生産が進んでいる。このような動きに対応するべく、コンテナ内部のライニング素材にフッ素樹脂を使ったり、コンテナ構造を多層式にするなど、危険物コンテナの高度化も進んでいる。種類の違う化学品を一つの危険物コンテナで輸送するケースもみられる。
こうした化学品物流を担う人材の育成や確保は、重要な課題となっている。
今後は、国土交通省や消防庁など政府とも連携し、化学品物流を担うための人材育成を支援していきたい。他方で、人が対応している危険な作業をロボットなどに代替するためのデジタル化推進も、業界全体で取り組む課題だ。これについても注視していきたい。
日本危険物倉庫協会 会長 瀬戸口 仁三郎 氏/危険物倉庫 安全在庫—旺盛な需要
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日本危険物倉庫協会 会長 瀬戸口 仁三郎 氏
半導体製造に必要な化学品・高圧ガスは危険物に該当する場合があり、安全在庫としてストックしておく必要性から危険物倉庫に注目が集まっている。リチウムイオン電池(LiB)もモビリティーにとどまらない用途の広がりが進み、危険物倉庫需要を押し上げる要因となっている。
こうした中、危険物倉庫の設備投資は旺盛に推移している。しかし、地価や建築コストの高騰によって竣工後の採算がとりにくくなっているという傾向もある。化学品の輸出入では、輸出が伸び悩んでいる。一方で、国際的に価格競争力が低い商品の国内生産を停止する動きが加速しており、輸入品に代替される動きが広がっている。
働き方改革の一環となる労働安全衛生法の改正により、危険物倉庫業者には「化学品管理者」の選任が義務付けられた。扱う商品の性状を詳しく知り、管理していくことが求められている。当協会としては、改正内容などの周知のため、協会の業務委員会で専門家を講師として招き、会員各社の認識を深める機会を設けている。
日本タンクターミナル協会 会長 宮川 靖嘉 氏/タンクターミナル 持続可能な物流に貢献
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日本タンクターミナル協会 会長 宮川 靖嘉 氏
タンクターミナルは液体化学品の保管に欠かせない設備であり、法令で定められた危険物を含む液体化学品を安全に取り扱うノウハウを必要としている。当協会はタンクターミナルを保有する会員企業で構成される。
昨今のタンクターミナルの稼働率は非常に高く、100%の状態が続いている。高稼働の背景には、汎用製品を中心に海外からの輸入が増えていることなどが挙げられる。
この状況で、設備投資による貯蔵容量の増強が求められているが、各種規制などによって立地の確保が難しく、増設は一定程度にとどまっているのが実情だ。老朽化したタンクを立て替え、取り扱う化学品の多品種少量化に対応するケースもみられるが、液体化学品のロジスティックを持続可能なものとするための業界の模索が続いている。
環境対策としては、フォークリフトの電化が進んでいるほか、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない電力を使用するケースもみられる。また、化学品を一定温度に保つためのボイラの燃料を、重油から液化天然ガス(LNG)に転換することを検討する会員企業もある。