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千葉県特集2025
“知”の社会実装を支援
中小機構 インキュベーション施設
中小企業基盤整備機構は千葉県に3カ所のインキュベーション施設を運営する。その内、東大柏ベンチャープラザ(千葉県柏市)は東京大学をはじめとする大学のシーズを活用し、新事業の創出や起業に取り組む個人や企業、第二創業を目指す中小企業などを支援している。同施設の特徴とともに、入居するFuturedMe(フューチャードミー、東京都中央区、宮本悦子社長)と、エイ・オー・テクノロジーズ(千葉県柏市、井上克己社長)を紹介する。
東大柏ベンチャープラザ/研究機関集積、恵まれた事業環境
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東大柏ベンチャープラザは研究者との共同研究や技術指導を受けるには理想的な環境だ
東大柏ベンチャープラザの最大の特徴は恵まれた事業環境だ。東京大学や千葉大学、国立がん研究センター、東葛テクノプラザなど大学や研究機関、事業化支援機関が集積する柏の葉地区に立地している。研究者との共同研究や技術指導を受けるには理想的な環境だ。今後「柏の葉国際キャンパスタウン構想」に基づき、さらなる整備が期待できる。
東京都心へのアクセスも恵まれており、最寄りのつくばエクスプレス(TX)柏の葉キャンパス駅からは30分以内で秋葉原駅に連絡している。近接する常磐自動車道の柏インターチェンジからは、乗用車でも短時間で東京へアクセスできる。
居室は全室ウエットラボ仕様で、物理的封じ込めレベルでP2レベルまでの実験ができる。1階の居室は耐床荷重が1平方メートル当たり2・0トンで、天井高5メートル、高圧受電が可能で、簡易な試作工場としても利用可能だ。
常駐するスタッフが産学官のネットワークを駆使し、販路開拓や資金・資本調達、技術提携など入居者の事業活動の課題解決をサポートする。
FuturedMe/標的たんぱく質分解創薬技術を事業化
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薬のない標的に向けた創薬を目指す(左が宮本社長)
FuturedMeは東京理科大学発ベンチャーで、標的たんぱく質分解創薬技術「CANDDY(キャンディー)」の事業化を進めている。宮本社長が開発した技術で、標的をたんぱく質分解複合体「プロテアソーム」に誘導し、標的を分解するものだ。
これまでの薬は標的とするたんぱく質の機能を止めるため、標的に阻害薬をとどめる「ポケット構造」が必要だった。一方、キャンディー技術は標的を体内のプロテアソームで分解することで、同構造に依存しないのが特徴だ。
創薬が可能な標的はポケット構造がある25%の標的で、残りの75%は同構造がないことから、創薬ができないのが現実だ。この課題を解決するのが同技術で、未来の薬を一人ひとりに届けるのが同社の使命だ。
今後、薬のない標的に向けた創薬を可能にするため、世界のメガファーマを含めた製薬会社と共同研究を始める。自社では、がんを標的とする分解治療薬を開発する。2032年までに、同技術で臨床入りを目指し、新規株式公開(IPO)も視野に入れる。
エイ・オー・テクノロジーズ/データ検出特化プロセッサーを事業化
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メモリズムプロセッサを搭載したパソコンを操作する井上社長
世界中でIT業界はもとより、全産業、自動車に至るまで、省電力、リアルタイムで効率よく情報(データ)を探し出すための研究が進められている。エイ・オー・テクノロジーズはデータの検出に特化したプロセッサーの事業化を進めている。探す処理は無駄が多く効率が悪いので「データを探さずに、直接検出を可能にした」(井上社長)のが特徴。
同社の「メモリズムプロセッサ」は、メモリーと演算器を一体化した4種の半導体チップで構成される。IT機器に組み込むか、または外付けして利用するとインデックスや学習の前処理が不要になるので、画像や音声、数値、テキストなどのデータを瞬時に検出(検索や認識)できる。チップは安価に製造できるのでシステムや製品のコスト削減効果が大きい。検索や認識AI(人工知能)の前処理問題が解消されるので、情報処理の性能や利便性が高まり、応用範囲が拡大し、省エネに貢献する。
8月に特許を出願し、本技術の紹介を開始した。多くの企業から高い関心が寄せられ、コラボレーションに向けた協議が行われている。
