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県央エリアの有力企業③ 小型 高精度ニーズ対応・新サービス拡充
マイクロテック・ラボラトリー/世界最小クラスのエンコーダー提供
マイクロテック・ラボラトリー(MTL、相模原市南区、野村優介社長)は回転数や回転位置を計測するロータリーエンコーダーやダイレクトドライブ(DD)モーターの開発から製造、販売、サポートまで一貫して日本国内で対応する。世界最小クラスのロータリーエンコーダーを開発したのが90年代初頭。小型化、高分解能化することで、組み込んで使う装置の小型化、高速化に貢献してきた。小型で高トルクのDDモーターは半導体製造装置の需要を取り込み販路が拡大しているほか、ロボット、医療など幅広い分野で活用が進んでいる。
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小型化・軽量化を実現し、内部にケーブルや光を通すことができる中空モーター製品群
MTLは1981年設立。同社のロータリーエンコーダーは世界最小クラスを実現し、直径5.5ミリメートルの光学式エンコーダーを開発するなど、その特長から「マイクロエンコーダー」と称される。ロボットや医療用機器など技術革新が進む分野でも活用され、現在、3000種類以上の製品についてカスタム対応している。
「マイクロエンコーダー」開発における小型化のノウハウで開発したDDモーターは、2015年に市場投入。手作業で製品を高密度に組み込み、高性能磁石と高密度巻き線技術により小型化・軽量化を可能にし、高いトルク密度を実現している。ギアレス構造で高い静音性や高精度な位置決めができ、威圧感がなく、なめらかに動作するのが特長。外力の検知にセンサーが不要で、安全・簡単にロボットなどに搭載できる。中空軸構造で、内部にケーブルや光を通すことができ、装置の省スペース化や高精度化につながる。エンコーダーとDDモーターを一体化させ省スペースと最適化が容易にできることもMTLの強みだ。
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ターンテーブル型、世界最小クラスのサイズDDモーター「MRS―70シリーズ」
昨年市場投入したのがターンテーブル型、世界最小クラスのサイズDDモーター「MRS—70シリーズ」。胴径70ミリメートルで、胴長は44ミリメートルと56ミリメートルの2タイプで中空径は25ミリメートル。クロスローラーベアリング(軸受)の精度を高め、軸振れを5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下に抑えることにより、回転非同期振動(NRRO)を低減した。プラグ取り付け口を備え、エアを送って不純物除去とエアパージ(空気追い出し)が可能で、トルク密度は一般的な同サイズのモーターと比べて約2倍の3ニュートンメートルを実現した。慣性モーメント(イナーシャ)が高い状況下でも本体設置のみで高精度に回転駆動し、半導体製造工程でのウエハー検査装置や小型光通信衛星端末など、小型・軽量化と高精度が求められる分野で活用されている。
高トルクDDモーター 販路が拡大
DDモーターはアメリカ、中国、台湾、マレーシアなどからの引き合いも増え、海外のユーザーからも「これまでになかった製品」としての認知が進んでいる。海外でも半導体製造装置の需要に対応するほか、ロボットや医療分野への引き合いも増しており、新規顧客が拡大している。
MTLでは半導体製造装置のほか、搬送ロボットや洗浄機など装置ごとに最適なパフォーマンスを発揮できる「業界特化型製品」として新製品を開発していく。「高トルク」「高剛性」「中空大口径」など、これまでの市場に存在していない高付加価値を提供していく。
扶桑精工/モノづくり現場の延命と再生に貢献
扶桑精工(相模原市緑区、松山広信社長)は、1947年の創業以来、金型業界のパイオニアとして製造技術の最先端を切り拓いてきた。シェア6割で国内トップを誇るガラスびん用金型の製造をはじめ、プラスチック容器の金型製造、産業用機械の設計・製造を事業の柱とする。これらに加え、既存の製品や部品を分解・分析し、産業機械などの修理や部品交換に対応するサービスや、金型などの水路を洗浄する自社製品を活用した新規顧客開拓を展開し事業拡大を進めている。
製造業では機械設備メーカーの統廃合や製造中止により古い設備や旧型機械部品の調達が困難になるケースが出ている。扶桑精工の「リバースエンジニアリング」は金型加工や機械設計・製造で培った技術を活用して既存設備や部品の設計、加工、製作、組付けまでを提供するサービス。機械のオーバーホールやレトロフィットで性能を向上させるほか、製品の分析、製造中止や長期納期となる部品の代替品製造、設備の動作原理を理解し、安定した生産が行える自動化技術の提案など顧客の要望に応じる。
手書き図面からの部品製作も可能で、図面がない場合でも現物があれば3次元(3D)スキャンなどを活用し、正確な図面やCADデータを作成し、複製する。図面をデジタル化することでデータ管理や共有のほか、将来の部品複製やメンテナンスが容易になる。機械や部品のほか、ユニットや治具なども製作可能で、試作品や小ロットにも短納期で対応する。
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錆やカルシウムの堆積物を酸で溶かして水路の性能を復帰する洗浄機「アラッタくん」
自社製品「アラッタくん」は、錆やカルシウムの堆積物を酸で溶かして水路の性能を回復させる洗浄機。金型のほか、水冷コンプレッサーの冷却回路や、温調器、熱交換器の洗浄にも使用できる。洗浄液も自社開発し、酸性でアルマイト、アルミ地金にも影響せず、強力な脈動で堆積物を貫通除去する。元々は自社で使用するために開発した「アラッタくん」は販売やレンタルのほか、メンテナンスの一環としてサービスを提供することで新規の金型受注にもつながっている。
小回り利く提案営業で付加価値提供
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外部から講師を招く営業の勉強会「扶桑匠塾」
大手金融機関で営業を経験した松山社長は2020年に社長に就任し、「全員営業」を掲げ、営業体制を強化。自ら飛び込み営業の陣頭指揮を執るほか、ターゲット先へは営業担当に加え製造担当を同行させている。「製造部門が営業に加わることで、提案の幅やスピードにつながる。顧客を意識したモノづくりが重要」との思いからだ。全国で3か所ある拠点で一斉に実施するテレアポ業務も開始し、製造担当者も参加する。
外部から講師を招く営業の勉強会「扶桑匠塾」も毎月開き、人材を育成するほか、ウェブマーケティングにも注力。自社ホームページに加え「金型くん!メンテ改造ラボ」と「装置・自動機パーツ リバースエンジニアリングセンター」としてサービスごとに専用サイトを開設し、アクセス数はそれぞれピークで月3000件を超えている。松山社長は「すべての製造業に小回りの利く提案と付加価値を提供できる」と自信を見せる。設計から加工までを手がける強みを生かし新規分野への参入も積極的に進めていく。
