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埼玉県川口市
金融機関一押し 個性派・実力派企業7社
埼玉県川口市は、東京都心に近く交通アクセスにも恵まれた立地にあることから、古くから製造業を中心とした産業が発展してきた。鋳物や金属加工、機械部品、精密加工など、さまざまな分野のモノづくり企業が集まり、地域経済の一端を担っている。現在も技術を磨きながら、各社がそれぞれの強みを生かした事業を展開している。今回、地域活性化のために中堅・中小企業を支援する7金融機関に、技術力やビジネスモデルに特徴がある「一押し企業」を紹介してもらった。各企業の製品や技術の特徴、今後の成長戦略などを聞いた。
川口鍛工所/90周年記念 鍛造製ペグ製品化
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川口鍛工所 石田 哲 社長
川口鍛工所(埼玉県川口市、石田哲社長)は鉄やステンレスなどの熱間精密型打ち鍛造を手がける。トラックなど自動車のエンジン回りの部品や建設機械のシリンダー部品など「保安部品」と呼ばれる重要パーツを製造する。「金属を1200度C以上に熱してたたいて作るため、強靱(きょうじん)な製品になる」と石田社長は強調する。
5台のハンマーとプレス機で幅広い業種の多様な製品を製造。さまざまな形状やロットに対応する。試作から量産まで手がけるほか、金型の設計・製作から一貫生産できる。
1936年に創業し、今年8月から90周年目に入るのを記念して、鍛造製ペグを製品化した。キャンプでテントなどを固定するための金属製の杭で、ロープを通す穴の部分に「90」をデザインした。記念品として取引先に配り感謝の意を伝えるとともに、次のステップで、一般消費者向けにデザインしたペグを、ネット販売などにより拡販していくことも検討していく。
<埼玉りそな銀行 川口支店 藤本 達也 支店長>
多様なニーズに対応可能な技術力をもつ鍛造品製造業者。来年90周年を迎える同社を今後も支援していきたい。
いわき/品質・環境などISO4規格取得
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いわき 小林 正勝 社長
いわき(埼玉県川口市、小林正勝社長)は生産工程で部品などを運ぶ工業用プラスチックトレーの専門メーカー。自動車部品や光学機器部品、電子部品など幅広い分野の製品を扱っており、工場間や取引先に輸送する際にキズやほこりを防ぐ。「設計から金型製作、成型まで自社で一貫して手がけているのが当社の特徴。きめ細かい要望に応じて短納期で対応できる」と小林社長は強調する。
川口市内に本社のほか、営業本部や開発センターなど3拠点を構える。群馬県桐生市の北関東工場でトレーの真空成型を行う。高速連続真空圧空成形機など用途に応じた6台の成形機を備える。品質、環境、事業継続、情報セキュリティーなどISO(国際標準化機構)の4規格を取得して顧客からの信頼を高めている。「若い社員が多く社員教育にも力を入れている。企業として成長し続けることが大切。社員の成長なくして会社の成長はあり得ない」と人材育成にも力を入れている。
<武蔵野銀行 川口支店 渡部 嘉夫 執行役員 川口支店長>
プラスチック真空・射出成型品および同金型の製造・加工・販売業者。同社の事業発展を今後も支えていきたい。
手塚運輸/トラックで多様な価値を届ける
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手塚運輸 手塚 嘉明 社長
手塚運輸(埼玉県川口市、手塚嘉明社長)は、トラックを活用した多角的なサービスを提供している。1914年創業で、イベント資材などを運ぶ輸送事業を基盤としながら、全長16メートルの国内最大級の巨大移動トラックなど特殊車両の開発・提供にも力を入れている。
トラック全面に商品などを施した特殊車両は広告効果が高く、イベントやキャンペーンの場で広く活用。製作難易度の高いデザインにも積極的に取り組んでおり、大手食品・飲料メーカーや有名アーティストによる依頼も多数手がけてきた。
車両の製作から保管・メンテナンス、運行までをワンストップで手がけるのが強みで、顧客の多様な要望に柔軟に応えている。手塚社長は「荷物を運ぶだけでなく、トラックを通じて多様な価値を届けたい」と語る。自動運転車両などの新技術の導入にも積極的で、大手企業による実証実験へ協力している。次世代の物流・移動サービスを見据えた取り組みを進め「トラックを使ったサービスのナンバーワン企業」を目指して事業領域を拡大する。
<商工中金 さいたま支店 鈴木 清輝 支店長>
トラックを起点に商機を見いだし、経営の多角化・企業価値向上を実現。今後も同社の事業展開を支援していく。
グリットアーツ/人型ロボ販売子会社を設立
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グリットアーツ 関口 眞由美 社長
グリットアーツ(埼玉県川口市、関口眞由美社長)は、2017年に関口社長が創業した。サーバーやロボットなどの保守サービス、システムインテグレーション、レンタルラボの3事業が柱。「日本一の保守会社になることが、会社立ち上げ当初からのスローガン」と関口社長は話す。
