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神奈川県央地域
県央の自治体 各市の取り組み
中小振興・企業誘致施策など拡充
神奈川県の県央地区は、圏央道やリニア中央新幹線をはじめとする社会インフラ整備が進み、産業拠点としての存在感が増している。行政が少子化による労働力不足、脱炭素社会実現に向けた対応など、企業が直面する課題に対して、豊富な支援を展開している。ロボット導入やデジタル活用のほか、企業誘致促進、新たなビジネスモデルの構築や業態転換の後押しなど、力強く産業を支える行政の動きを紹介する。
相模原市、導入・活用を支援/ロボットセンター開設10周年
製造業が集積する相模原市は、モノづくり企業への生産性向上に向け、2015年に「さがみはらロボット導入支援センター」を設立している。さがみはら産業創造センター(相模原市緑区)が運営し、経験豊富なコーディネーターが各種相談を受ける。8月時点での相談実績は416回で延べ8085名が来所している。ロボット導入やデジタル活用などの中小企業が抱える課題解決に貢献し、9月に10周年を迎えた。
経済産業省では、ロボット導入を加速させる新たな枠組みとして、「全国ロボット・地域連携ネットワーク(RINGプロジェクト)」を25年に立ち上げている。相模原市はロボット導入に関する先進地域として参画。深刻化する人手不足など地域企業が抱える課題に向けて支援を強化している。
厚木市、多方面で企業支援/立地優位性生かし誘致促進
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厚木市は複数の高速道路や国道が通る
厚木市は、企業の事業所が9400以上立地し、各種補助事業や融資の利子補給、相談など、多方面から企業活動を支援している。製造業を対象に最大200万円を交付する設備投資促進事業補助金では、本年度から中小企業の補助率を100分の5から2分の1に、小規模企業は100分の7から3分の2に拡大。特許出願や就職フェア・見本市への出展なども補助する。
同市は、複数の高速道路や国道が通る立地の優位性を生かし、企業誘致にも注力。2009年に制定した「企業等の立地促進等に関する条例」は、税制優遇や最大1億円の奨励金交付など企業の立地等を後押ししてきた。同条例の奨励措置を適用した件数は101件、投下資本額は約1700億円。奨励措置の拡大などを含め本年度中の条例改正を目指している。
大和市、融資支援など充実/新規立地・事業拡大後押し
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大和市では設備投資奨励金の活用で生産性を高めている(森永エンゼルデザート提供)
大和市は、都心から40キロメートル圏内で、私鉄3路線のほか、国道16号や246号等の幹線道路、東名高速横浜町田インターチェンジ(IC)や綾瀬スマートICに近接するなど利便性に優れる。市内への新規立地や、市内企業の事業拡大、設備投資に向けた奨励金制度のほか、事業資金融資への利子や信用保証料に対する補助など、金融機関との連携による支援も充実する。
生産性の向上やカーボンニュートラルの実現に向けた専門家派遣によるコンサルティングにも力を注ぐ。本年度からは製造業を中心とした市内企業を対象に、デジタル技術活用やカーボンニュートラル等のプロジェクト推進のための人材育成を目的に講師派遣型研修を開催するなど、さまざまな角度から事業者を支援している。
座間市、投資支援基準を緩和/補助金で生産性向上支援
座間市は、主に製造業を対象に、新たな企業投資に対する支援措置の一つである企業投資奨励金の基準を21年に緩和した。
20億円(中小企業は5000万円)以上の投資をする企業に対し、投資額の10%で、上限1億円(同5000万円)の奨励金を交付する。
従来は50億円(中小企業は5億円以上)とハードルが高かったが、緩和による投資意欲の向上を見込む。市外からの進出だけでなく、市内企業の再投資についても奨励金を支援することが座間市の支援策の強みとなっている。
さらに、生産性向上に資する機械等の設備導入に係る取得費用を補助率3分の2(上限400万円)で補助する「座間市中小企業産業振興支援事業補助金」を25年度も実施していく。
海老名市、企業振興策を強化/発展的な地域経済活性化
海老名市は、高速道路や国道246号が市域を横断する。小田急線・相鉄線・JR相模線の3路線が通り、相鉄線はJR線・東急線との相互直通運転も開始。都心や郊外へ向けた交通の利便性が増すなど、都市機能の充実により、人口も増加傾向にある。
産業施策では、2024年度まで運用してきた「企業立地促進条例」を抜本的に見直し、「海老名市企業振興促進支援方針」を10月に策定した。高付加価値産業の積極的な誘致を図る「企業立地促進支援」、市内へオフィスの誘導を促す「オフィス拠点形成支援」、既存企業を支援する「中小企業振興支援」の三つの支援策を柱とする。持続可能で発展的な地域経済構築に向けて投資環境の魅力を高め、地域経済の活性化を推進していく方針だ。
綾瀬市、人材確保策に重点/製造業の持続的発展後押し
綾瀬市は、多角的な支援制度で市内製造業の持続的な発展を後押しする。人手不足に向けた設備投資や人材確保を重視し、中小企業強靭(きょうじん)化推進補助金は、最大1000万円を補助する。新たなビジネスモデルの構築や業態転換のほか、省人化、省力化、デジタル化による業務適正化などを支援している。
人材確保施策は、若年層の就職を促す「ものづくり人材就職定住奨励祝金」を創設しているほか、県立神奈川工業高校定時制とも連携。共同事業体「地域内キャリア教育推進コンソーシアム」を設立し、雇用機会の拡大を進めている。
海外の理工系大学のエンジニアを誘致する仕組みづくりも進む。専門的な知識を持つ優秀な海外人材を生かした新たな経営戦略により、市内企業の経営基盤強化につなげる。
