-
業種・地域から探す
続きの記事
埼玉県川口市
川口市のモノづくり企業 あくなき挑戦へ
埼玉県川口市には、加工技術を中心とした中小企業が数多く集まっている。こうした企業の多くは、長年にわたって培ってきた高い技術力を武器に、地域に根ざした事業を展開している。近年は、原材料費の上昇やエネルギーコストの増加、関税の影響、さらには人手不足など、事業を取り巻く環境は依然として厳しい。こうした環境下にあっても、製造工程の自動化や新サービスの開発、積極的な設備投資など持続成長に向け相次ぎ手を打っている。あくなき挑戦を続ける3社の取り組みを紹介する。
フジムラ製作所/一丁目一番地、DXを推進
-
スギノマシンが開発した溶接ロボットを導入するなど、溶接工程の自動化を推進している
少量多品種の板金加工を得意とするフジムラ製作所(埼玉県川口市、藤村智広社長)が、製造現場の自動化と自社ブランドによるBツーC(対消費者)事業を強化し、新たな成長軌道を描く。藤村社長は「デジタル変革(DX)推進は一丁目一番地」と語り、溶接工程の自動化を最優先課題に掲げている。
同社では現在3台の溶接ロボットが稼働しており、3月にはこれらの稼働率向上を目的としたロボ推進チームを設立した。
チームは外段取りの効率化やロボット適用可能な製品の洗い出しに取り組み、約80種類の製品で溶接工程をロボット化する計画を進めている。小ロットの製品でも10ロット以上から積極的に自動化を推進し、生産性向上と品質安定の両立を目指す。
一方自社ブランド「デジタルストラクチャー」は、レンタルボート向けの製品販売から事業領域を拡大する。8月末には、デジタルストラクチャーのホームページ上で消費者が直接製品を依頼できるカスタムオーダーの仕組みを立ち上げる予定だ。これにより、個人のニーズに応じた一点物の製品を、フジムラ製作所の高度な板金加工技術で実現する。デジタルストラクチャー事業で2030年6月期に売上高3億円を目指す。
生産現場の効率化と消費者直結の販売チャネル拡大の両輪で、フジムラ製作所は持続成長を目指す。
フカガワ/空調ダクトのECサイト提供
-
業界初、空調ダクトのECサイト「ダクトクラウド」(イメージ)
フカガワ(埼玉県川口市、深川和己社長)は、空調ダクトの成型機器や空調工事関連部材の製造・販売を手がけている。同社は空調ダクト関連部材のオンライン販売を中心とした業界初の自社電子商取引(EC)サイト「DuctCloud(ダクトクラウド)」の提供を始めた。部材の検索から購入までをすべてオンラインで完結でき、納品までのプロセスを効率化。購買体験の向上に貢献する。
商品画像も表示されるため、目的の商品を直感的に選べ、操作性に優れる。空調ダクトに使用される部材は、接ぎ手やボルト、ネジなど細かな消耗品を含め40—50種類に及ぶこともあり、どの部材を注文するかの把握が困難。ダクトクラウドは全体の完成イメージをビジュアルで把握しながら必要な部材だけを簡単に選定できる。
また、自社のダクト成型機を導入している中小ダクトメーカー向けに、クラウド型製造管理システム「PRO—DUCT(プロダクト)」を10月をメドに販売。製造現場の業務効率化に向け、成型機からの自動データ取得により、製造工程の進捗管理、作業実績、材料使用量、出荷履歴などをリアルタイムで一元管理できる。
両サービスは連携できる予定で、製造管理から出荷、部材注文までを一元管理。深川社長は「業界全体のDX化を推進する」と強調し、デジタル化と業務効率化を推進するプラットフォームの構築を進める。
川金ホールディングス/免震装置向け生産体制を強化
-
光陽精機の本社外観
川金ホールディングス(埼玉県川口市、鈴木信吉社長)は、子会社の光陽精機(茨城県筑西市)の本社工場に約10億円を投資し、免震装置向けの生産体制を強化する。主力だった大型建設機械向けの油圧シリンダー製造ラインを修正し、成長が見込まれる免震・制振ダンパーなど建築・土木向け製品の製造にも注力。2026年度中に稼働する計画だ。
今回の投資は、免震装置の需要が本格回復することを見越したもの。現在、土木・建築の現場では人手不足や資材価格の高騰により工期の延期や発注控えが相次ぎ、設備の需要が伸び悩む。一方老朽化したインフラの更新や地震への備えなど中長期的にはニーズがある。鈴木社長は「仕事が少ない今だからこそ将来に向けた準備が重要」と説明する。さらに老朽化した光陽精機本社社屋の建て替え工事も実施しており25年内に完成する計画だ。
川金HDは免震関連の事業強化を進めている。免震装置を手がける中核子会社・川金コアテック(埼玉県川口市)は、約30億円を投じて茨城県結城市の結城工場に橋桁を支える橋梁用支承や建物を支える建築向けの免震装置の新生産棟を増設。27年度の稼働を予定し、光陽精機の再編とあわせてHD全体で免震装置の供給体制強化を図る。川金HDの25年3月期売上高は約450億円。27年3月期に24年度比11%増の売上高約500億円に拡大する目標だ。