3月には双日と草刈りロボットの保守パートナーシップ契約を結んだ。レンタルラボは本社施設の4階に約200坪(約660平方メートル)のスペースを構え、機器の検証やテスト環境を提供する。荒川を挟んで東京都と隣接しており交通アクセスにも優れる。長期の顧客向けスペース「AIファーム」の拡充にも力を入れる。
2月にヒューマノイド(人型)ロボットを販売する子会社「GAロボティクス」を設立した。「販売代理店を務める中国UBテック・ロボティクスのロボットの貸し出しサービスなどにより、日本の製造業に対して人型ロボの導入を支援していきたい」と意気込む。
<日本政策金融公庫 浦和支店 飯澤 貴志 支店長>
ロボット機器のメンテナンス・サポートの保守サービスをどこよりも早く事業化したパイオニア企業。同社の成長を引続き支援していきたい。
イナバ工芸社/アクスタ製造、色彩再現は随一
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イナバ工芸社 石塚 信吉 社長
イナバ工芸社(東京都足立区、石塚信吉社長)は、アクリル板への印刷・加工を手がける。特に、人気アニメキャラクターをモチーフにしたアクリルスタンドやアクリルキーホルダーは国内外のアニメファンから注目を集める。日本アニメの人気とともにキャラクターグッズ市場も成長し、同社も事業拡大中だ。
埼玉県川口市に2工場を構え、UVインクジェットプリンター30台、レーザー加工機30台を整備。都心近郊という立地を生かし、短納期で柔軟な対応を可能にしている。製造から出荷までを迅速に行える体制は、イベントなど納期が厳しい案件にも対応でき多くの企業から需要を集める。
確かな技術力に裏打ちされた高品質な製品づくりも強みだ。「顧客が求める繊細な色合いを表現するには、職人の感性と経験がものをいう」と石塚社長。4原色の配合一つで印象が変わるアクリル印刷で、色彩再現のノウハウは随一だ。今後について石塚社長は「BツーC(対消費者)市場にも積極的に挑戦したい」とさらなる成長を目指す。
<埼玉縣信用金庫 川口朝日支店 阿部 勇二郎 支店長>
アクリル板への印刷・加工を手がける企業。高品質な製品づくりが強み。今後も同社の事業展開を支援していきたい。
小貫金網製作所/装飾・デザイン分野へ進出
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小貫金網製作所 小貫 好弘 社長
小貫金網製作所(埼玉県川口市、小貫好弘社長)は、金網加工、レーザー加工、精密板金加工の3事業を柱とする。創業100年の歴史を背景に、多品種小ロットに柔軟に対応できる体制を整えている。
板金加工・レーザー加工設備を自社で備えることで溶接までワンストップで対応。長年培った加工技術と職人技によって、金網や産業機械向けフィルター、装飾用途など多様な需要に応えている。
今夏、大手ファッションブランドのポップアップストアで、意匠性の高い金網制作物を展示するなど、装飾・デザイン分野への展開を進めている。これまでの産業用途に加え、視覚的魅力や空間演出を求める領域にも対応し、金網の新たな可能性を切り拓く。
今後は自社商品の開発にも力を入れる方針だ。「『デザイン経営』にもチャレンジして持続成長を図りたい」と小貫社長は力を込める。
モノづくりの多様化が進む中、同社は既存の技術に加え、新たな用途への挑戦にも積極的。産業とデザインをつなぐ提案力を強みに進化を続けていく方針だ。
<川口信用金庫 飯塚支店 中里 浩章 支店長>
創業100年を迎え、若手3代目社長のもとさらに飛躍が期待される金網加工・レーザー加工販売の老舗企業。今後も同社の事業発展を支えていきたい。
シントーコー/溶接工程の自動化を強化
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シントーコー 望月 一成 社長
電車線支持物を手がけるシントーコー(埼玉県川口市、望月一成社長)が、溶接工程の自動化を強化する。同社はJRや私鉄への納入実績を持ち、鉄道インフラの安全運行を支えてきた。近年鉄道各社で、鉄道を高架化・地下化することにより踏切を除却し、踏切渋滞や事故を解消する「連続立体交差事業」が進んでいる影響などから受注が増加。一部は外注で対応してきたが、自社内で完結できる体制の構築を目指し、2022年からロボ導入を進めてきた。
既存工場にはすでに鋼管パイプを溶接するロボット1台を導入。今回、約1億5000万円を投じ近隣の工場を買い受け新作業場として年内に稼働。既存工場で担っていたメッキ後の仕上げ工程を作業場へ移し、空いたスペースを新たなロボットの設置に充てる。
溶接ロボは中長期で3台体制とし約7割を自動化する目標。将来的には外注ゼロを見据える。人手不足対策と品質の均一化、納期の短縮にもつなげる。
同社は27年6月期に25年6月期比25%増の売上高20億円を目標とする。内製強化による生産性向上で鉄道事業のニーズ拡大に対応する。
<青木信用金庫 並木町支店 秋吉 孝幸 支店長>
電車線支持物専門メーカーとして日本のインフラを支える地元企業。今後も同社の発展のために支援していきたい。
