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千葉県特集2025
千葉地銀3行のDX
地域とともに変わる金融
日銀の利上げで「金利ある世界」が到来するなど、金融業界を取り巻く環境は大きく変化し、各機関の競争が激化している。地元との密着を掲げ、地域経済を支える地銀の役割は一層重要性を増す。そのような中で、県内の金融機関は顧客や地域へ最適な支援策を提供するため、DX(デジタル変革)に力を入れている。DXに取り組む地銀3行の取り組みを紹介する。
千葉銀行/新DX戦略で組織改革を加速 AIを活用本格化へ専門部署
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ちばぎんDX「3・0」では各業務領域におけるAI技術の活用が示されている(同行提供)
千葉銀行は、2023年からの現中期経営計画で、DX(デジタル変革)戦略「ちばぎんDX「3・0」」を開始し、基本方針を「最高の顧客体験の創造」と定めた。そして、基本方針のさらなる高度化のため、積極的な組織改革を進めている。
同行は生成AI(人工知能)の急速な普及を契機に、23年度中旬からAI導入の協議を重ねてきた。24年9月にはAI技術の内製化と高度化を推進するため、デジタル戦略部内に「AIソリューション室」を新設。設立の経緯について、同行の高倉亮室長は「当行内で今後AI活用の本格化が進むことを見据え、組織を立ち上げた。24年1月からは5人の行員らがグーグルクラウドの実践型AI研修に派遣され、AIプロトタイプを作る業務に参加した。AIを理解している人が関連業務に携わるメリットは大きい」と手応えを語る。
同室には現在、兼任者も含め計11人が所属。行員教育の推進など、AI活用に関する業務の統括を行っている。
実務業務コンサル育成
また、24年9月にはAIアルゴリズム事業を手がけるエッジテクノロジー(東京都千代田区)を子会社化。AIに関するサービス提供の実績を持つ同社と共同で、100社以上の企業に対し、それぞれが持つニーズに最適な提案を行っている。
さらに、同社には千葉銀から行員が出向しており、今後、増員も予定している。「実践業務に役立つAIコンサルタントを育てていきたい」(高倉室長)と意気込む。
京葉銀行/業務効率化へAI導入 対面・非対面の応対品質向上
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最新AIを用いたコンタクトセンターシステムを導入した
京葉銀行は、業務効率化や生産性の向上を目的にAI(人工知能)の活用を推進している。2025年10月からは最新AIを搭載したコンタクトセンターシステム「Genesys Cloud CX」を導入。コンサルティング機能を強化し、顧客に対して最適なアプローチができる体制の構築を目指す。
同行は2033年の創立90周年に向けた長期ビジョンの中で、対面・非対面業務が連携した「オムニチャネルの進化」を掲げている。今回導入したコンタクトセンターシステムは、問い合わせ内容のグルーピングに際し、最適な分類案をAIが候補の中から提示するほか、文字起こし要約をAIがサポートする機能などを搭載。オペレーターの人手不足や高齢化、属人化が課題となっていた中、個人の負担を軽減することで、応対業務の品質を向上させる。今後はベテランのオペレーターの応対を学習・蓄積させてナレッジ化するなど、さらなる環境改善に取り組む。
また、長期ビジョンでは「AIを活用した業務プロセスの再構築」も重点テーマだ。同行は7月にFIXER(東京都港区、松岡清一社長)の生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」、10月にIppu Senkin(東京都中央区、鈴木秀弥社長)の生成AI議事録システム、りそなホールディングスらが共同開発したAI搭載の業務支援ツール「Data Ignition」をそれぞれ導入した。
京葉銀行はAIを活用した業務効率化の取り組みを通じ、顧客や地域にプラスアルファの価値を提供する。
千葉興業銀行/企業支援プラットフォーム設立 双方向で交流 コミュニティー活性化
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10月に千葉市中央区で開かれたちばCoラボのキックオフイベント
千葉興業銀行は、地域企業の経営課題解決と持続的な成長の支援を目指し、10月から企業のつながりを支援するコミュニティプラットフォーム(基盤)「ちばCoラボ」を設立した。
ちばCoラボの設立が検討され始めたのは2024年4月。山梨県でDX(デジタル変革)推進を支援するプラットフォーム開設の実績を持つNTT DXパートナー(東京都新宿区、阿部隆社長)と連携し、約1年半の準備期間を経てサービス開始に至った。
ちばCoラボ内のオンラインコミュニティーでは、DXなどに取り組む企業関係者や支援者が双方向で交流できる。また、千葉興銀の行員やNTT DXパートナーの社員がコミュニティーマネージャーとして常駐。経営に関する悩みを相談できる。
さらに、ちばCoラボには千葉県内の企業へのインタビューや地域情報を掲載するオウンドメディアを設置。ちばCoラボコミュニティーマネージャーを務める同行の石川駿也デジタルイノベーション部調査役は、「成功体験だけではなく、失敗談など経営者の生の声を届けたい」と話す。
このほか、異業種交流を目的としたイベントの開催や、自社のDX進捗状況を診断できるツールの提供も行う。千葉興銀の粟野秀人デジタルイノベーション部ビジネスイノベーション担当部長代理は、「ちばCoラボは顧客と当行が共に運営し、コミュニティーを盛り上げていく」と強調する。
