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千葉県産業特集
成田空港機能強化・道路インフラ拡充 高まる立地優位性
成田空港の機能強化や道路ネットワークの整備、さらに国家戦略特区が千葉県全域に拡大されたことにより、同県の企業立地の優位性が高まっている。その一方で慢性的な人手不足や物価高騰など企業を取り巻く経営環境は引き続き厳しい。また米トランプ政権の関税政策などで、景気の先行きには不透明感も漂う。その中で成田空港をどのように活用し、同県の優位性をさらに高めていくのか、人手不足に代表される企業課題の解決に向けて、どのように支援策を講じるのか、千葉県知事の熊谷俊人氏に聞いた。
【インタビュー】 千葉県知事 熊谷 俊人 氏
—改めて1期目の経済政策の評価を聞かせてください。
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千葉県知事 熊谷 俊人 氏
「1期目は千葉県庁の職員が頑張ってくれたし、県民の後押しもあり、順調に経済分野の政策を進めることができた。積極的な企業誘致政策を取り、中身も量的にも結果を出した。成田空港に関しては攻めの産業集積に取り組み、すでに物流のプロジェクトも動いている。それ以外にも規制緩和や、(空港周辺地域に集積を目指す産業に精密機器・航空宇宙・健康医療・農業・観光の)五つの産業分野の追加など着実に進んでいる。道路ネットワークの整備も一部区間の開通など基本的な経済・産業の振興に必要な基盤は作り上げた。中小企業も実感できる好循環をさらに生み出していく」
—2期目にはどのような経済政策に取り組みますか。
「圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の開通を千葉県全体の活性化につながるように、圏央道から連なる道路ネットワークの整備により力を入れる。成田空港に関しては空港だけではなく、空港周辺、さらにいえば千葉県全体が発展できるようにする。千葉県でイノベーションや投資が促進される状況を確立していく」
空港周辺 “物流プラス5分野”の誘致に重点
—成田空港の「第2の開港」に向け、どのように支援しますか。
「空港の用地を取得していかなければ実現できないため、関係市町とともに、用地の取得がスムーズに進むようにサポートする。また空港が競争力を高めていくには空港へのアクセスが重要で、鉄道、道路を含めて成田国際空港(NAA)と連携しながら充実させる。さらに空港周辺に空港と相乗効果を発揮する産業を集積すると、空港の競争力強化につながることから、物流プラス5分野の産業集積を着実に進める。『NRTエリアデザインセンター』を開設したので、広域のゾーン設定から街づくりを進めていく」
—成田空港に何を期待しますか。
「空港として日本を往来するヒトやモノの拠点としての機能がさらに高まるだけでも多くの雇用を生み出し、大きな投資効果がある。大事なことは日本そのものがシュリンクする中で、アジアのおう盛な成長をどのように成田空港を生かして取り込むかだ。また千葉県は農業、漁業県でもあり、千葉県産に限らず農林水産物を空路で輸出する最大の拠点として機能がさらに高まることを期待する」
「成田空港を通してアジアや世界の成長が実感でき、視点が広がる。これは経済だけではなく、都市づくりや文化などあらゆる分野で世界の大きな動きを理解することにつながり、千葉県がクリエーティブになっていくという点でも大事なことだ」
道路ネットワーク整備加速/産業用地 常に仕込み続ける
—需要があるにもかかわらず、産業用地が不足しています。
「1期目の早い段階から産業用地を仕込まなければいけないと、げきを飛ばしてきた。これから産業用地の造成から供給が少しずつ始まる。2期目には、ここに産業用地が整備されると見えるようになる。千葉県の経済をけん引することが期待される地域には、補助を上乗せするなど地域特性を踏まえて柔軟にやっている。これからも産業用地を常に仕込み続ける」
—千葉県に進出する魅力は。
「今後も人口減少が社会で続く中でも、千葉県は人口減少が緩やかか横ばいであることが期待されており、労働力の確保や市場という意味でも魅力的だ。東京都の隣という恵まれた立地条件に加え、道路ネットワークの整備や成田空港の大拡張など、これだけ拠点性が高まる時期を迎えている都道府県はない。土地も東京都や神奈川県、埼玉県に比べてリーズナブルだ。これらの可能性を引き出す政策が必要で、県も進出してもらって終わりではなく、成長を伴走型でサポートする」
—県内の景況感をどのように認識していますか。
「経営が順調な企業も少なくない一方で、十分に価格転嫁ができなかったり、人手不足が解消できなかったりなどで、業績が思わしくない企業もあり、二極化している。この両方に我々は別のアプローチから経営課題を解決するための支援を行う」
生産性向上/中小のDX 力強く伴走支援
モノづくり人材育成を強化
—中小企業の経営環境は厳しさを増しています。
「物価高騰や価格転嫁、持続的な賃上げも重要だが、人手不足が問題だ。生産性を向上させるための設備投資やデジタル変革(DX)には力強く伴走型で支援し、県内中小企業が人手不足の中でもパフォーマンスが出せるように後押しする。またミスマッチを防いだり、企業が求める人材を育てたりすることも重要だ。若者や女性、高齢者、障がい者、外国人と県内企業とのマッチングや再就職の支援などにも力を入れている。(千葉県が設置する職業能力開発校である)テクノスクールを強化しており、モノづくり人材も輩出したい」
—トランプ関税などグローバルリスクが県内企業にどのような影響を与えていますか。
「速やかに相談窓口を設置した。関係機関とも会議を開催しており、県庁を挙げて取り組んでいる。ただ、現在の段階で影響は現れていないが、不透明感は高まっている。国と連携しながら、中小企業の状況に応えられるようにする」
「一方、サプライチェーン(供給網)の再構築が、今後、長い形で行われる。その流れの中で、例えば従来は米国を経由していたサプライチェーンの一部が日本を経由することもあり得る。そのため、日本と千葉県に投資を呼び込むチャンスを見逃さず、ピンチをチャンスに変える政策に取り組んでいきたい。成田空港と千葉港を持つ千葉県にはチャンスは十分にある」
