-
業種・地域から探す
続きの記事
千葉県特集2025
産業支援施設 東葛テクノプラザ/入居企業の取り組み
千葉県の産業支援施設である東葛テクノプラザ(千葉県柏市)は、貸し研究室や試験研究機器の提供、産学官連携の推進と三つの機能で、同県の産業振興を支えている。今回は東葛テクノプラザに入居するGRIPS(グリプス、同県流山市、森田康社長)と、プライムセンス(東京都渋谷区、高木淳社長)の取り組みを紹介する。
GRIPS/汎用ロボット制御プラットフォーム「ロゼッタ」商品化目指す
-
現実世界とともに、仮想空間のロボットを制御できる
GRIPSは小型ロボットアームとオープンソースソフトウエアによるシステム構築が主力だ。製造業の生産技術部門が主な取引先で、大手自動車や精密機器メーカーなどから小型自動化システムの採用実績がある。
現在、開発を進めているのが、汎用ロボット制御プラットフォーム「ロゼッタ」だ。「ハードとソフトの通訳者」(森田社長)となるロゼッタを開発することで、ユーザーがロボットを制御する汎用アプリケーションを開発可能にする。
これまではロボットごとに専用アプリを開発する必要があった。だが、ロゼッタにより、ユーザーが汎用アプリを開発できる環境が整い、コスト削減が可能になる。ロボットシステムインテグレーター(SIer)ではなく、ユーザーが開発を主導することで、技術を社内に蓄積できる。
すでにプロタイプを開発済みで、2026年内に商品化を目指す。さらに30年にはロゼッタに関する事業を本格的に展開し、6軸協働ロボットや自律移動ロボット(AMR)、将来はヒューマノイドロボットの制御を可能にする方針だ。
プライムセンス/溺水事故防ぐ安全監視システム「Meel」開発
-
水泳帽に取り付ける「Meel」のセンサー
プライムセンスは、溺水事故を防ぐ安全監視システム「Meel(ミール)」の開発を手がける。水泳帽に計三つ取り付けた無線識別(RFID)センサーが異常を検知し、監視員のモニターやバイブレーターなどに通知が届く仕組みだ。
同システムに使用されているセンサーは12—13メートル程度まで電波を検知でき、電波を発信するアンテナをプールの片側に4本ずつ、計8本置けば25メートルプール全域の監視も可能。また、同センサーは電池が不必要で、1度に大量の対象物をスキャンできるなど多くの利点を持つ。同社の高木社長は、「近年の人手不足への対応と溺水事故への対策を、最新技術で両立させる」と説明する。
2025年6月から11月中旬までの期間には、神奈川県藤沢市の中学校と、千葉県柏市で小学校の水泳授業を委託されているスイミングスクールでそれぞれ実証実験を実施。合わせて100人以上のデータを収集した。
今後は集めたデータを活用し、水泳教室に通う生徒の熟練度に応じた、溺水しているかを判定する基準値の最適化を目指す。また、センサーの小型化や薄型化にも取り組む方針だ。
産学官シンポジウム
千葉産業人クラブ 経済発展へ交流促進・強化
千葉産業人クラブ(白鳥悟嗣会長=白鳥製薬社長)は9月22日、京成ホテルミラマーレ(千葉市中央区)で「2025産学官シンポジウム」を開いた。参加者の事業拡大や産学官交流の促進、千葉県経済の発展を目的とし、日本機械学会関東支部千葉ブロック、日刊工業新聞社との共催で実施した。基調講演では小型月面探査車「YAOKI(ヤオキ)」を開発したダイモン(東京都中央区)の中島紳一郎社長が、3月に実施した人類初となる月クレーター探査について解説した。また、2024年度に日本機械学会関東支部技術賞を受賞したラインワークス(千葉市花見川区)の田村修二社長が、産業用ロボットシステムの開発など同社の歩みについて紹介した。シンポジウムには約60人が参加した。
ダイモン 社長 中島 紳一郎 氏/月面探査で人類の未来を創る
-
ダイモン 社長 中島 紳一郎 氏
ダイモンは、小型月面探査車「YAOKI」の開発を手がける。2025年3月に月へ送られたYAOKIは着陸機のバランスが崩れたため月面走行はできなかったものの、人類初となる月のクレーターの撮影に成功した。
私は約20年間エンジニアとして自動車の駆動開発に従事してきた。転機となったのは11年の東日本大震災。徒歩で帰宅する道中、これまでの知見をもとに世の中に役立つものづくりがしたいと思い立ち、起業を決意。12年にダイモンを創業し、月面探査車の開発に取り組んできた。
YAOKIの名前はことわざの「七転び八起き」に由来する。従来の探査車は約5キログラムの重さだが、YAOKIは0・5キログラムと非常に軽い。また、高所から落ちても壊れない頑丈な構造のため、洞窟探査も可能。月面へワンタッチで着くシンプルさと、衝撃試験や真空試験などをクリアした丈夫さが強みだ。
今後、YAOKIをアバター(分身)ロボットとして使い、人間の意識をデジタル化するプロジェクトも検討中だ。YAOKIの開発を通じ、いつでも、どこでも、誰でも月面旅行を楽しめる時代を作っていく。
ラインワークス社長 田村 修二 氏/人一倍の苦難を乗り越え成長
-
ラインワークス社長 田村 修二 氏
ラインワークスは、自動化機械や産業用ロボットを主に手がける。1981年の創業以来、一貫して独創的な製品や技術開発に取り組んできた。当社の商品はセミオーダーか完全オーダーメイドのため、同じ製品は二つもないと言えるほど、顧客の要望に細かく応えている。
失敗の経験は人一倍してきたという自負がある。例えば、取引先の機械修理で手間取り、三日三晩寝ずに奔走したこともあった。2007年に中国で合弁会社を設立した際には、翌年に起きたリーマン・ショックの影響を大きく受け、対応に追われた。これまでの私と当社の歩みを振り返ってみると、困難なことやうまくいかなかったことが数多くあった。しかし、そのたびに真摯に対応することを心がけ、乗り越え続けて今日まで頑張ってきた。
26年4月には現在建設中の新工場が稼働する予定だ。本社工場では微粒子の関係で難しかった精密な大型ロボットシステムや大型機械装置の組み立てを主に担う。新工場には溶接ロボットシステムやハンドリングシステムの展示場も設ける。皆様にもぜひ一度足を運んでもらいたい。
