-
業種・地域から探す
続きの記事
化学産業
高性能化進む機能性材料
モノづくり革新―国際競争力の源泉
化学メーカーが持続可能な成長に向けて欠かせないのが、高付加価値を生み出す機能性材料の開発だ。化学関連各社は動きを活発化させ、イノベーション創出に向けて新たな研究開発拠点を開設したり、拡充したりしている。
研究開発拠点/イノベーション創出―新たな拠点
-
三菱ガス化学のMGCコモンズ
三菱ガス化学はイノベーションセンターのMGCコモンズ(東京都江東区)を2023年12月に開設した。人材育成や外部連携の拠点として活用し、ユニークな空間を通じて新たな発想などを後押しする。
クレハは東京都江東区に東京研究所を開設した。新商品や新事業開発においては、優秀な人材の確保や、情報収集能力の強化などが課題であると捉え、それらを解決する研究開発体制を構築するための施策の一つだ。
-
日本ゼオンの共創イノベーション施設(イメージ)
日本ゼオンは川崎市川崎区の川崎工場と総合開発センターの融合を図り「川崎イノベーションフロンティアポート」とした。敷地内に、共創イノベーション施設を新設する計画。26年度の完工予定だ。新施設は工場と研究室の従業員が同一フロアで働き、社外の関係者とも交流しやすい構造にする。羽田空港に近い同工場の周辺ではライフサイエンス関連企業の集積が進んでおり、協働によるイノベーションを図る拠点として整備する。
竣工後に注力するリチウムイオン電池(LiB)向け材料開発では強みの電池評価・解析技術を駆使。信頼性の高い環境で顧客課題の早期発見などに取り組む。
岩通ケミカルクロス(東京都杉並区)は、岩崎通信機と岩通マニュファクチャリング(福島県須賀川市)の共同新設分割により22年に発足。印刷技術で培った化学技術を生かし、環境配慮型社会に対応する機能材料の開発を目指す。
岩通ケミカルクロスは、めっきを施す前の電気回路製作の新技術として「電気印刷」を提案。フィルムに回路パターンを印刷し、電気回路をつくる電気印刷は、独自開発のトナーで回路を現像、フィルムを変形させた後に銅めっき処理を行う。そのため銅回路を断線させることなく、曲面にも電気回路を作れる。
合成繊維/環境配慮・機能性向上を両立
合成繊維メーカー各社は機能性向上と環境配慮を両立させた素材の開発に注力している。24年は素材メーカーや商社による繊維事業の撤退・縮小が相次いで発表された。汎用品との差別化を図るべく、機能性の追求や環境負荷低減といった付加価値を創出し、競争力の確保につなげている。
-
東レが開発した「シルック美來」を使用したワンピース
東レはシルクに似た風合いを持つ合成繊維「シルック」シリーズで植物由来原料を使用した「シルック美來」を和装・洋装用途として開発した。ポリエチレンテレフタレート(PET)原料の約30%を占めるエチレングリコールを、従来の石油由来ではなくサトウキビから砂糖を製造する際の副産物に代替した。
また繊維断面を精密に制御する複合紡糸技術「ナノデザイン」を活用することで天然シルクのような自然な光沢に仕上げた。今後はエチレングリコールと重合するテレフタル酸を含めて、全て植物由来のPET原料に置き換えることを目指す。
帝人フロンティア(大阪市北区)は、接触冷感機能と汗のべたつき防止機能を両立する快適素材「クールシェルカラット」を開発した。肌側に撥水(はっすい)糸を配置することで汗処理機能を持つ特殊構造体「トリプルドライカラット」と接触冷感機能を持つ「ウェーブロン」の機能を融合させた。
ウェーブロンは新たに撥水性タイプを開発。撥水性と吸水性の2種類のウェーブロンを配置した肌側層と、吸収した汗を拡散する外側の拡散層の2層構造にした。また、リサイクルポリエステルを100%使用している。
クラレは人工皮革「クラリーノ」から、漁網や養殖ロープなどからリサイクルされたナイロンを使用したランドセル向けの「アクアデュオ」を発売した。従来の軽さや耐久性などの機能性は維持しながら、環境性能を高めた。アクアデュオは人工皮革のベースとなるマイクロファイバー不織布のナイロンに、漁網などからリサイクルされた原料を100%使用している。