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神奈川県央地域
県央エリアの有力企業② 革新技術・人材確保で現場の課題解決
クボテック/創立60周年、さらなる成長へ生産拠点拡大
クボテック(神奈川県秦野市、窪嶋竜一社長)は、半導体製造装置に使う配電盤や分電盤の生産を手がけ、10月に創立60周年を迎えた。AI(人工知能)関連市場の拡大などによる需要増加を受け、主力の伊勢原工場(同伊勢原市)を拡張し、第3工場として半導体製造装置用の配電盤や分電盤の生産体制を増強した。仕入れの効率化を図るほか、人材派遣業を手がける完全子会社設立、人材教育の充実などにより生産性を高め、製造拠点新設など、さらなる成長への挑戦を続けている。
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伊勢原第3工場では大電流発生装置や負荷抵抗装置を備える温度試験室も増強 -
伊勢原第3工場の社員食堂。働きやすい環境づくりも重視
クボテックは、半導体製造装置、社会インフラ用装置、一般産業用装置を柱とする。受注から設計・調達・板金加工・組立・検査・アフターフォローまですべての工程を自社で手がける一貫生産が強み。電源装置や制御装置などの製品は、「メイド・イン・ジャパン」の安全性と信頼性で、顧客からの評価が高い。
2025年3月期の決算で、売上高が61億円(前年度比41%増)と過去最高を記録。AI関連市場の拡大などによる需要増加を受け、24年に伊勢原工場(同伊勢原市)を拡張。第3工場として半導体製造装置用の配電盤や分電盤の生産体制を増強した。隣接する第1工場と第3工場で生産品ではなく、スタッフを移動させる「交互生産方式」で生産力を強化しているほか、大電流発生装置や負荷抵抗装置を備えた温度試験室も新設。継続的に設備を増強している。さらに事務スペースや更衣室、社員食堂の整備も進めている。顧客の利便性を向上させるとともに、社員に向けた働きやすい環境づくりも重要視し、生産性向上につなげている。
関連会社として24年に人材派遣業を手がける完全子会社「クボテックキャリア」(同厚木市)を設立。法人向けサービスを展開するとともに、自社の人材確保にもつなげている。社内には「人財開発部」を立ち上げ人材教育を充実させている。主任クラスへ向けた管理職養成講座では人材派遣会社出身のクボテックキャリア事業本部長が講師を務める。定期的に行い管理職を育成しているほか、男女共通デザインのユニホームを社員主導で制作するなどダイバーシティー(多様性)も推進。社内プロジェクトとしては、4月から各職場の主任クラスを中心に「C-Pro.(コーチング・プロジェクト)」をスタートさせている。「製品不良の削減」と「生産リードタイムの10%短縮」をテーマに、メンバーが改善に向けた活動計画を策定。月ごとに実績を確認しながら、社員が主体的に取り組んでいる。
岩手・奥州市に新工場 27年稼働計画
さらなる成長に向け、岩手県奥州市に生産拠点新設を計画し、27年春の本格稼働を目指す。全社合わせた土地面積を現状の2倍以上に拡大させ、半導体製造装置市場の成長による需要を取り込む方針。伊勢原工場では安定受注が見込める社会インフラ用装置製造も検討し、生産地域を神奈川県と岩手県に分散させることでBCP対策にもつなげていく。社員は約200人から250人に増員させ、30年には売り上げ100億円を目指す。中小企業庁の100億宣言企業にも名を連ね、成長を続ける企業として顧客からの期待と信頼に応えていく。
向洋技研/独自の電流制御技術で現場改革に貢献
向洋技研(相模原市緑区、甲斐豪社長)は、独自の電流制御技術を応用した画期的な製品開発で業界をリードしている。同社が提唱する「焼けないスポット溶接」技術は、高速溶接技術を搭載したテーブルスポット溶接機「人を選ばない機械」「環境に配慮し、誰もが安心して長く使える機械」「短時間で利益を生み出せる機械」というコンセプトで生産現場を支えている。容易な操作で材料の表面に発生する焼け焦げやひずみを極限まで抑え、後工程を軽減する同社の技術は、省人化の加速と原材料高騰により品質維持と利益確保が課題となる現在、ユーザーの生産性向上や人材不足への対応に大きく貢献している。
向洋技研では、2012年の高速溶接技術搭載機発売以来、ワークの焼き付きが少なく後工程が軽減される「焼けないスポット溶接」を追求してきた。「高速溶接」により後処理が不要で、より奥深い部分の溶接を可能にし、軽量ガンの採用など作業性を高めた多機能テーブルスポット溶接機「MS-V23」や、段取り不要で足踏み式の使いやすさを追求した小型テーブルスポット溶接機「MS-V71」など、幅広くラインアップする。
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電極交換時に冷却水がこぼれるのを防ぐ「止水バルブ」 -
3点プロジェクション採用の新型スタッド「TriVis」(左)と「TriBoss」(右)
同社ではユーザーの声をヒアリングし、製品の機能に反映してきた。ガンの操作については、長年軽量化を進めているのみならず、電極交換時の冷却水がこぼれてしまうという課題に対しては「止水バルブ」を提案している。大型ワークを作業スペースに載せる際の上げ下ろしがしやすくなるサポートローラー等、ユーザーの声から生まれた改良は多く、作業者の確保や育成が困難な状況において、経験や年齢、体格等に左右されない「誰もが活躍できる接合工程」の実現に一役買っている。
溶接方法の一種であるスタッド溶接は、金属の平面にネジを溶接する技術で、スタッドと呼ばれるボルトやナットを金属板に瞬時に溶接する。コンデンサーに蓄積された電力を放電するCD方式で使用されるCDスタッドは、途中でのスパークや接合不良による品質のバラつきという課題があった。そこで開発されたのが、スポット溶接で接合できる新型のスタッド「TriVis」(おねじ)と「TriBoss」(めねじ)。3点プロジェクションを採用し、安定した強度を実現したほか、母材の外表面に突起が発生しない。後処理の必要がないほどの美しい仕上がりで、作業効率も向上する。同社の「高速溶接」とも相性が良く、サイズや素材などを調整し、本格的な市場投入に向け現場での実証を進めている。装置との連動による自動化も視野に入れ、使い勝手の良さを追求していく方針。
溶接セミナー、顧客に解決策提案
向洋技研の電流制御技術はスポット溶接以外の用途でも注目を集めており、同社ではスポット溶接や抵抗溶接を軸とした板金加工全般の悩みを解決する「駆け込み寺」を目指している。本社内での溶接相談会も定期開催し、同社社員がマンツーマンで対応する。実機を使った実証加工やスポット溶接の基礎を解説する溶接セミナーも実施し、コスト削減、生産性向上、工場内レイアウトなど顧客の具体的課題に対する解決策を提案している。
